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2019年6月7日

国別プログラムが達成する良質な開発成果

マダガスカル、ソアヴィナの小学生たち。写真 © Sarah Farhat/世界銀行

 

デイビッド・マルパス世界銀行グループ総裁

世界銀行グループ総裁に就任して2カ月、私がいま最も気にかけているのは、世界銀行グループが持つミッションの緊急性です。あまりに多くの人が依然貧困にあえぎ、あまりに多くの人が清潔な水、医療、教育へのアクセスがなく、あまりに多くの人が地域経済から取り残されたままになっています。

私に課せられた最も重要な使命は、各国が良好な経済発展を遂げられるよう支援することです。就任後初のサブサハラ以南のアフリカとエジプトへの訪問では、各国が直面する個別の課題に耳を傾けました。そして平和と安定、国内の体制、協調、強靭性、健全なビジネス環境、堅実な債務管理といった好ましい成果を各国が達成できるよう後押しする共通のテーマを見出しました。

例えばマダガスカルです。豊富な天然資源に恵まれながら、人口の78%が極貧生活を送っています。2018年には、1960年の独立以来初めて憲法に則った平和的な政権交代が実現しました。ラジョリナ大統領は直ちに、道路網の整備、エネルギー、(国有企業によるお粗末な運営と脆弱な財務状況により問題が起きている)水の供給、より良い社会サービスの向上に焦点を当てた「緊急計画」を発表しました。この計画により農業の潜在力が解き放され、政府がビジネス環境を整備できれば、マダガスカルのすべての人々の生活水準を向上させる新たな経済活動が生み出されるはずです。

4人の子供を持つマダガスカルのシングルマザーの物語: IDAが資金提供するプログラムにより家族を養う給付金を毎月受け取り、IDAが支援を行った地域医療センターも利用しています。

エチオピアは今日、アフリカにおける国際開発協会(IDA)の最大の援助国です。アビィ・アハメド首相は、国内の安定化とエリトリアとの和平構築を進めるにあたり重要な役割を果たされました。アディスアベバで先月お会いした際には、同首相が持つ国家ビジョンについて意見を交わしました。首相は、通信、エネルギー、金融、運輸といった国家の戦略的産業について野心的な改革に着手しています。さらに、同国の成長にとって不可欠な、二層化した外国為替制度の収斂による民間投資の拡大、サービス向上、財政の持続可能性を目指しています。

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エチオピア、アディスアベバの都市生産性セーフティネット(UPSNP)プロジェクトの受益者たち。写真© Dominic Chavez/世界銀行

エチオピアが進めるこうした改革を支援するために世界銀行グループは、同国政府の大規模都市セーフティーネット・プログラムの立ち上げを支援しました。同プログラムは、最も脆弱な人々に現金支給を行い、地域の指導者を育成し、エントト山周辺の森林保護などの就労機会支援や新たな職への訓練を提供しています。

モザンビークも訪問しました。同国では自然災害に強い社会インフラ、ドナー間の協調、危機対応時の指導体制強化の重要性を感じました。同国には、イダイとケネスというサイクロンにより甚大な被害がもたらされました。ニュシ大統領からは、何百万人もの人が影響を受けた壊滅的被害の説明を受けました。支援国の代表者たちとも会いました。その後、イダイの直撃を受けたモザンビークで2番目に大きいベイラ市の港を訪ねましたが、そこでは、国家自然災害管理庁が14を超える国の支援を受けて、188組織1,000人を投入する大規模な対策が展開していました。世界銀行はモザンビーク政府、国連の諸機関、支援国と緊密に連携して対策を調整しています。イダイ上陸後わずか1カ月以内で、100万人を超える住民が食糧援助を享受し、90万7,000人が給水の提供を受け、74万5,000人がコレラの予防接種を受けました。ベイラ市ではがれき処理が進むとともに港も再開しましたが、これには世界銀行とドイツの復興金融公庫が共同投資した総延長11キロに及ぶ運河と洪水管理システムを備えた暴風雨排水システムが一役買いました。このプロジェクトでは太陽光エネルギーを利用した街灯の設置を行なっていますが、一時はこの街灯が町の唯一の光源でした。

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サイクロン「イダイ」襲撃後のモザンビークの街ベイラの様子。写真 © Dominic Chavez/世界銀行

