プレスリリース

食糧・栄養に関する開発目標に遅れ-IMF・世界銀行報告書

2012年4月20日




ワシントン、2012年4月20日 – 世界銀行と国際通貨基金(IMF)は本日、「グローバル・モニタリング・レポート(GMR)2012」を発表し、食糧と栄養に関する開発目標について、途上国の進捗状況に深刻な遅れが見られ、乳幼児と妊産婦の死亡率は依然として容認しがたいほど高い、と指摘している。

本報告書によると、昨今の国際的な食糧価格急騰により、ミレニアム開発目標(MDGs)の数項目で進捗が止まっている。
 
「GMR 2012:食糧価格、栄養、及びミレニアム開発目標」は、MDGsの一部の目標については順調に歩を進めているとしている。具体的には、極度の貧困の半減と安全な飲料水へのアクセス確保の目標は、MDGsの達成期限である2015年まで数年を残して既に達成されており、また、教育及び学校でのジェンダー格差解消の目標も達成の可能性が高くなっている。
 
これに対して、5歳未満の乳幼児と妊産婦の死亡率の削減については、進捗に大きな遅れが見られる。結果的に、いずれの途上地域でも、2015年までにこの2つの目標を達成することはないだろう。妊産婦の死亡率削減が特に遅れており、いまだに目標の3分の1を達成したにすぎない。乳幼児の死亡率削減も同様に見通しは暗く、これまでに目標のわずか50%を達成したに過ぎない。
 
「食糧価格が高騰したり乱高下すると、健康や教育に長期的な悪影響が及ぶだけでなく、消費者の購買力が損なわれ、何百万もの人々が貧困と飢餓から逃れることができなくなるなど、MDGsのうち多くの目標の達成が阻害されることになる」と、世界銀行のジャスティン・リン・チーフエコノミスト兼開発経済上級副総裁は述べている。「栄養はMDGsの中でも忘れられたテーマの1つであり、食糧価格の乱高下には最優先で取り組まなければならない」
 
本報告書は、食糧価格の急騰に対する国やコミュニティの抵抗力強化の方法について詳述している。具体的には、農家による増産を促す農業政策の実施、食糧価格高騰に対する抵抗力強化のための社会的セーフティーネットの活用、幼児期の成長を助長する栄養政策の強化、食糧市場へのアクセス向上を図る貿易政策の策定、食糧価格乱高下の抑制、生産性向上の動機づけなどに取り組むよう各国に求めている。しかし、世界的な景気後退を受け、各国は高騰する食糧価格への対応でさらに困難な課題に直面している。
 
「世界経済の脆弱化は、人間開発の目標に向けた途上国の歩みを大きく鈍化させかねない。これは特に低所得国において、世界金融危機により財政、債務、経常収支の状況が悪化しているため」と、IMFのヒュー・ブレデンカンプ戦略政策審査局副局長は述べている。
 
MDGsへの進捗状況は地域によって異なる。高中所得国がほぼすべての目標を達成する見通しであるのに対し、低所得国や脆弱国は後れを取っており、達成済み、または順調に進捗中の目標はわずか2つにすぎない。食糧価格は2011年のピーク時から下落しているが、一次産品価格は依然として不安定だ。
 
「価格変動に対応するために、財政・金融政策による対応を補完するものとして、先物市場での穀物販売など、保険やリスクヘッジを導入する途上国が増えつつある。これは、自然災害や一次産品価格の変動といったリスクを管理するための、より広範な戦略の一環といえる」と、IMFのリンゲ・ニールセン・シニアエコノミストは述べている。
 
本報告書の主任執筆者である、世界銀行のジョズ・バービーク・リード・エコノミストは、開発援助の減少や人口増加、食糧価格高騰によって、貧困層のための栄養プログラムに重点的に取り組む必要性の先行きはさらに困難なものとなると警告している。
 
「我々の予測では、2015年の段階で、依然として10億2000万人が極度の貧困状態にあるだろう。貧困層や脆弱層を中心に食糧の安全保障や栄養を改善するためには、新たな方法で援助を強化しなければならないことは明らかである」とバービークは述べている。

地域別概要
 
東アジア・太平洋地域では、極度の貧困、ジェンダーの平等、安全な飲料水と衛生施設へのアクセスに関する目標はすでに達成されている。初等教育修了についても大きな進歩が見られ、2015年までに目標は達成できる見込みである。乳幼児と妊産婦の死亡率削減の目標に関する進捗状況は最も遅れている。
 
欧州・中央アジア地域では、貧困及び飲料水へのアクセスに関する目標はすでに達成されている。普遍的初等教育修了及びジェンダーに関する目標については現在、順調に進んでいる。妊産婦の健康状態と基本的な衛生施設へのアクセスの改善に関しては、さらなる努力が必要である。
 
ラテンアメリカ・カリブ海地域は、既に、極度の貧困、初等教育修了、ジェンダーの平等、安全な飲料水へのアクセスに関する目標は達成している。乳幼児の死亡率削減の目標については順調に進んでいるが、妊産婦の死亡率削減については進捗に遅れが生じている。
 
中東・北アフリカ地域は、貧困及びよりよい衛生施設へのアクセスに関する目標は達成した。普遍的な初等教育修了とジェンダーの平等については、達成に向けて急速に進歩している。しかし、安全な飲料水の確保や妊産婦の死亡率削減についての取り組みは遅れている。
 
南アジア地域 は、安全な飲料水へのアクセスに関する目標は既に達成され、初等・中等教育でのジェンダー格差の解消は2015年までに達成される可能性が高い。初等教育修了についても前進が見られ、極度の貧困の削減についても、初等教育ほどではないが、進歩があった。しかし、乳幼児及び妊産婦の死亡率削減と衛生施設へのアクセス改善については目標を大きく下回っている。
 
サブサハラ・アフリカ地域は、ほとんどのMDGsで後れを取っている。この地域では、ジェンダーの平等や初等教育修了、安全な飲料水へのアクセス及び極度の貧困削減などについては目標の60%以上を達成したが、妊産婦の死亡率など保健関連のMDGsには早急な対応が求められる。

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プレスリリース番号:
2012/397/DEC

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