エルサルバドルは世界有数の地震多発地域に位置しており、様々な自然災害にさらされている国です。地震による年平均損失は約1億7,600万ドルにのぼり、これはGDPの0.7%に相当します。ほかの主な災害には、洪水、地すべり、熱帯性低気圧、津波、火山噴火などがあり、特にエルニーニョの時期には干ばつも発生します。
このような背景から、世界銀行はエルサルバドル政府に対する支援を進めており、同国初となる公立学校のインフラを対象とした地震リスク軽減計画の策定を援助しています。本計画は、日本―世界銀行防災共同プログラム(日本プログラム)による資金提供のもと、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)が運営する、災害に強い学校づくりのためのグローバル・プログラム(GPSS)が実施しているものです。
2022年5月19日には、本計画に対する支援拡充のために、日本プログラムが主催するオンライン知識交流会が開催され、エルサルバドル教育省とGPSSチームに対し、日本のエンジニアリング企業が学校インフラの強靭化に関する提言の共有を行いました。この提言は、同社がエルサルバドル政府機関と協働で実施した国際協力機構(JICA)プロジェクトの知見が基となっており、公共インフラのリスク対策やリスク軽減施策の統合と促進を進めた経験が生かされています。またこの交流会では、教育、公共事業、交通、住宅供給、都市開発、気候変動対応の各分野の政府関係者らが意見を交換し、気候変動および災害リスクの増加に対する学校の適応力を向上させるための連携を強化していくという合意に至りました。
『災害に強い学校づくり:学校施設耐震化の大規模な取り組み』に取りまとめられている日本の経験と教訓、さらにはGPSSチームの知見を活用し、エルサルバドル政府は以下の取り組みを実施しました。
(i) 代表的な建築方式による学校インフラとその構造特性についての最新の基礎情報をもとに、5,000の公立学校施設に対して基準値を設定
(ii) 教育省チームが学校監査のデータを収集・保存できるアプリの作成
(iii) 学校インフラの建築環境や管理に関する診断報告書の提出
(iv) 地震により想定される被害予測や経済的損失など、公立学校施設に対する地震リスク評価の実施
(v) 公立学校インフラを対象とした地震リスク軽減プログラムへの提案書の作成