2011年2月11日 - 「現在、途上国の多くが直面する深刻な課題は食料価格の急騰リスクだ。貧困世帯や都市部の世帯にとって食費は乏しい家計の大きな部分を占め、時に予想以上の負担となる。穀物価格が高騰すると、その影響を真っ先に受けるのは貧困国や貧困層だ」―ロバート・B・ゼーリック世界銀行グループ総裁
背景
一部の基礎的食料の価格はすでに2008年当時のピーク時に迫る、又は上回っている。世界銀行は、穀物の価格が不安定に平均を上回る水準で推移する状況が少なくとも2015年まで続くと予測する。最貧国では日々の収入の3分の2近くが食料に割かれており、価格高騰は、世界経済の成長と社会の安定を脅かす不安要因として再浮上しつつある。
世界全体では10億人近い人々が飢餓に苦しんでおり、うち60%以上は女性である。食料価格が高騰すると貧困家庭は、割安で栄養価の低い食料を選ぶようになり、保健・教育サービスを利用しなくなる。農家では、食料を買う余裕がなくなると、高収益の穀物の代わりに自給用食料を栽培するようになる。栄養不良は、乳幼児や妊婦の病気、学習能力低下、生産性低下、死亡率上昇を招く。世界の子供の死亡原因のうち3分の1は栄養不良による。
世界的な食料価格の変動はG20のアジェンダであり、ゼーリック総裁はこのほどG20に対し「食料問題を最優先」するよう訴え、脆弱な人々や国が栄養のある食料へのアクセスを断たれることがないよう対策を講じるべきだと提言した。ゼーリック総裁は、食糧安全保障の観点から小規模農家の役割強化への支援、穀物貯蓄の質と量に関する情報へのアクセス改善、アフリカを中心とする天候モニタリングの強化、国際価格と現地価格の仕組み理解、災害に弱い地域における人道支援向け小規模食糧備蓄、輸出禁止に関する規約設定、効果的な社会的セーフティネット、輸出禁止や価格操作への代替策としての緊急支援、リスク管理商品の強化、などの必要性を指摘している。
世銀の取組み
世界銀行は世界食糧危機対応プログラム(GFRP)を通じて、約4000万人の貧困層に15億ドルの支援を提供している。これまでに40を超える低所得国で、最脆弱層が、新しい種子や改良された種子、灌漑などの農業支援、貧困層への食糧支援を受けている、または今後受ける予定である。例えばベナンでは、こうした支援を通じて肥料が配布された結果、10万トンの穀物が増産された。
世界銀行グループは長期的に、農業分野に対する支出を年間約60-80億ドルに増やす予定である(2008年は41億ドル)。
世銀グループが行うその他の取組み:
- 2010年4月、G20の要請を受け、各国主導の農業・安全保障計画を支援し、小規模農家への投資を促進するため、「世界農業及び食糧安全保障プログラム(GAFSP)」を新設。これまでに同プログラムに対し、6か国とビル&メリンダ・ゲイツ財団が3年間に9億2500万ドルの支援提供を誓約し、すでに3億5000万ドルが支払われた。GAFSPは発足以降、8か国(バングラデシュ、エチオピア、ハイチ、モンゴル、ニジェール、ルワンダ、シエラレオネ、トーゴ)に対し3億2100万ドル相当のグラントを承認、実行。
- 国際農業研究協議グループ(CGIAR)などを通じた農業研究への投資拡大と有効性向上の提唱
- 農業貿易のモニタリングを通じた、潜在的食糧不足の見極め
- 世界食糧安全保障危機に関するハイレベル・タスクフォースを通じた国連機関、ならびに非政府組織(NGO)との調整
世界銀行グループはまた、脆弱層の栄養状態改善のため幅広い施策を支援している。条件付現金給付など世銀のセーフティネット・プログラムを通じて、低所得国の子供に毎日約230万食の給食が供給されている。世界銀行はまた、世界食糧計画(WFP)と協力して、70か国で2200万人の子供の食料確保を図っている。過去10年間に、世界銀行は9800万人の子供を対象に、ビタミンAの配布、子供の食習慣向上に関する情報の提供、駆虫を行っている。