世界銀行は力強くかつ健全で、新たな課題に対応する用意ができている、と総裁
ワシントン、2012年2月15日 ― 世界銀行グループのロバート・B・ゼーリック総裁は本日、5年間の任期満了に伴い6月末にて退任すると表明した。この5年間、世銀は組織として大きな変革を遂げ、世界的な経済危機に当たって途上国の経済発展と貧困削減のために過去最大の増資を行い2470億ドル以上の資金を動員するなど、歴史的な役割を演じた。
「才能豊かな人材を多数擁する世界的な組織を率いることができ、光栄に思っている。我々は、途上国が危機を切り抜け、世界経済の変化に適応できるよう、力を合わせて支援してきた。世界の成長が多極化した今日、『第三世界』という従来の概念は過去のものとなり、途上国が成長の原動力として、また責任あるステークホルダーとして重要な役割を担っている、というのが世銀の認識である。同時に、貧しい人々、国々、そしてコミュニティに対する支援を拡大し、世銀がなくてはならないイノベーター、触媒、そして新たな国際協調主義の推進者として働くことができることを証明してきた」とゼーリック総裁は述べている。
「世界が世銀の支援をより必要とした時、出資国がこれに応えて増資に合意されると共に、世銀の即応力、有効性、透明性向上に向けた重要な改革を支援して下さったことに心から感謝申し上げる」とゼーリック総裁は加えた。「現在の世銀は、力強くかつ健全で、新たな課題に対応する用意ができている。すなわち、後任に道を譲る時がきたと考える」
ゼーリック総裁在任中の世銀の主な取組み:
迅速かつ積極的な危機対応イニシアティブ
● インフラ、民間セクター、農業、貿易金融、社会的セーフティネット、教育、保健、環境など主要分野に過去最大の2470億ドルの支援を提供。
● ドナー各国の財政引締めという厳しい逆風の中、20年ぶりに世銀の一般増資を実施(新規資金の半分以上は途上国からの出資)し、最貧国支援を目的とする世銀機関であるIDAの増資でも過去最高の900億ドルを調達。
● 「食糧が最優先(Putting Food First):食糧危機の警鐘を世界に鳴らし、そのための新たな資源とツールを整えた。世銀の農業セクター向け貸出は年間60億ドルに増大。
● 政府系ファンドや年金基金がアフリカなど新興国の民間セクターに回るよう、国際金融公社(IFC:世銀グループの民間セクター支援機関)にアセット・マネジメント社を新設(これまでに30億ドルを調達)。
世界銀行の近代化
● 情報の透明性:画期的な情報公開政策や、世銀のプロセス、プロジェクト、データへの自由なアクセスを認めたオープン・データ・イニシアティブ。透明性と説明責任を高めるため、結果が一目瞭然となるよう全プロジェクトの地理的分布図を作成。昨年、シビルソサエティ団体「Publish What You Fund」(本拠:英国)が、援助の透明性ランキングにおいて世銀をトップに。
● 世銀の結果重視の姿勢を強調し、世銀第三の融資制度として、融資の実行を検証可能な成果とリンクさせた「成果連動型プログラム融資制度(Program for Results)」を設立。
● 腐敗防止の推進、新たな制裁政策、不正防止部門の新設、不正に関わる個人や法人を相互に締め出すとする覚書を他の国際開発機関と締結、不正蓄財回収(StAR)イニシアティブの立ち上げ、「国際汚職追放連盟(ICHA)」の発足など、世銀の不正対策を推進。
● 気候投資基金(CIF:拠出額71億ドルで、46カ国から500億ドル近い投資を呼び込む)など、イノベーションと実用性を融合した新規プログラムを設立。
● 世銀幹部の変革: 幹部の半数が女性、ほぼ半数が途上国出身者(例:ジャスティン・リン(中国出身)は世銀初の途上国出身チーフ・エコノミスト)。
● 年間にわたり実質的に予算据え置き。世銀のトリプルA格付けを維持。
新しい時代の国際協調主義
● 開発、農業、食糧安全保障、インフラなどの課題対応に向け、G-20との協力を推進。
● 新たな取組み: 安全保障、紛争、開発のグローバルなパートナーシップを目指すナイロビ・センター、経済合理的なジェンダーの平等、都市開発・インフラ整備のためのシンガポール・ハブ、アラブ世界イニシアティブ、などの立ち上げ。
● 世銀内での途上国の発言権拡大、特にサブサハラ・アフリカの理事1名の増員。市民の声を開発の主流に取り入れるための「社会的説明責任強化のためのパートナーシップ」の設立。
ゼーリック総裁は、6月30日の任期満了まで世銀総裁としての責務に全力で邁進し、引き続き政策やプログラムを迅速に推進していくと述べた。一例として、中国の成長モデルの今後の構造に関して、他の中所得国に教訓となる、世銀と中国の画期的な合同研究を2月下旬に発表の予定である。