カンボジアは、気候変動による自然災害の増加に対して非常に脆弱な国です。国土の約85%がメコン川流域とトンレサップ湖の沿岸にあり、特に河川の洪水や嵐、干ばつに対して脆弱です。総延長4万7,000kmを超えるカンボジアの道路網のうち、地方の道路は約75%を占めており、また、約4万3,000kmが未舗装です。地方の道路が浸水すると、地方のコミュニティにとって重要なサービスや機会へのアクセス、農産物などの必要不可欠な経済的物資の輸送が著しく損なわれてしまいます。
世界銀行は、カンボジア王国政府の道路やインフラの分野における気候変動や自然災害に対する強靭性を高めるべく、強力なパートナーとして貢献してきました。世界銀行は、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)が運営する日本―世界銀行防災共同プログラムからの支援のもと、現在進行中の「カンボジア道路連結改善プロジェクト(Cambodia Road Connectivity Improvement Project)」の一環として、地方へのアクセス改善と気候リスクに対する道路の強靭性向上を目的とした技術支援交付金を提供しています。
2022年7月26日~27日には技術支援の一環として、プノンペンで農村開発省(MRD)を対象としたワークショップを開催し、災害リスク管理(DRM)と地方道路の強靭性について日本の優れた知識と専門知識を紹介しました。このワークショップでは、道路網の計画、強靭な地方道路の工学設計、積極的な地方道路の資産モニタリングとメンテナンス、災害に備えた危機管理プログラムなど、災害リスクも考慮にいれたライフサイクルアプローチを用いて地方道路の脆弱性に取り組む主な施策が紹介されました。MRDの中心的な部門から約60名の職員が会場で出席し、また、104名の地方職員がオンラインで参加しました。
日本から6人の専門家が2日間にわたり、日本の経験を基にした気候や災害に対する道路の脆弱性に取り組むときに最も重要な点をいくつか説明しました。
- スマートフォンやiPadは道路資産の状態モニタリングを高コストかつ手作業の多いプロセスから、頻繁かつ高度に自動化された作業へと変革させ、これにより、正確なデータを作成できるようになりました。さらに、地理情報システム(GIS)ツールを採用することで、道路資産の管理者が現在や将来の人口分布データを統合し、最も重要な場所の資産メンテナンスに優先して取り組むことができるようになりました。これらのデータは、効果の高い道路整備を積極的かつ効率的に実施できるよう計画するにあたり、欠かせないものです(東京大学:長山智則教授、長井宏平准教)。
- 京都モデルによる資産管理は、日本とベトナムで道路のライフサイクルコストを削減するのに有効であることがすでに証明されています。このモデルはしっかりした資産状況のデータをいかに劣化予測に変換するかを示しており、資産管理者が修繕計画にそって目的に応じた予算の計算ができるようになります。この戦略的な管理サイクルは、使用可能な範囲での財政資源で道路の性能と強靭性を最大限に向上させるのを支援しています(京都大学 小林潔司特任教授)。