[仮訳] ロンドン 2012年1月30日 – 製薬会社13社、米、英、UAE(アラブ首長国連邦)の各政府、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、世界銀行を含めた、保健分野の国際機関は本日、10の「顧み られない熱帯病(NTD)」について2020年までの撲滅・抑制に向けた歩みを加速するため、協調して新たな取り組みに着手すると発表した。
これらのパートナー機関は、王立医科大学で開かれたイベントの席上、NTD感染国との協力の下、NTD対策に集中的に取り組み、世界で14億人に上るNTD感染者(大半が最貧困層)の暮らし向上を図るため力を合わせていくと誓約した。
NTD に対する協調した取り組みとして過去最大規模となる今回のイニシアティブでは、2020年まで需要に応えるべく既存の医薬品贈与計画の持続・拡大、新薬の 研究開発加速のための専門知識・化合物の共有、研究開発のサポートならびに医薬品配布や実施計画の強化に向けた7億8500万ドル以上の提供が行なわれ る。またパートナー機関は、新たなレベルでの協力と進捗状況の把握を誓約する「NTDに関するロンドン宣言」を採択した。
ビル&メリンダ・ ゲイツ財団のビル・ゲイツ共同議長は、「本日、われわれは投資効果向上と、これまでの目覚しい進歩のさらなる推進に向け、力を合わせていくことになった。 この革新的アプローチは他の世界規模の開発問題を解決するためのモデルとなり、何百万人もの人々の自立を助け、援助ニーズを満たすことになるだろう」と述 べている。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、NTDの製品とオペレーションズ・リサーチの支援に5年間で3億6300万ドルを提供すると発表した。
NTD対策の方向を示すものとして、世界保健機関(WHO)は今週、2020年までの目標を定めた新たな戦略「NTDの世界的影響克服の推進-実施に向けたロードマップ」を発表した。
世 界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は「WHO、研究者、パートナーの取組みや、業界の寄付を受け、NTDをめぐる状況は変わってきた。 これらの病気の歴史は長いが、今や驚くべきスピードで衰退しつつある。本日このように、動きに弾みがついたことにより、これらの病気のほぼすべてを 2020年までに撲滅・抑制できるものと確信している」と述べた。
パートナーによる新たなコミットメントは、ギニア虫感染症絶滅に充てる資 金の不足を解消し、2020年までにリンパ管フィラリア症、失明の原因となるトラコーマ、睡眠病、ハンセン病を絶滅させ、土壌伝播ゼンチュウ症、住血吸虫 症、河川盲目症、シャーガス病、リーシュマニア症を抑制するという目標に向けた歩みを促進するだろう。
パートナーである13の製薬会社の最 高経営責任者(CEO)を代表して、グラクソ・スミスクラインのサー・アンドリュー・ウィティCEOは、「何十年にもわたり、多くの企業と組織がこれらの 恐るべき病気と戦ってきた。だが、単独の企業や組織で成し遂げられることではない。本日われわれは、これらの病気との現在そして将来の戦い方を根本的に変 えるために協力することを誓う」と語った。
国際製薬団体連合会(IFPMA)によると、新たな誓約額とこれまでの誓約分の合計として、パー トナー機関は年間平均14億回分の治療を提供することになる。さらに、11社と、研究開発組織である「顧みられない病気のための新薬イニシアチブ (DNDi)」による新たな共同研究開発とアクセス合意を通じ、新たな治療薬につながる可能性のある化合物ライブラリにこれまで以上にアクセスが可能にな る。これらのコミットメントと並行して、研究対象の化合物、知見、専門知識のデータベースであるWIPO Re:Searchなど、NTD治療の開発を加速するための重要な取り組みも進められる。
ギニア虫感染症撲滅のための資金不足を解消するた め、アラブ首長国連邦のハリーファ・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン大統領、ゲイツ財団、子どもの投資資金財団は4000万ドルをカーター・センターに 寄付する。英国際開発省(DFID)がNTD対策として4年間で1億9500万ポンドの提供を誓約したと発表しているが、その一部として、他の機関からの 出資を条件に2000万ポンドを提供すると先週発表していたことに、今回アラブ首長国連邦等が応えたものである。
米国際開発庁 (USAID)も、2006年以降に投じた2億1200万ドルに加えて、医薬品提供・配布プログラム推進のため米議会から8900万ドルの予算割当があっ たことを発表した。さらに、世界銀行が、NTDの撲滅と抑制を一本化するより強力なコミュニティ保健システムの構築に向けてアフリカ諸国を財政面、技術面 で支援すると共に、他のパートナーと協力して、河川盲目症撲滅を目指す信託基金を、アフリカで他の予防可能なNTDにまで拡大する。
