サイクロン「イアン」、太平洋自然災害リスク保険の初の支払いケースへ
シドニー、2014年1月23日-世界銀行は本日、トンガに対して、太平洋自然災害リスク保険パイロット・プログラム初の保険金給付が行われると発表した。保険金127万ドルは、サイクロン「イアン」被害からの復旧・復興に充てられる。
カテゴリー5まで勢力を増した「イアン」は、2014年1月11日~12日にかけてハーパイ群島を直撃し、不幸にも1名が命を落とした他、数千人が住む場所を失い、作物やインフラが甚大な損失を受けた。同群島の一部では建物の75%が倒壊した他、電力・通信網が被害を受けたと報告されている。
「サイクロン『イアン』により、いくつものコミュニティで数百世帯が被災し、住宅や医療機関、学校などの基幹インフラが破壊された」と、世界銀行のフランツ・ドリース=グロス太平洋島嶼国局長は述べた。「同プログラムによる保険金給付によりトンガ政府は、今後の復旧・復興に取り組む一方で、喫緊のニーズに対応することができる」
トンガのアイサケ・バル・エケ財務計画大臣は、「太平洋自然災害リスク保険パイロット・プログラムを通じて提供された資金は、自然災害緩和のための政府戦略実行にとって重要な財源となる。これにより、ハーパイ諸島住民が日常生活を取り戻すための対策を、遅滞なく行うことができる」と述べた。
トンガは、他の太平洋島嶼国5か国(クック諸島、マーシャル諸島、サモア、ソロモン諸島、バヌアツ)と共に、太平洋自然災害リスク保険パイロット・プログラムに参加している。同プログラムは2013年1月に立ち上げられ、災害保険を活用して、途上国における災害リスクの回避を目指している。支払金額の決定にサイクロンの強度や地震のマグニチュードなどの予想損害額を算定することで、速やかに保険金を支払うことができる。
世界銀行は、太平洋島嶼国と、保険会社(損保ジャパン、三井住友海上、東京海上日動、スイス・リー)の間の仲介を行う。AIRワールドワイド社は、災害発生時の予想被害額を算定するためのモデルを提供している。現在、トンガ、マーシャル諸島、サモア、ソロモン諸島およびバヌアツの保険料は日本政府が負担する一方、クック諸島は保険料を全額自己負担している。
この他にも、世界銀行はサイクロン「イアン」被害への取り組みとして、ハーパイ群島の損害査定を支援している。これにより、トンガ政府は被害状況の全体像を把握し、被災地域の再建や将来的に災害に強い社会を構築することが可能となる。
太平洋自然災害リスク保険パイロット・プログラムについて
同プログラムは、太平洋島嶼国の被災後の資金調達能力の強化により、自然災害に対する財務面の強靭性を支援する太平洋災害リスク・ファイナンス・プログラム(DRFI)の一環である。DRFIのアドバイザリー・サービスを利用することにより、自然災害時に効率的に資金調達をし、有効に資金活用することが可能となる。同サービスは、(i)災害リスク資金調達の国家戦略特定、事前および事後の資金調達ツールの必要性、(ii)被災後の予算執行、資金確保、そして資金提供、(iii)重要な公的資産に対する保険、等について助言し、災害後の復興資金調達を支援する。
DRFIは、太平洋自然災害リスク評価および資金援助イニシアチブ(PCRAFI)の一環である。PCRAFIは、世界銀行、太平洋共同体事務局(SPC)/南太平洋応用地球科学委員会(SOPAC)、アジア開発銀行による共同イニシアチブで、日本政府、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)、アフリカ・カリブ・太平洋諸国(ACP)-欧州連合(EU)自然災害リスク軽減プログラムから資金提供を受けており、太平洋島嶼国の災害リスク管理の強化および気候変動への適応推進に向けて、災害リスク・アセスメントおよび資金調達ツールを提供することを目的に、2007年に立上げられた。
www.worldbank.org/pi
PCRAFIの詳細: https://go.worldbank.org/HVA5HLS4U0