東京、2010年10月19日 – 東アジア・太平洋地域の景気は力強く回復しているものの、マクロ経済の安定に支障となるリスクが浮上しつつあり、その対処に注意を払う必要がある-世界銀行が本日発表した東アジア・太平洋地域経済報告書は指摘している。
「力強い回復、ただしリスクも上昇」と題する同報告書の最新版は、域内途上国全体の生産高はすでに危機以前の水準を上回り、今後も危機以前の高いペースで拡大を続ける国が数か国あるとしている。2010年、同地域の実質GDP成長率は、2009年の7.3%を上回る8.9%(中国を除くと6.7%)に達し、2000年~2008年の平均成長率と同列となる見込み。民間セクター投資が再度成長を牽引しており、経済の信認も改善し、貿易も危機以前の水準に戻った。
しかし、同地域の成長見通しの好転と先進国の景気低迷への懸念は、政策当局にとって、特に大量の資本流入と通貨の切り上げの間で、慎重にバランスをとる必要に迫られている。
利回りを求める流動性が世界的にあふれ、域外よりも域内での急成長が期待されるため、今年に入って資本の流入が急増している。流入拡大により、中央銀行による市場介入にもかかわらず、為替相場は大幅に上昇した。資本流入はまた、資産価格の大幅な上昇にも貢献した。大半の国の金融当局は今のところ、資本規制を行っていない。
「大量の資本流入が続くようなら、特に世界的な成長が低迷する中にあって、各国の政策当局は大規模な資本流入(特に直接投資)の必要性と、競争力の確保、金融セクターの安定性、インフレ抑制の間でバランスをとるという難題に直面することになるだろう」と、世界銀行東アジア・太平洋地域担当チーフ・エコノミストのビクラム・ネルーは述べている。
足元の安定を受けて景気回復が進む中、東アジア各国の当局は、慎重ながらも徐々に景気刺激策を解除しつつある。ただし各国政府は、先進国の先行き不安に適切に備え、インフラ不足に対応し、貧困層保護のための社会セーフティネットを維持する必要があることから、各国の財政赤字は少なくとも当面は、危機以前よりも高い水準が続くだろう。
域内諸国の多くはまた、中期的な成長課題にも力を注いでいる。中国が成長と投資のパターンを変更することによって経済のバランスを修復することが、持続可能性のためにますます不可欠となっている。モンゴル、東ティモール、パプアニューギニア、ラオス人民主共和国など一次産品輸出国は、資源関連の収益を開発に活用するに当たり、透明な枠組みを構築しなければならない。この地域の中所得国が今後高所得国への移行を目指すのであれば、中国を除き、物的・人的資本に対する投資を増加させ、イノベーションを奨励する必要がある。