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特集 2021年5月14日

人事が語る~グローバルキャリア構築のための処方箋~ ブログシリーズ 第10回 「リレー・ウィークエンド」―50時間にわたる完全バーチャル・IFC採用イベント―の舞台裏(貝塚由美子 国際金融公社(IFC)上級人事担当官)

このブログが出る時点で、新型コロナウイルスの影響による在宅勤務が14カ月となります。世界銀行グループの年度は、7月から翌年6月までなので、2021年度は全てバーチャルな環境で勤務したことになります。近年、多くの専門家がデジタル・トランスフォメーションに伴う「未来の働き方」を論じていましたが、この一年の在宅勤務という働き方により、それがさらに加速したことを実感します。最近は、世界銀行グループの人事部門でも、「未来の働き方」をテーマに、人事方針や制度を議論することが増えました。今後このブログシリーズでも、世界銀行グループでの「未来の働き方」を取り上げていきたいと思います。

そこで今回は、「未来の働き方」に関連する話題として、IFCが来月6月4日~6日に実施する「リレー・ウィークエンド」というIFCのイベントについてお話します。
 

「リレー・ウィークエンド」企画の舞台裏

日本人採用ミッションの一環として行う「リレー・ウイークエンド」は、50時間にわたる完全バーチャル・イベントです。 “Recruiting Talent and Creating Markets for a Post-COVID World”というテーマのもと、約20のセミナーやワークショップを各地域からリレー式で繋ぎます。まるで長時間連続耐久レースのようですが、新型コロナウイルスの影響下で生まれた、IFCでは世界初のこの企画を日本国籍を持つ方を対象に行います。

さて、本企画はどのように生まれたのでしょうか。その背景には、大きく分けて以下の3点が挙げられます。
 

日本人はどこに?

第一に、IFCでの勤務に関心のある日本人が、現在、世界のどこに居住しているのかという点です。IFCではここ数年、ワシントン本部やアジアなどの地域からマネジメントや人事部門のメンバーが訪日し、東京事務所と共同で、日本で日本人の採用ミッションを実施してきました。昨年は、新型コロナウイルスによる影響で、急遽ミッション自体をバーチャルで行いましたが、17人の日本人職員が採用されました。そのうち半数は日本国内在住、残りの半数はミッション時に海外在住という結果でした。つまり、IFCに興味のある日本人は、日本国内のみならず、海外赴任、海外の企業に勤務、留学などの理由で、すでに海外在住の方も多くいることがわかりました。日本人の候補者の居住先は、すでに世界中にまたがっていたわけです。
 

在宅勤務がもたらした実践トレーニング

第二に、在宅勤務から得られた経験です。この一年間、世界銀行グループの職員は、在宅勤務というバーチャルな環境で、インターネットのアクセスさえあれば、世界中どこからでも働けるようになりました。さらに、日々バーチャルで会議に参加し続けた結果、そうした環境でのプレゼンテーションや会議進行に慣れてきました。会議の主催者も参加者も、会議ツールの有効利用は勿論、一部の人しか使用していなかったコラボレーション機能の活用に至るまで、実践でトレーニングを積み、ネットワーキングも可能となりました。
 

距離ではなく、時差が課題

第三は時差です。インターネットのアクセスがあれば世界中どこからでも働けるため、距離の問題はなくなっても、課題が残るのは時差です。世界銀行グループの場合、規定に準じ、上司の許可さえあれば、通常の勤務地以外の拠点からでも勤務可能となりました。しかし、どこからでも働けるからといって、13時間の時差がある東京から、ワシントンDC時間にあわせて働くということは、短期的には可能でも長期的には容易ではありません。あるいは、職員本人が、チームの同僚や上司と全く異なる地域にいるといったケースでは、時差の関係で、共通の時間帯に会議を行うことが難しいという課題があります。時差は忘れてはならない重要なポイントです。
 

地球を周るリレー式発想

今年度の日本採用ミッションの企画は、現在の状況を踏まえてできることがあるのではないか、という視点で検討を始めました。上記の3点から、バーチャル環境を制約ではなく利点としてとらえることはできないか。議論をした結果、柔軟な発想や画期的な案が出てきました。

