先を見越したリスク管理が損失軽減とコミュニティ保護に大きく貢献-新報告書
ロス・カボス(メキシコ)、2012年6月16日―世界の主要経済国のリーダーたちは、メキシコのロス・カボスで開かれたG20サミットの場において、自然災害による被害が先進国と途上国の両方で急増していることに懸念を示し、災害リスク管理が開発政策の重要な部分を占めると、その重要性を強調した。
2011年、自然災害に起因する世界的損害は推計で最高3800億ドルと、かつてない水準に達した。最近の一連の出来事を見れば、富裕国であろうと貧困国であろうと、大規模な自然災害を免れられる国は一つもないことは明らかだ。各国首脳は、増大する被害に対応する中で、より積極的なリスク管理のアプローチを編み出し、新たなリスクの発生を回避できるよう、これまで以上に十分な情報を得た上での意思決定の重要性を突きつけられている。
メキシコ政府と世界銀行は、G20サミットのサイド・イベントにおいて、「財政的対応力強化に向けた災害リスク評価の改善(仮題)」と題する共同報告書を発表した。同報告書は、深刻な自然災害の被害から国民と資産を守るために、G20などの国々がとるべき行動をまとめたものだ。また、本報告書に挙げられている様々な課題への対応において、G20各国、世銀、その他の国際パートナーが、国や地方の当局と協力するに当たり、いかにして一層重要な役割を果たすことができるかを概説している。
「『財政的対応力強化に向けた災害リスク評価の改善』は、G20の災害リスク管理アジェンダの初の成果物だ」と、ホセ・アントニオ・メアデ・クリブレーニャ・メキシコ財務公債大臣は述べている。
災害による損害の世界的な急増が無秩序な開発の結果であることはますます明白になっている。急速な都市化や気候パターンの変化がこの傾向をさらに助長するだろう。G20は、コミュニティや国の抵抗力を高めるために、開発計画の立案のあらゆる段階にリスクへの配慮を組み込むことが急務であると認識している。
「自然災害に見舞われると、人々の悲劇的な苦しみを目の当たりにするが、その一方で、あまり目立たない影響も同じく人々に大きな痛手を与える可能性がある」と、世界銀行グループのロバート・B・ゼーリック総裁は述べている。「災害がもたらす経済的影響により、人々が再び貧困状態に陥ったり、政府が救済資金を捻出する必要性から貧困向けプログラムが脅かされる可能性がある。我々は誰もが、経済の全セクターにおける抵抗力を養うための知見の共有を進めると共に、他の国々の経験から学ぶ必要がある」
本日発表された報告書はそうした取組みに役立つだろう。十分な情報を得た上での意思決定にはリスクのより正確な理解が必要だとする本報告書は、各国の財務大臣への警鐘であると共に、各国がより適格な判断を下し財務面の抵抗力を強化するための指針でもある。
同報告書は、情報が意思決定に重要な役割を果たすことを強調している。各国は、直面するリスクを正しく理解できるようになる必要がある。自然災害の可能性を特定し、それが人々や資産に及ぼす潜在的影響を理解することは、抵抗力を備えた開発を進めるために欠かせない要素である。
G20と招待を受けた国の合計15か国(アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、メキシコ、トルコ、英国、米国)、ならびに経済協力開発機構(OECD)が、本報告書の作成に当たり経験を共有した。
メキシコは、有効な市民保護システムの構築と基幹インフラの復旧を支援する革新的な金融戦略を駆使して、各国に先んじた災害リスク対応を行なっている。世銀グループは、長年にわたってメキシコ政府と協力し、災害への対応を発生後から発生前の事前準備態勢の確立へのとシフトするよう支援してきた。例えばメキシコは、世銀の支援の下、2009年に初の大災害債券を発行した。これにより、同国政府は、主に地震と熱帯暴風雨を対象とするパラメトリックな保険を効率よく購入して、災害リスク・プールを資本市場に移転することが可能となった。