フィリピンでは、安全で気候変動に強い道路網の設計と投資は、インフラの信頼性を確保するために不可欠です。道路は災害リスク管理の重要な一部ですが、気候変動の脅威が高まる中で、非常に脆弱になりかねません。
世界銀行は、ミンダナオ島における優先道路の、ネットワークの接続性、気候に対する強靭性、安全性を向上させるために、ミンダナオ輸送連結性改善プロジェクト(MTCIP, P177017) を準備しています。本プロジェクトに向けて、世界銀行の防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の日本―世界銀行防災共同プログラム(GFDRR日本プログラム)および東京防災ハブの支援により、ミンダナオ島における道路ネットワーク全体のマルチハザードリスク評価の調査が実施されました。道路インフラの気候リスクを評価し、適切な対応を検討するため、フィリピン国公共事業道路省(DPWH)を支援しています。
10月8日~10日に、フィリピン・マニラで研修(2日間)とワークショップ(1日間)が開催され、調査結果が共有されました。研修には、DPWH、フィリピン科学技術省(DOST)、フィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)、フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)の代表者が出席しました。ワークショップには研修参加者に加え、国家経済開発
庁 (NEDA)の地方事務局、地方自治体(LGU)、内務地方自治省(DILG)、ミンダナオ開発庁(MinDA)の代表者が参加しました。日本の専門家も招待され、日本の道路災害リスクアセスメントに関する知見を共有しました。
世界銀行グループの上級運輸専門官ジョン・コビナ・リチャードソン氏は本研修の冒頭で、政府機関間の連携により、ミンダナオ島における道路の気候に対する強靭性が強化され、強固な物流網および食糧安全保障の構築に貢献できるとの期待を表明しました。
研修では国土交通省国土技術政策総合研究所の山本真生氏が、道路リスク評価と構造物・非構造物対策に関する知見を共有し、道路ネットワークの脆弱性評価に関する国土交通省の道路リスクアセスメント要領(案)およびリスクのある道路区間を評価するための導入方法について説明しました。
強靭性強化のための対策として、リスクタイプとリスクレベルの評価結果に基づき、速度規制、車線規制(閉鎖または車線数の削減)、重量規制など、機能回復の容易さを考慮した交通規制の種類が区分されています。また、デジタル道路地図等を基盤として各種データを紐付ける道路データプラットフォーム(xROAD)マスタープランなど、日本の道路分野におけるデジタルトランスフォーメーションに関する最新情報も共有されました。xROADは道路データの一般公開を可能にし、運営および維持管理のための民間イノベーションを促進します。プラットフォームには脆弱性評価の結果も含まれることが検討されています。
独立行政法人国際協力機構(JICA)の桑野健氏は、フィリピンにおける斜面崩壊や落石に対する道路の強靭性強化を目的とした「山岳地域における道路防災プロジェクト」について説明しました。
GFDRR は、知見とツールを通じて強靭なインフラを推進しています。防災専門官のフレデリコ・ペドロソ氏は、強靭なインフラ管理を追求するために、道路の脆弱性評価とエンジニアリング設計のグローバルな事例を共有しました。さらに東京防災ハブから、GFDRR日本プログラムの概要と、日本の専門家と連携した道路の強靭性強化に向けた技術支援の優良事例が紹介されました。
全体として、マルチハザードリスク評価にもとづく道路ネットワークの強靭性強化のための有意義な議論が行われました。DPWHの代表技術者であるブリナー・ノレス・ラザーロー氏は、「道路リスク評価の導入により、強靭性強化のために脆弱な道路区間に優先順位を付けることができるようになりました。日本の知見は、道路の強靭性強化に非常に大きな効果をもたらしています。」と述べました。
世界銀行は、GFDRR日本プログラムとともに、今後もフィリピン政府を支援し、ミンダナオ島およびフィリピン全体における道路ネットワークへのアクセスの向上と、マルチハザードリスクに対する強靭性強化に取り組んでいきます。