Skip to Main Navigation
特集2024年12月20日

南佑弥(みなみ ゆや)世界銀行 財務局ジュニアアナリスト~第66回 世銀スタッフの横顔インタビュー

2024年7月、世界銀行入行。財務局ジュニアアナリストとして、ファイナンシャルテクノロジーチームで世界銀行が発行するデジタル債やブロックチェーン技術を使った金融技術のプロトタイププロジェクトなどを担当。シンガポール国立大学にて経営学学士を取得(2024年)。世界銀行入行前には、世界銀行財務局やシンガポールの証券会社などでインターンシップ経験を積んでいる。

南佑弥 世界銀行 財務局ジュニアアナリスト
Yuya Minami

2024年7月、世界銀行入行。財務局ジュニアアナリストとして、ファイナンシャルテクノロジーチームで世界銀行が発行するデジタル債やブロックチェーン技術を使った金融技術のプロトタイププロジェクトなどを担当。シンガポール国立大学にて経営学学士を取得(2024年)。世界銀行入行前には、世界銀行財務局やシンガポールの証券会社などでインターンシップ経験を積んでいる。

学部卒業後に国際機関のキャリアという扉を開き、最先端の金融技術に果敢に取り組む南さん。フレッシュな透明感に溢れ、控えめで物腰柔らかでありつつも、「やりたいものがあるなら、それに向かって行動していく必要がある」と、高校時代から考え始めた国際機関で働くというビジョンに向けて、着実に駒を進める姿には行動力と芯の強さを感じる。

高校時代から国際機関のキャリアを視野に

開発に興味を持ったのは、8歳から11歳まで親の転勤でタイに住んでいたことがきっかけだと思います。当時のタイはまだ途上国であり、政治的にも不安定でした。両親はタイ国内をあちこち連れて行ってくれましたが、同じ年齢くらいの子どもが物乞いをしているのを目の当たりにしました。その後、大学時代にタイに遊びに行ってみると随分と成長しており、ファンションや建築物も様変わりし、バイクの数は減り、立派な自動車が増えていて驚きました。自分の目で一国の経済成長を目の当たりにしたような気分になり、それがきっかけで開発に興味を持ちました。

また高校時代に、AIG高校生外交官プログラム(HSD: High School Diplomats)に参加し、ニューヨークの国連本部やワシントンDCの国際通貨基金(IMF)を訪問したことも私の進路に影響を与えました。元HSDで当時国連でインターンをしている方が同行してくれ、国際機関でインターンができることを初めて知り、国際機関でのキャリアを考えるようになりました。

世界の金融ハブに刺激されて金融の世界へ

大学はシンガポール国立大学のビジネススクールでファイナンスを勉強しました。タイから日本帰国後、インターナショナルスクールで苦労して身に着けた英語力をより伸ばしたく、バイリンガルコースがある中高一貫校で国際バカロレアを履修したため、最終試験を受けるとスコアがもらえ、そのスコアを使って比較的簡単に海外の大学を受験することができました。シンガポールに留学しようと思ったのは、タイにいたこともあって東南アジアが好きで、その上英語でみっちり勉強したかったからです。当初は、多国籍国家のシンガポールのダイバーシティ戦略とその仕組みに興味を持ち、人材マネジメントを勉強したいと思っていました。ところがシンガポールは世界有数の金融ハブでもあり、周りの人に薦められたこともあって金融の世界に興味を持つようになりました。加えてどの国も開発・経済成長には資金が必要であるため、基本的な銀行の仕組みについて学びたいと考えました。

さらに実践的な理由として、世界銀行ではあまり学部生を対象としたインターンシップは多くない中で、インターンシップを提供している財務局ではその応募要件としてファイナンスか経済学どちらかを大学で勉強していなければならないため、要件を満たすためにもファイナンスを専攻することにしました。

大学時代には、フィリップ証券や後述する世界銀行財務局などで毎年インターンシップ経験を積み、また欧州中央銀行の本部があることでも知られているドイツのフランクフルト近郊のビジネススクールでも5カ月間勉強しました。シンガポールは競争社会で、周りの学生がインターンシップに積極的に参加していたので、私も自然と同じ道を進みました。シンガポールは小さい国ですが、日本を含む様々な国の大企業が進出しており、世界規模のイベントやフォーラムなども多数あって、大企業でのインターンシップに挑戦しやすい環境があったことも影響しているかもしれません。

世界銀行財務局のサマーインターンシップに挑戦

財務局のサマーインターンシップについては、大学2年生の頃から調べ始め、3年生の時に応募し、4年生になる直前の休暇期間に実現しました。選考ではアメリカ式のレジュメとカバーレターとダイバーシティーステートメント(自分がどのように世銀における多様性に対して貢献できるかを文章で説明したもの)が応募書類になり、 試験(この試験は2024年から廃止)に合格すると、オンラインでの面接に進みます。今年から選考時期が変わり、10月中旬には応募の締め切りがあり、年末には結果がわかるようになりました。

財務局が10月に開催したパンプキンカービングイベントで、ナイジェリア出身で同期のジュニアアナリストと。
財務局が10月に開催したパンプキンカービングイベントで、ナイジェリア出身で同期のジュニアアナリストと。
このインターンシップは自分にとって大変勉強になり、必要ならギャップイヤーをとってでもやる価値があると思いました。参加者のレベルがとても高く、何より世界銀行で働きたいという気持ちが強くなりました。世界銀行の人はオープンで色々なことを教えてくれますし、国際的で多様性のある職場です。シンガポールも多様性のある国ですが、世界銀行ほど多くの国の人が集まる職場はないと思います。

