プレスリリース

改革を再開すれば高成長の維持が可能 - 世界銀行 東アジア・太平洋地域報告書

2010年4月8日




東京、2010年4月7日 –世界的経済危機から他地域に先駆けて回復した東アジア・太平洋地域の途上国は、今後10年間、世界経済が減速する中でも高成長することができる。ただし、地域経済統合と気候変動に関する構造改革を改めて強力に推進し、域内の協調を強化することが条件だ。

世界銀行が半年ごとに域内各国の経済状況を分析する「東アジア・太平洋地域報告書」の最新版はこう指摘している。

域外の需要回復、東アジア途上国の拡張的な財政金融政策の維持、そして個人消費の急回復を受け、世界銀行は同地域の2010年実質GDP成長見通しを、2009年11月時点から1%ポイント近く上方修正し8.7%とした。また同地域は今回の危機を脱するに当たり、財政赤字を管理可能な範囲内に収め、公的・対外債務も比較的小さくとどめるとともに、社会的保護のメカニズムによって景気低迷がもたらす最悪の影響から貧困層を守っている。

東アジアの急速な回復(中国の影響が大きいが)を認めつつ、報告書は、同地域が今後中期的に直面する世界経済は従来と極めて異なったものになるとしている。

「金融危機後の新たな国際経済では、先進国の成長鈍化、世界的な金融の引き締め、先進国の財政赤字に対する懸念増大、そして世界貿易の環境悪化といった傾向が鮮明になるだろう」と、世界銀行ビクラム・ネルー東アジア・太平洋地域担当チーフ・エコノミストは述べている。「そうした中、東アジアの途上国は拡張的な財政金融政策を中立的なものへ慎重に移行させるという短期的課題に取り組むとともに、長期成長推進のための構造改革アジェンダという長期的課題に再び取り組む必要がある」

構造改革の課題は当然国の状況によって異なる。例えば中国の場合、サービス・セクターと個人消費の役割拡大、投資偏重の輸出主導的成長からの移行、持続可能な環境政策の促進などにより、経済構造を転換していく必要がある。

また、ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイなどの中所得国では、物的・人的資本に投資することで生産・輸出のバリュー・チェーンの川上へ昇ることが優先課題だ。さらに、カンボジアやラオスなどの低所得国は、製造業に参入して、世界的、また域内の生産ネットワークに組み込まれるような政策を重視する必要がある。

一次産品輸出国は健全な財政規律を実行してマクロ経済の安定と持続可能な長期的成長を確保する必要があり、太平洋の小規模島嶼国は相互および近隣経済との連携促進がカギとなる。

今回の報告書は、域内に共通の課題として2点を提示し、世界が新たな低成長時代に突入する中で域内諸国の持続的成長を促している。第一の課題とは域内経済の統合推進、第二はグリーン・テクノロジーと省エネルギーへの大転換である。

「財とサービスの域内市場が整備されれば、一層の成長機会をもたらすだろう」と、同報告書の主席執筆者イバイロ・イズボルスキ世界銀行リード・エコノミストは述べている。「統合が進めば、世界的・地域的レベルの生産ネットワーク内での産業内貿易が伸び、経済集積が促進され、コスト削減と国際競争力の向上が実現するだろう」

気候変動とエネルギー安全保障という二つの課題に対応することで、同地域で急成長を遂げる各都市は、より住みやすくなる。

イズボルスキによれば、「同地域は、グリーン・テクノロジーに素早く対応できる可能性を持っており、その結果、成長を続ける東アジアの各都市の住みやすさと持続可能性が高まるだけでなく、世界的急成長が想定される産業における比較優位をもたらすことになる。」

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プレスリリース番号:
2010/339/EAP/ENG

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