壊滅的なサイクロン被害からの復興をさらに進めるため、世界銀行はモザンビーク及びマラウィとジンバブエに対する7億ドル近い支援を発表しました。モザンビークは世銀のIDA危機対応融資枠から3億5,000万ドルを受け、水道水供給の再開、基礎的社会インフラ再建と農地の復旧、疫病予防、食糧安全、社会保護、被害地域の早期警戒システムの構築に充てています。

動画: サイクロン「イダイ」の大規模な被害に見舞われた、500万人の健康を支えるベイラ中央病院

動画: 2019年3月に発生したサイクロン「イダイ」が襲ったモザンビークの街、ベイラ

サイクロンからの復興に加え、モザンビークでは依然15年間に及ぶ内戦の傷が残っています。大統領は、教育、社会包摂への一層の投資と民間セクターの問題解決などを含んだ、社会の安定とより高い経済成長を目指す計画を策定しました。世界銀行の現地事務所スタッフは、こうした優先課題について認識を一致する一方で、モザンビークが抱える債務とガバナンスの問題に懸念を抱いています。同国は現在、債務スキャンダルによる経済的困難のため、一部の支援国が援助を停止しています。政府は現在、債務を再編し、その管理を強化して投資家の信頼を再び得ることにより、さらなる民間投資を呼び込む努力を続けています。

エジプトへの訪問では、エルシーシ大統領をはじめ首相、閣僚の方々と会談しました。民間セクターの代表者らとも会い、世界銀行と国際金融公社(IFC)が同国南部のアスワンで手掛ける複数のプロジェクト現場を訪れる機会を得ました。エジプトは近年、主要な改革を実施しましたが、次の段階が重要なカギを握ります。補助金やガバナンス、債務透明性や国営企業改革のさらなる前進が、成長の果実を全エジプト国民に確実に行き渡らせるためには不可欠です。

エジプトは、エネルギーや観光、農業などへの民間投資を拡大することにより経済強化を達成できるまたとない機会を迎えています。しかしそのためには、民間企業と国営企業の隔てない企業間の健全な競争環境が作られなければなりません。

こうした潜在的ビジネスチャンスの可能性は、ベンバン太陽光発電プロジェクトの現場を訪れた際に明らかでした。同プロジェクト完成の暁には、世界最大の太陽光発電所として、約100万世帯に電力を供給し、4,000人に長期雇用を創出します。このプロジェクトは、政府が再生可能エネルギー用固定価格買い取り制度を用いた画期的アプローチから生まれたものです。発電所を複数の中規模プロジェクトに分割することにより国内外の民間の大企業及び中小企業が出資可能となり、その結果エジプトは太陽光発電市場に参入することができました。IFCはドキュメント作成と一括審査の定型的アプローチでこのプロジェクトに支援を行い、交渉時間の短縮と操業コスト削減の一助となりました。この手法により、20億ドルを超える民間投資と、プロジェクトファイナンス市場に新たに参入する新規の金融機関を呼び込みました。これは将来の電力産業投資に振り向けられる資金ベースの拡大に資するものです。本プロジェクトは、国際復興開発銀行(IBRD)、IFC、多数国間投資保証機関(MIGA)という世銀グループの各機関が連携して成果を上げた素晴らしい実例です。 

動画:世界銀行グループが支援を行い、エジプトのベンバンに建設された世界最大の太陽光発電所

また、エジプトの創意工夫が凝らされたタカフル・カラマ現金給付プログラムについても説明を受ける機会を得ました。このプログラムは、ソーシャルワーカー、タブレット端末、郵便システムを通じたデジタル決済システムを使い、3年間で950万人(うち88%は女性)の貧しい人々に資金を届けます。また、児童の登校率80%への引き上げと、年3回の医療クリニックでの診察を条件としたことから、教育と健康の面での向上も達成できました。 

今回の私のアフリカ訪問の準備・調整に携わったすべての人々に感謝致します。私はアフリカから希望に満ち溢れて戻りました。世界銀行グループは、各国の有能な指導者、他の開発機関、市民社会グループ、そして民間セクターと協力することにより、マダガスカル、エチオピア、モザンビーク、エジプト、その他すべての開発途上国の改革への良きパートナーとなれると確信できたからです。