「こう した恐ろしい病気により、世界で数百万人もの最貧困層が意味もなく障害者となり、失明し、命を奪われている。世界は、この状況に終止符を打つべく立ち上 がった」と英国のスティーブン・オブライエン国際開発相は述べている。「英国はパートナーと協力して、数百万人に対して重要な治療の提供に向けた道を開こ うとしている。これにより、子どもたちが学校に行けるようになり、親が家族を養えるようになれば、貧困から脱却でき、いずれはもう援助に依存しなくても良 くなるだろう」
WHOは2010年版報告書「NTDの世界的影響克服の推進」の中で、NTD撲滅のための新たな出資を求めているが、本日の誓約と宣言はこれに応えたものである。製薬業界代表、ゲイツ財団をはじめとするパートナーは昨年来、この拡大イニシアティブの調整を図ってきた。
NTD 感染国であるバングラデシュ、ブラジル、モザンビーク、タンザニアの各国政府は、NTD撲滅に向けた総合計画を実行し、政治・財政資源をNTD対策に集中 的に投入すると発表した。すべてのパートナーが、2020年までとする目標に向けた進捗状況を定期的に把握するメカニズムを模索することで説明責任を果た すと誓った。
「モザンビークにおいてNTDは特に大きな負担となっている。その事実を理解した瞬間から、モザンビーク政府は行動を起こし、 これらの疾病の抑制・撲滅のためのコミットメントと投資を継続的に増やしてきた」と、モザンビークのアレクサンドル・マングエレ保健大臣は述べている。 「本日このパートナーシップの下で出資が誓約されたことで、モザンビーク政府はこの使命を達成できるものと確信を強めている」
本日発表されたパートナーの具体的なコミットメントは以下の通り。
医薬品供給の継続・拡大・延長:
- NTD用医薬品無償提供プログラムに参加しているすべての企業が、2020年までプログラムを継続または延長することを誓約し、一部の企業はコミットメントの内容を拡充すると誓約した。具体的なコミットメントは以下の通り。
- サノフィ、エーザイ、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が協力して、WHOのリンパ管フィラリア撲滅のための世界的プログラムに1億2000万錠のDEC錠剤を提 供する。これにより、2014年に始まるエーザイの出資に関するコミットメントと合わせて、DEC錠剤は2012年から2020年まで十分な量が供給され ることになる。
- バイエルが、シャーガス病治療のニフルチモクスの無償提供を現在の倍量にまで増やす。
- エーザイは、リンパ管フィラリア用DEC錠剤22億錠の無償提供を2020年まで延長する。
- 2011年にリーシュマニア症用のアムビゾームの無償提供を発表したギリアドは、リーシュマニア症治療薬の原価での提供を継続し、資源の乏しい国々でコストを削減できるよう技術とプロセスを研究し、投資することを約束すると発表した。
- グラクソ・スミスクラインは、2020年までさらに5年間にわたり毎年4億錠を提供する形で、土壌伝播ゼンチュウ症治療のためのアルベンダゾールの現在の無償提供を延長すると共に、リンパ管フィラリア対策として年間6億錠の無償提供を継続する。
- ジョンソン・エンド・ジョンソンは、土壌伝播ゼンチュウ症向けメベンザドールの現在の無償提供を延長し、2020年まで毎年2億錠を提供する。
- MSDは、河川盲目症とリンパ管フィラリア(河川盲目症と併発)治療のイベルメクチンの無制限の無償提供を続けると共に、他の病気についてもイベルメクチンの活用を話し合う。
- メルクKGaAは、プラジカンテル錠の無償提供を年間2500万錠から2億5000万錠に大幅に増やし、プログラムを無期限延長する。
- ノバルティスは、ハンセン病に対する決め手として、世界のハンセン病患者に対する多剤併用療法(リファンピシン、クロファジミン、ダプソン)の提供を約束する。
- ファイザーは、失明の原因となるトラコーマ用のアジスロマイシンの無償提供を少なくとも2020年まで継続すると共に、アジスロマイシンで治療中の子どもの死亡率減少に関する研究にこの薬と偽薬を無償提供する。
- サノフィは睡眠病向けのエフロルニチン、メラルソプロール、ペンタミジンの現在の無償提供を2020年まで延長すると共に、これらの薬が引き続き治療中の患者に原価で届くようロジスティック面のサポートを延長する。
新治療法に対するR&D加速
- 「顧 みられない病気のための新薬イニシアチブ(DNDi)」」の下、現在アボット、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザーが協力して医薬品開発を進めて おり、マクロフィラリサイドなど、河川盲目症やリンパ管フィラリアの原因となる寄生虫の成虫を駆除する寄生虫感染症治療の新薬開発が進んでいる。