その一つが、「リレー・ウィークエンド」です。過去数年、日本人採用ミッションに関して、IFC東京事務所とワシントン本部のIFC人事部門が共同で準備と実施をしています。いつも東京事務所の職員が、日本時間の就業時間内に未完了の案件を、これから始業するワシントン本部の職員にバトンを渡し、さらに米国東海岸の夕方に未完了の案件を、翌朝始業する東京事務所の職員にバトンを渡すという、リレーを繰り返してきました。これは、各自が24時継続して働くことはできなくとも、24時間中いつも、チームの誰かが必ず働いているという、時差を逆手にとった形式です。このリレー方式の実体験がこの企画に繋がりました。
 

「リレー・ウィークエンド」の特色

今回の企画では、世界を周る50時間連続のリレー方式以外にも、バーチャルならではの利点を生かして、IFCの世界各地域に勤務している日本人職員との交流を取り入れた、参加型のカンファレンス形式となっています。

例年、時間や予算の観点から、日本人の採用ミッションに関わる日本人職員は数名で、多数の参加が難しいというのが現状でした。しかし、今回はバーチャルで行うため、途上国の現場に携わるより多くの日本人職員のライブ参加が可能となりました。若手からベテランまで、世界各地から、職種も多様な日本人職員が参加します。「リレー・ウィークエンド」の参加者にとって、普段は接する機会の少ない職員の生の声を聞ける機会となります。

また、今回の「リレー・ウィークエンド」は専用ポータルを使用します。参加者が一度登録すると、興味のあるセミナーやワークショップに、自由に参加することが可能になります。20近いセミナーやワークショップに個別に登録する必要がなく、参加者の興味やニーズによって、プログラムをカスタマイズできます。セミナー中、参加者アンケートのリアルタイム集計、パネルへの質疑応答など、参加者と発表者の双方の交流も可能です。各種セミナー以外にも、採用関連のワークショップもあります。特に今回は、昨今、世界銀行グループの採用で新たに取り入れているビデオ提出方式のインタビューのワークショップなど、新規のプログラムも充実しています。
 

まとめ

世界銀行グループには、アフリカ地域発の「スケーリング・ソーラー」というインフラのプログラムがあります。アフリカ地域での成功により、ウズベキスタンなど別の地域にも、プログラムを拡大しています。新型コロナウイルスの影響による在宅勤務に端を発する「リレー・ウイークエンド」という採用ミッションのモデルは、IFC初の試みとして、「スケーリング・ソーラー」のように、今回の「リレー・ウイークエンド」が、今後のIFCの核を担うような採用ミッションのモデルとして拡大することを想像しながら、今日もワシントンDCでの在宅勤務を終え、東京事務所にバトンを渡す準備をしています。

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参考:2021年IFCリクルートミッション・採用スケジュール

日程募集・選考プロセス
5月初旬~採用予定ポジションのTOR(募集要件)を順次、掲載 世界銀行グループの採用データベース、コンパスもしくはビズリーチからご応募いただけます。
6月4日~6日リレー・ウィークエンド *詳細は、下記のプログラムをご参照ください。
6月下旬~書類選考およびオンラインによる筆記試験(ポジションによる)
7月~オンライン面接(Webex、MS Teams、Zoomなどを使用予定) 書類選考合格者へは採用ユニットより面接のご案内をいたします。世界銀行グループ面接ガイド(英語、PDF) 世界銀行グループの採用の面接に臨む前の準備や、面接の手法、面接での質疑応答の際のヒントなどをご紹介しています。入行、入社時期はユニットとの相談により決定。

 

筆者略歴

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貝塚由美子 国際金融公社(IFC)上級人事担当官
Yumiko Kaizuka, Senior HR Officer, Talent and Incentives, Human Resources, IFC

2012年より国際金融公社(IFC)ワシントン本部にて現職。IFCのオペレーション、管理部門の部門人事ビジネスパートナー担当を経て、現在、人材戦略・育成の人事プログラム部門にて、マネージメントローテンション及びキャリア開発を担当。2018年よりIFCの日本人採用ミッション人事統括。大学卒業後メリルリンチ証券会社にてトレーディング業務従事。MBA留学後は同社にて採用、研修、人材育成を担当。その後ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、HOYA株式会社にて勤務。東京、米国、シンガポールを拠点にグローバル人事及びグローバルプロジェクト担当。ペンシルベニア大学ウォートンスクール経営学修士。2016年ジョージタウン大学で組織開発コンサルティングのプロフェッショナル資格取得。

 



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