ワシントンDC、2013年10月29日 — 世界銀行と国際金融公社(IFC)が本日発表した最新の報告書『ビジネス環境の現状』は、ビジネス上の規制改革が昨年は世界114か国において前年比18%増と飛躍的に進み、その結果各国の起業家の事業拡大の基盤が整備されつつあると指摘する。毎年発表されるビジネス環境の規制緩和に関する同報告書は今年で11年目を数え、世界各国における昨年1年間のビジネス規制改革238件を取り上げている。
『ビジネス環境の現状2014:中小企業の規制(仮題)』と題した同報告書によると、ビジネス上の規制改革は2008~2009年の金融危機以降、加速を続けている。同報告書は、世界中の国々が起業の規制プロセスにおけるベスト・プラクティスに倣うならば、起業家が煩雑な手続きを完了するまでの所要日数を年間4500万日短縮できるだろうとしている。
「起業家が事業を立ち上げ、地域に貢献できるようビジネス環境を改善することは、世界および各国の経済成長の鍵となる」と、世界銀行グループのジム・ヨン・キム総裁は述べる。「『ビジネス環境の現状』によると、ビジネス規制が改善された国では起業家がより雇用を創出できるとしているが、これは、2030年までに極度の貧困をなくすという我々の目標を達成するためのステップでもある」
同報告書によると、サブサハラ・アフリカ諸国の多くが、負担となる規制を減らし、より強固な法制度構築に向けた改革に取り組んでいる。同地域では2012~2013年の間に、2005年比で2倍以上の国々で改革が実施された。実際、2009年以降ビジネス規制改革が最も進んだ20か国のうち、9か国がサブサハラ・アフリカの国々(ベナン、ブルンジ、コートジボワール、ガーナ、ギニアビサウ、リベリア、ルワンダ、シエラレオネ、トーゴ)である。
経済協力開発機構(OECD)に加盟する高所得国は、『ビジネス環境の現状』の調査対象分野の大部分で高い実績を示しており、この1年間は特にビジネスの参入・撤退の規制緩和および税務管理の改革に特に力を入れた。ヨーロッパおよび中央アジア諸国は、19か国において65件の改革が実施されるなど、引き続き規制改革を速いペースで推進している。BRICS(ブラジル、ロシア連邦、インド、中国および南アフリカ)の中で最も大きな進歩を遂げたのはロシアだった。
中東・北アフリカ諸国の政府は、政治的・社会的不安を抱えているため、ビジネス規制の改革において引き続き難しい課題に直面している、と同報告書は指摘する。シリア・アラブ共和国は2012~2013年、規制環境が最も悪化した国となった。
シンガポールは、ビジネス環境の規制緩和総合ランキングでトップを維持している。その他に上位10か国にランクインしたのは、香港特別行政区、ニュージーランド、米国、デンマーク、マレーシア、韓国、グルジア、ノルウェー、英国だった。
「遅れを取り戻そうとする動きが世界規模で顕著に起きている」と、世界銀行グループのアウグスト・ロぺス=クラロス・グローバル指標・分析担当局長は述べる。「費用がかかる複雑な手続きを課する国や、制度が確立していない国が徐々に、実績を上げている国の規制を採用し始めている。こうした動きにより、『ビジネス環境の現状』が対象とする多くの指標において各国の差が縮まっていくだろう。」
また同報告書は、2005年以降、それぞれの地域に最も規制改革への取り組みを行なった国があると指摘する。例えば、東アジア・太平洋地域では中国、ラテンアメリカ・カリブ海地域ではコロンビア、サブサハラ・アフリカ地域ではルワンダ、OECD高所得国ではポーランドがあげられる。
『ビジネス環境の現状』は毎年、総合ランキングに加えて、前年度と比較してビジネス環境の改善が最も進んだ国を発表している。本年度の上位10か国は(改革が著しかった順に)、ウクライナ、ルワンダ、ロシア連邦、フィリピン、コソボ、ジブチ、コートジボワール、ブルンジ、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、グアテマラであった。一方で課題も残っている。上位10か国のうち、ブルンジ、コートジボワール、ジブチ、フィリピン、ウクライナの5か国は、総合ランキングでは依然として平均以下にランク付けされている。
さらに同報告書は、今年初めて、リビア、ミャンマー、サンマリノ、南スーダンの4か国についてもデータを収集している。
『ビジネス環境の現状』報告書シリーズ
世界銀行とIFCの主要報告書である『ビジネス環境の現状』は、事業設立および経営、貿易、納税、破産手続きという、その国の企業のライフサイクルを通じて適用される規制を分析する。ビジネス環境の総合ランキングでは10の指標に基づき、189の国と地域をランク付けしている。本報告書は、企業および投資家に関わるビジネス環境の全ての側面を評価するものではない。例えば、財務管理の質、マクロ経済の安定性の他の側面、労働者の技術レベル、金融システムの耐性などは評価の対象としない。本報告書の分析結果はこれまで、世界中で政策議論を促進し、企業レベルの規制と国全体の経済成果との関連の研究を普及させてきた。今年の報告書は、『ビジネス環境の現状』シリーズの11冊目に当たり、世界189の国と地域を網羅している。同シリーズの詳細はdoingbusiness.orgをご覧ください。Facebook(doingbusiness.org/Facebook)にもご参加をお待ちしております。
世界銀行グループについて
世界銀行グループは、途上国に資金と知識を提供する世界有数の国際開発金融機関。グループは、国際復興開発銀行(IBRD)、国際開発協会(IDA)、国際金融公社(IFC)、多数国間投資保証機関(MIGA)、投資紛争解決国際センター(ICSID)の5機関で構成されており、IBRDとIDAを総称して世界銀行と言う。各機関はそれぞれ、貧困削減と途上国の人々の生活向上を支援するという使命において明確な役割を担う。詳細は以下の3機関のサイトを参照。www.worldbank.org、 www.miga.org、および www.ifc.org。