数か月に及ぶ選考過程の末、全会一致で決定
ワシントン、2012年6月7日 ― 地球環境ファシリティ(GEF)の評議会は本日、GEFの次期CEO(最高執行責任者)兼評議会議長として、国際機関や地球環境問題の分野で豊富な経験をもつ日本国財務省の石井菜穂子副財務官を全会一致で選出した。
全会一致の決定に至る数か月間、同評議会は、世界各国の多数の候補者の中からGEF (世界最大の地球環境に関する公的資金供与機関)の次期CEOの選考を進めてきた。GEF評議会は、加盟182か国によって任命された32名の代表で構成されている。
「評議会は、GEFのCEO兼議長に選出された石井菜穂子氏を祝福します」と、GEF評議会のジョセフ・ブイズ共同議長(ベルギー代表)は述べている。「評議会は、地球環境に関し、このポジションが今日もつ重要性を十分認識しています。石井氏がGEFの指導・強化に精力的に取り組むことを心から確信しております」
石井氏は現在、日本国の財務省副財務官兼内閣官房内閣審議官(地球環境ファイナンス担当)の任にある。本日の決定を受け石井氏は、GEFのCEOとして2期目を満了するフランスのモニーク・バルビュー氏の後を引き継ぎ、8月1日付でGEF第4代CEOに就任する。
石井氏は、選出の知らせを受け、「GEFという非常に重要な使命を持った特色ある機関のトップに、同評議会から選出いただいたことを誠に光栄に思います」と述べている。
また、石井氏は、「これからの10年は、全人類の生活の質を高めつつ、生態系保全という極めて重要な取り組みが成功するか否かを左右する様々な判断を迫られることでしょう。そうした中でGEFは、地球環境政策を大きく転換させる触媒として、重要な役割を果たさなければなりません。またGEFは、地球公共財の保全、世界や地域のリーダーの動員、革新的アイデアの促進、結果重視の投資の牽引を続けなければなりません」と付け加えた。
さらに、石井氏は、GEFのCEO兼議長として2期目を満了するバルビュー氏について、GEFの業務効率を大幅に向上しつつ、GEFプログラムの拡充に大きく貢献したとしてその業績を賛えた。
バルビュー氏は2006年からGEFのCEOを任じているが、石井氏の今後の活躍を祈ると共に、GEFが引き続き健全に運営されていくことを確信していると述べた。
「石井氏のことは、日本政府でGEFの活動に関わってこられた頃から、よく存じています。この重要な組織が、素晴らしい方の手に引き継がれたと確信しております」と、バルビュー氏は述べている。「GEFは、加盟国との緊密で協力的な関係により成り立っており、ますます貴重な公的資金の慎重な管理が不可欠です。石井氏はこの両方の分野において確かな実績をお持ちです。また、国際機関における同氏の豊かな経験もGEFに大きく貢献することでしょう」
石井氏は、開発、金融、地球環境の分野において30年に及ぶ国際的な経験を有している。現在は財務省副財務官として、国際開発金融機関における日本の開発政策に関わると共に、GEFや気候変動投資基金(CIF)、クリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金(CEPF)、森林炭素パートナーシップ基金など地球環境のための基金について日本政府側を統括する立場にある。また、緑の気候変動基金(GCF)の創設に向けた移行委員会の日本代表も務めた。
G20財務大臣・中央銀行総裁会議議長のホセ・アントニオ・メアデ・クリブレーニャ・メキシコ財務公債大臣は、「石井氏の任命は、地球環境にとって喜ばしい。深刻な問題に直面しているこの重要な時期に、開発、環境、金融の前線で『行動する者』として、また政策分野でも活躍されてきた同氏の経験は、GEFに大きく貢献するでしょう」と述べている。
コンゴ共和国のヘンリー・ドゥジョンボ森林経済・環境大臣は、石井氏が任命されたことについて、「GEFはアフリカの環境問題への対処において極めて重要な役割を担っている。石井氏がこの重要な任務にあたることを大変うれしく思う。石井氏は、開発分野での豊富な経験を活かしてくれるはずだ。彼女のリーダーシップの下で、GEFは今後の重要な10年において一層の成果を挙げるだろう。」と述べた。
石井氏は、財務省副財務官に任命される以前は、世界銀行のスリランカ・モルディブ担当局長としてコロンボに駐在していた。氏の局長時代は、同国の長引く内戦の最終段階と重なっている。局長として石井氏は、内戦との関係を配慮したアプローチで幅広いステークホルダーとの協力関係を構築した。同氏の30年にわたる経歴のうち、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、ハーバード大学国際開発研究所など、国際的に大きな影響力のある機関での勤務が半分を占めている。また財務省でも、要職にある。
さらに、石井氏は、「長期経済発展の実証分析:成長メカニズムを機能させる制度は何か」をはじめとする多数の著書や論文を執筆しており、国際開発研究大来賞を受賞している。
石井氏のCEO任命は、GEF評議会が今週ワシントンで開かれた今年最初の会合(年に2回開催)において、3人の最終候補者のうち選考審査委員会(SRC)の同氏を第一候補とする推薦を承認する形で決定した。推薦の理由としてSRCは評議会に対して、石井氏の国際開発と環境分野における確立された評価、GEFの将来の役割についての明確な見解、GEFの直面する課題についての認識、地球的課題に対する協調的・外交的アプローチを挙げている。
GEFは、国際機関、市民社会組織、民間セクターとの連携を図りながら、加盟182か国の政府と一体となって地球環境問題に取り組む一方、各国が進める持続可能な開発政策を支援している。今日、GEFは、地球環境を改善するプロジェクトに対する最大の公的資金を供与する機関である。GEFは、独立して運営されるフアイナンス機関として、生物多様性、気候変動、国際水域、土地劣化、オゾン層保護、残留性有機汚染物質(POPs)に関するプロジェクトを対象に無償資金を提供している。
1991年の創設以降、GEFは165か国余の2,700件以上のプロジェクトに105億ドルの無償資金を提供し、協調融資510億ドルを動員するなど、途上国と新興国に対する支援において優れた実績を誇る。GEFはまた、小規模無償プログラム(SGP)を通じて、1万4000件以上、総額6億3400万ドルに上る少規模無償資金をCSOs やコミュニティ団体に直接供与している。詳細はウェブサイト(www.thegef.org)をご覧ください。