- アボットは、ジョンソン・エンド・ジョンソンからの技術協力、医薬品提供を得て、初期段階の医薬品の組成変更研究を進めており、前臨床開発のために専門知識を提供している。
- 前臨床開発が成功すれば、ジョンソン・エンド・ジョンソンは臨床開発のために共同出資し、ファイザーの社内科学者による技術支援など、他のパートナーと協力して取組みを進める。ジョンソン・エンド・ジョンソンは規制当局の認可取得を図る。
- ア ボット、アストラゼネカ、バイエル、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、エーザイ、グラクソ・スミスクライン、ジョンソン・エンド・ジョンソン、MSD、ノバルティス、ファイザー、サノフィの11社によるDNDiと の革新的なライセンス契約あるいは協業契約が、河川盲目症、リンパ管フィラリア、睡眠病、シャーガス病、内臓リーシュマニア症などの病気に対する新薬開発 のため、化合物・知識の共有について交渉中あるいはすでに共有している。
- DNDiおよびサノフィは、睡眠病のために、すでに臨床開発段階にあるフェキシニダゾールに加えて、新薬候補oxaborole/SCYX-7158の製品共同開発を行なうと発表した。
予防、監視、教育を含めて医薬品製造とオペレーションズ・リサーチ、配布・実施計画を促進するための出資を増額
- 一 部のパートナー機関が、ギニア虫感染症根絶に向けた資金の不足を解消すべく、カーター・センターに対して新たに4000万ドルの資金提供を発表した。ゲイ ツ財団は、2330万ドル、アラブ首長国連邦(UAE)のハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領が1000万ドル、ザ・チルドレンズ・イ ンベストメント・ファンド財団が670万ドルをそれぞれ寄付する。
- ギニア虫感染症、リンパ管フィラリア、河川盲目症、住血吸虫症を対象 とし、また失明の原因となるトラコーマや内臓リーシュマニア症対策の新規プログラム開発、リサーチ、総合的な国別アプローチのために、英国際開発省 (DFID)が2015年まで1億9500万ポンドの出資を誓約している。これは、その一部として、先週発表された2000万ポンドを補完するものであ る。
- ゲイツ財団は、2020年までに「顧みられない熱帯病(NTD)」の抑制・撲絶の達成を阻む障壁を克服し、深刻な資金不足を解消すため、5年間で3億6300万ドルの資金提供を発表した。
- USAIDは、総合NTD計画の導入・拡大のため、新たにモザンビーク、セネガル、カンボジアの3か国を含め、20か国余りに対する支援を継続する。米議会は、2012年度、NTD抑制のためUSAIDに8900万ドルの予算を割り当てた。
- 国 レベルでは、世界銀行がNTD根絶・抑制を総合的に進めるより強力なコミュニティ保健システムの構築のため、各国に財政支援、技術支援を行なう。地域レベ ルでは、世界銀行が、アフリカの河川盲目症対策を支援する現行の信託基金を受託者として引き続き監督し、同信託基金の用途を拡大して、他のパートナーと協 力してアフリカ大陸の予防可能なNTDを撲滅・制御を図る。
- ムンド・サノは、南北アメリカとアフリカの特定の場所におけるNTD抑制とプログラム強化を推進するため500万ドルを寄贈した。
- モザンビーク政府は国内の感染地域におけるNTD抑制・撲滅を目指し、以下の通り具体的目標を発表した。
- リンパ管フィラリア、土壌伝播ゼンチュウ症、住血吸虫症のすべての感染地域での対策の実施。
- 2018年までにトラコーマ感染の完全なマッピングと感染地全域での対策の実施。
- 大規模医薬品投与プログラムから継続して利益を得られるようにするための調査と行動の能力向上。
- ブラジル、タンザニア、バングラデシュ、その他NTD感染国の政府は、国内でNTDを抑制・撲滅する完全な総合計画や組織的な計画の実施を発表した。
- メルクKGaA、ノバルティス、サノフィの製薬会社3社は、予防、監視、教育、疾病抑制の取組み強化のための組織的な資金提供を行なう。
- ライオンズクラブ国際協会は、2017年までに失明の原因となるトラコーマ撲滅に向けた中国政府の取組みに690万ドルの資金を提供すると発表した。
NTDコミットメントの調整および測定:パー トナーである製薬各社は、2020年目標の達成に向けて協力することを約束した。WHOのロードマップを基礎として、パートナー各社は参加各社が2020 年目標に向けて医薬品供給、研究、資金提供、実施のコミットメントを実現しているかなど、進捗状況を定期的かつ正式に追跡するスコアカードを通じて全体的 な進捗状況を把握する。このプロセスは、説明責任と透明性を確保し、なお解消されない不備を見極める。
王立医科大学で本日行われた会議の参加者は以下の通り。
- WHOのマーガレット・チャン事務局長
