REDISSEは隣国のセネガルでも準備態勢の重要性を浸透させている。
「セネガル全土であらゆる疾病に対する監視システムを強化することができた。」と、ダカール・パスツール研究所所長アルファ・サル博士は述べた。「そのおかげで、コロナウイルスのような感染症を迅速に察知することもできるし、資金を動員して大流行に対応するための機能を高めていくこともできる。」
カンボジアでも同様に、的確な疫学的調査と国立保健研究所の強力な機能が功を奏し、今回の危機に当たっても同国の保健システムが麻痺することはなかった。保健セクターに長年にわたり投資を行ってきたIDAは、迅速に資金を提供できたので、同国政府は早い時点で緊急対応用の重要な医療機器や医薬品を調達することができた。世界的流行の比較的早い段階で新型コロナウイルスの感染が確認されたにもかかわらず、カンボジアが今回の流行でうけた打撃は比較的小さくとどまっている。
平等で包摂的な回復:決して誰も取り残さないために
世界保健機関(WHO)やユニセフとの協力により進められている同プロジェクトは、72の病院と1,970のプライマリ・ヘルスケア施設のための資金を増やすことで、2,200万人以上のイエメン国民を対象に人命を守る保健と栄養のサービスを提供している。
さらに、 今も紛争の続くブルキナファソでは、最脆弱層のための新型コロナウイルス感染症対策として政府がただちに現金給付プログラムの拡充に動いた。その際、この国最大の社会的セーフティネット・プログラムである「Burkin-Naong-Sa Ya(現地のムーア語で『ブルキナファソの貧困撲滅』の意味)」など既存の支払いシステムと受益者登録簿が役立てられた。今では、45以上のサブサハラ・アフリカ諸国が IDAの支援を受けて、社会的セーフティネットを整備している。
IDAはまた、各地で教育システムが打撃を受ける中、教育アクセスのためのテクノロジー活用において各国を支援している。パキスタンでは、政府が今回の危機をチャンスに変えようと取り組んでいる。IDAの支援によるパキスタン効果的なパンデミック対応プロジェクトを通じ、1年生から12年生を対象に教育コンテンツを配信する専用テレビチャンネル「テレスクール」が開設された。女子の3人に1人近くが一度も学校教育を受けたことがないパキスタンのような国では、遠隔学習プログラムが困難をしのぐチャンスを生み出しており、さえぎられることのない教材へのアクセスを可能にしている。
「新型コロナウイルス感染症が流行し、勉強を続けることがとても難しくなったが、政府がテレスクールを始めてくれたおかげでとても助かっている」とラワルピンディ小学校の生徒は振り返る。
雇用:生計を維持するための経済活性化
2020年の国民一人当たりGDPは3.5%低下し、貧困削減における3~4年分の進歩を打ち消してしまった。 暫定的データによると、今回の危機が労働市場に及ぼした影響は甚大で長期化し、著しく不平等である。
そうした統計の中でも、IDAは長年にわたり、経済的変革、学習成果向上、技能研修の提供、生産的な雇用の創出など、多くの場合に貧困から抜け出すための唯一の手段となる分野において途上国支援の最前線に立ってきた。
ネパール中心部出身のカマラ・B・K(38歳)のような女性は、IDA支援の持続可能な成果に希望を見出している。カマラは、IDAの支援する地震後住宅再建プロジェクトを通じ、2015年の地震で特に被害の大きかった14の被災地で研修を受け雇用された149人の女性移動石工のひとりだ。新型コロナウイルス感染症関連の制約のため、多くの現場作業員が現地に赴くことができない中、カマラのような現地住民はひっぱりだことなっている。
「石工の研修は私の人生を変えた」とカマラは言う。「新しいスキルを身に付け経験を積めるだけでなく、自分のコミュニティの役に立つ機会を与えてくれた。」
IDAは、雇用や金融包摂を促進する投資を支援するため創造的な方法を模索し続けている。バングラデシュ、カメルーン、コートジボワール、リベリア、ナイジェリア、ルワンダ、ウガンダでは、IDAの民間セクター・ウィンドウを通じ、新型コロナウイルス感染症の影響が最も深刻な中小企業のために運転資金を融資することで、ビジネスを続けられるよう支援している。