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特集2023年1月26日

ケニアで日本の専門家が強靭な鉄道サービスに関する知見を共有

強靭な都市の鉄道に関するワークショップ
ケニア・ナイロビ
2023年1月26日~27日

ケニアの大都市、特に人口660万人(2019年時点)のナイロビ首都圏(NMA)において、都市のアクセシビリティは非常に大きな課題となっています。同首都圏の急速な都市化により、都市交通とモビリティを改善し、経済・社会開発を進めることが急務となっています。現在、ナイロビ首都圏で利用できる唯一の正規かつ規制された公共交通サービスが鉄道であるにもかかわらず、モーダルシェアはわずか1%に過ぎません [1。ケニア政府は、現在のモビリティの課題に対処するため、通勤鉄道サービスの改善を優先しており、日本の専門家は、都市における鉄道の運営に関する経験や知識を共有することで、この取り組みを支援しています。

日本―世界銀行防災共同プログラム(通称「日本プログラム」)の支援により、日本の鉄道専門家2名がナイロビに招かれ、気候変動に対する強靭性の向上など、鉄道運営に関する知識を共有しました。この「強靭な都市の鉄道に関するワークショップ」には、ケニア鉄道公社(KRC)、ケニア道路交通省、ケニア国土・住宅都市開発・公共事業省、ナイロビ首都圏交通公社(NaMATA)、複数の州政府(ナイロビ、モンバサ、キスム、エルドレット)、知事など、40名以上が参加しました。「ケニア都市モビリティ改善プロジェクト(KUMIP)」の都市交通スペシャリストなど、世界銀行の専門家らを中心とした対話型のテクニカル・セッションが行われ、通勤鉄道の強靭性を高めた日本の経験とともに、そこでの教訓がナイロビ首都圏の鉄道にいかに適用できるかが話し合われました。

The World Bank
テクニカル・セッションに参加するケニア政府の代表者ら

[1] 国際協力機構(JICA)/ナイロビ州(2014年)

 

今回出席できなかったケニア道路運輸省のモハメド・ダガー運輸担当次官  に代わり、同省の国家プロジェクト調整官のジェームズ・テウリ氏が参加し、ワークショップの冒頭で次のように述べました:

「都市交通の管理に携わる様々な関係者がこのように集まり、効率的な都市交通、特に鉄道の開発を進める上で、わずかな資源を最大限に活用するためのベストプラクティスを学ぼうとする姿は大変喜ばしいものです。本ワークショップの目的は、6つの幅広いトピックに焦点を当てつつ、強靭な鉄道システムを開発・運営するために必要なスキルを参加者が身につけることです。ケニアの多くの都市では、通勤鉄道を含む公共交通機関の整備が不十分で、通勤する数百人もの人々がモビリティに関する極度の困難に直面しています。そういった意味で、今回のワークショップは意義のあるものです」

ワークショップの初日には、日本の鉄道専門家の一人が、日本の都市計画の原則である「公共交通指向型開発(TOD)」に基づくビジネスモデルを紹介しました。TODは、乗継駅に沿って都市開発を進めるアプローチで、ナイロビ首都圏にも適用しうるものです。日本の鉄道専門家である中山典顕氏は、都市鉄道の資金調達について説明し、日本の主要な私鉄会社が採用している統合的な運賃徴収システムを紹介しました。

二日目には、日本の専門家である太田雅文氏が、日本におけるTODの実績から、鉄道の運営や資産管理、強靭な鉄道を構築する方法について、様々なトピックについて紹介しました。ケニア政府とケニア鉄道公社は、新しい鉄道の設計に強靭性を取り入れようとしています。太田氏は、日本が鉄道計画に強靭性をどのように導入してきたかの事例を紹介しました。例えば、新しい鉄道を計画する際、災害情報に基づいて同計画を定期的に更新することで、気候変動による将来の被害を軽減することができます。太田氏の講演とその後の双方向の議論を通じて、ケニア政府の参加者らは、日本の経験をどのようにナイロビ首都圏に適用できるかについて学びました。

世界銀行のシニア都市交通スペシャリストである岸上明子は、次のように述べました:

「日本の鉄道専門家の経験や彼らから学んだことに基づき、ケニア政府は、鉄道のサービスや運営の改善、そして駅周辺の開発を連係させる、統合的なアプローチを取ることができます。駅周辺の開発に民間セクターを参加させるためには、国や地方自治体が強いリーダーシップを発揮し、鉄道会社など様々な関係者と連携する必要があります。さらに、ケニアは、交通セクターの事業継続計画(BCP)に強靭性を取り入れる方法を学ぶことができます」

二日間にわたるこのテクニカル・ワークショップは、通勤鉄道の運行、土地利用、駅の開発における地方・国政府の役割などに関する活発な議論を含め、非常に有意義なものとなりました。参加者は、ワークショップ終了後に行われたアンケートで、すべての講演に対し、高い満足度を示しました。

世界銀行は、日本プログラムとともに、都市モビリティの向上と交通セクターの強靭性強化に向けたケニア政府の取り組みを今後も支援していきます。

The World Bank
多摩川沿いのTOD事業における行政の役割や災害時の被害軽減策を説明する中山氏

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