- ビル&メリンダ・ゲイツ財団のビル・ゲイツ共同議長
- 英国際開発省のスティーブン・オブライエン政務次官
- 米国国際開発庁(USAID)のアリエル・パブロスメンデス世界保健管理行政官補
- バイエルヘルスケアのヨルグ・ラインハルト会長
- ブリストル・マイヤーズ・スクイブのランベルト・アンドレオッティ最高経営責任者(CEO)
- エーザイ社長の内藤晴夫氏
- グラクソ・スミスクラインのサー・アンドリュー・ウィティCEO
- ジョンソン・エンド・ジョンソンのウィリアム・ウェルドン取締役会会長兼CEO兼執行委員会議長
- MSDのケネス・フレーザー会長兼社長兼CEO
- メルクKGaAのステファン・オッシュマン執行委員会メンバー
- ノバルティスCEOのジョセフ・ジメネス氏
- サノフィのクリストファー・A・ヴィーバッハーCEO
- ギリアドのポール・カーター国際業務担当上級副社長
- 「顧みられない病気のための新薬イニシアチブ(DNDi)」のベルナール・ペクール事務局長
- 世界銀行のキャロライン・アンスティ専務理事
- バングラデシュのAFM・ルハル・ハク保健・家族福祉相
- ブラジルのジャルバス・バルボサ・ダシルバ・ジュニア保健省・健康調査担当副大臣
- モザンビークのアレッサンドル・ロレンソ・ジャミー・マングエレ保健大臣
- タンザニアのドナン・ムバンド保健・社会福祉省防疫担当ディレクター
このイベントは以下のウェブキャストで閲覧可能です。
http://www.UnitingToCombatNTDs.org
パートナー各機関の連絡先
- Bill & Melinda Gates Foundation: +1 (206) 709 3400, media@gatesfoundation.org
- DFID: Robert Stansfield, +44 (0) 77 7165 2597, r-stansfield@dfid.gov.uk
- USAID: Christopher Thomas, +1 (202) 712 1092, chthomas@usaid.gov
- AstraZeneca: Sarah Lindgreen, +44 (0) 20 7604 8033, sarah.lindgreen@astrazeneca.com
- Abbott: Colin McBean, +1 (847) 938 3083, colin.mcbean@abbott.com
- Bayer HealthCare AG: Oliver Renner, +49 (0) 21 4304 3302, oliver.renner@bayer.com
- Bristol-Myers Squibb: Patrice Grand, +33 (0) 1 5883 6706 patrice.grand@bms.com
- Eisai: Cressida Robson, +44 (0) 79 0831 4155, cressida_robson@eisai.net
- Gilead: Amy Flood, +1 (650) 522 5643, aflood@gilead.com
- GlaxoSmithKline (Global): Stephen Rea, +44 (0) 77 1780 1794, stephen.e.rea@gsk.com | GlaxoSmithKline (US): Sarah Alspach, +1 (215) 287 6354, sarah.g.alspach@gsk.com
- Johnson & Johnson, Seema Kumar, +1 (908) 218 6460, skumar10@its.jnj.com
- Merck KGaA: Dr. Gangolf Schrimpf, +49 (151) 1454 9591, gangolf.schrimp@merckgroup.com
- MSD: Kelley Dougherty, +1 (908) 423 4291, kelley.dougherty@merck.com
- Novartis: Eric Althoff, +41 (0) 61 324 7999, eric.althoff@novartis.com
- Pfizer: Andrew Topen, +44 (0) 79 6775 7688, andrew.topen@pfizer.com
- Sanofi: Jean-Marc Podvin, +33 (0) 6 7457 5170, jean-marc.podvin@sanofi.com
- DNDi: Gabrielle Landry Chappuis, +41 (0) 79 309 3910, glandry@dndi.org
- World Bank: Derek Warren, +44 (0) 20 7592 8402, dwarren1@worldbank.org