世界銀行財務局のジュニアアナリストへ

夏のインターンから約1年後の2024年の7月に、財務局オペレーション部門のフィンテックのチームにジュニアアナリストとして入行しました。これは財務局のインターン経験者のみが応募できるポジションで、最短1年、最長2年の契約になります。インターンシップの途中で募集が始まり、インターンが終わってシンガポールに帰国した後にオンラインで面接があり、合否が通知される流れでした。応募する際には、自分の希望の部署を3つまで出せます。募集時に必要な書類はレジュメとカバーレターで、インターン生16人のうちの半数、8名がアナリストになることができます。先輩方はその後世界有数の大学院や金融業界、IMFなどに進んでいます。

金融技術の最先端を扱う少数精鋭チーム

世界銀行財務局は、資金調達及び融資実行のための財務管理、加盟国の資産管理支援、グローバルな開発課題に対応する新たな金融手法の開発等多岐にわたる業務を担っています。その中で今私が在籍しているフィンテックチームは金融分野のイノベーションも管轄しています。世界銀行は金融業界でも新しい試みに挑戦することで知られていて、例えばグリーン債(環境系のプロジェクトに資金を集める債券)やブルー債(海洋保全向けの債券)などを発行していますが、私のチームはその中でもデジタル債を担当しています。デジタル債とは、債券であり、世界銀行が発行しています。それ以外では、ブロックチェーン技術を使った金融技術の概念実証やプロトタイププロジェクトなどにも参加しています。

チームは3人と少ないため、外部の人とのコミュニケーションも任せてもらえていることが嬉しいです。上司が自分の人脈を頼ってくれ、新しいアイデアを取り入れてくれる方で、自分がシンガポールで築いた金融系のネットワークを活かせる機会もいただけました。

大学で金融を勉強し、銀行の仕組みや債券、市場の動きなどの基礎的な知識を身につけていたことが、今の仕事で役に立っています。また、債券は株価市場とも一部連動しているため、シンガポールの証券会社でのインターンシップでも株価市場をウォッチするなど実践的な経験を積めたことも良かったと思います。私は行動力がある方ですが、新しいことに敏感な部署では、私の行動力も必要とされていると感じます。

金融活動の先に開発、そしてその恩恵を受ける人々がいる

The World Bank
国際決済銀行(BIS)とのプロジェクトグループ写真
今の部署で対応しているプロジェクトの1つに、世界銀行が加盟国から資金調達する際に使われるノートという特殊な金融商品を、ブロックチェーン技術を使ってデジタル化するという、国際決済銀行(BIS)、スイス中央銀行と世界銀行による概念実証のため共同プロジェクトがあります。端的にいうと、世界銀行は融資のために加盟国からの資金を元本とし、国際資本市場から世銀債を通じて資金を借り入れることで得た資金をもとに、開発プロジェクトを通して開発に貢献している組織です。財務局内外の部署と連携してこの大きなプロジェクトの実行に向けて取り組んでいる中で、この活動が将来的に途上国支援につながっていると思うと、そこに自分がほんの少しでも貢献していると感じられることが今の仕事の醍醐味です。

逆に苦労していることは、フィンテックはどんなに学んでも理解したとは思えない深い分野であることです。また、アジア圏では、言われたことをちゃんとやっていれば誰かから評価してもらえるという期待がありますが、世界銀行では「自分のやっていることを評価してもらう」ための努力が別途必要だと感じます。新卒だから何も言わなくて良いのではなく、マネージャーやディレクターなどからも意見を求められて答えなければならない場面もあり、ぼんやりと会議に参加することはできません。

世銀で主催されたDCフィンテックウィークのブースにて
世銀で主催されたDCフィンテックウィークのブースにて
他方で、時間厳守や同僚を尊重する姿勢などの社会人としてのマナーができていることは日本人の強みです。インターン生でも会議に理由もなく遅れる人はプロフェッショナリズムが足りないという印象を持たれてしまいます。また世界銀行の日本人ネットワークがしっかりしていることも私たちにとって強い味方だと思います。世界銀行には理事室をはじめとする日本人職員が組織している日本人会があり、世界銀行で働く日本人が参加しています。他のチームの仕事を知ることができ、入行数カ月でも気軽に会ってくれる先輩方にお会いして世銀の開発プロジェクトの経験や現場のお話を聞かせていただいたり、今後のキャリアについて相談に乗ってもらえたりする機会にはとても感謝しています。

国際機関でのキャリアアップを目指して

長期的には、国際機関で働くことは、組織としての価値観、使命、文化面から見ても自分には合っていると思うので、他の開発銀行も視野に入れつつ、国際機関でのキャリアを積んでいきたいです。私は違う文化の人と交流するのがとても楽しく、知り合うたびに新しいことを学べることが好きですが、世界銀行は世界で一番多様性を推奨しているのではないかと思えるくらい、各チームには様々な国のメンバーがいて楽しいです。ただ国際機関でのキャリアには修士号は必須なので、短期的には修士号の取得が次の目標です。

やりたいことがあればまずはチャレンジしてみよう

財務局のインターンシップを考えている人には、ぜひこれまでの経験に自信を持って応募してほしいと思います。私も自分が世界銀行に合格できる自信はなかったですが、自分ができることはすべてやりました。まずはチャレンジしてみることが第一歩です。

他方で、計画的に動く必要もあると思います。自分が入りたいチームが必要としているスキルは何かを理解し、自分に必要なものを集めていかなければなりません。財務局インターンも2年前から調べ始めたのですが、フルタイムのポジションであれば数年前から動く必要があると思います。やりたいものがあるなら、それに向かって行動していくことが必要です。

ブログ

    loader image

最新情報

    loader image