2019年6月にG20大阪サミットが開催された後、世界銀行と日本政府は途上国でのインフラ開発の成果向上を目指し、「質の高いインフラ投資パートナーシップ」を締結しました。
QIIの原則とは、インフラ開発における経済効率や環境の持続可能性、災害に対する強靭性、社会的包摂性、強固なガバナンスを提唱するものです。現在、新型コロナウイルス感染症による危機から、都市が持続可能性と強靭性を兼ね備えた復興に取り組んでいる中、QIIの原則は特に重要です。
2019年6月にG20大阪サミットが開催された後、世界銀行と日本政府は途上国でのインフラ開発の成果向上を目指し、「質の高いインフラ投資パートナーシップ」を締結しました。
QIIの原則とは、インフラ開発における経済効率や環境の持続可能性、災害に対する強靭性、社会的包摂性、強固なガバナンスを提唱するものです。現在、新型コロナウイルス感染症による危機から、都市が持続可能性と強靭性を兼ね備えた復興に取り組んでいる中、QIIの原則は特に重要です。
日本は1950年代から1960年代にかけ、急速な成長と急速な都市化を経験しました。この経験で得られた教訓を踏まえ、耐久性に優れた質の高いインフラへの転換を図っています。現在急速に都市化が進んでいる国々にとって、日本の経験は大いに参考になります。こうした中、QIIの原則が都市でどのように効果的に実施されるかを説明するため、東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、QIIパートナーシップとの協力で福岡市と富山市のケーススタディ(英語)をまとめた冊子を出版しました。
2件のケーススタディから浮き彫りとなった重要な教訓は、地方の先駆的アプローチが国を代表するモデルとなりうる、ということです。
福岡市は日本の大都市の一つで、アジアの他国の大都市に近いことから先端産業やスタートアップ企業が注目する国際的な拠点です。しかし、水資源に乏しいという弱みがあり、1978年に深刻な渇水を経験。これを機に節水都市を目指し、配水管網の整備と改良、水管理センターの設立、漏水削減プログラムに取り組みました。
特に注目すべきは、調達規定の改定です。新設される配水管には、ポリエチレン製のスリーブで覆うことが要件とされました。これにより、導入の初期費用は1〜2%増える一方で、配水管の耐用年数が40年間延びます。このように漏水防止対策に投資した結果、福岡市の漏水率は2%と世界的に最低レベルである上、長期的な運用コストも抑えることができ、投資に対して推定15%の内部収益率を生んでいます。
インフラについては、運用費や管理費が初期投資額を超えることが多いことから、耐用年数の最適化が長期的な経済効率を達成する上で極めて重要です。事業レベルでこれを実現する方法として、入札基準にライフサイクルコストの評価を採り入れることが挙げられます。
富山市は、日本の県庁所在地の中で最も人口密度が低い都市の一つです。住民の大半の移動手段は自家用車で、確固たる公共交通システムがありませんでした。高齢者人口が増える中、住民の移動がますます課題になることが予想され、さらに富山市の中心部は活気に乏しく、若者を呼び込むことが難しい状況でした。
富山市は2003年、公共交通の活性化を軸としたコンパクトシティモデルへの転換を図るため、ロードマップを策定しました。この計画の重要な施策が、日本初となるライトレールトランジット(LRT)システム(路面電車)の整備でした。富山市は、第一段階で市の中央駅と港を結んでいた利用度の低い既存の線路の改修をわずか3年で終えました。既存線路を再活用したことで建設費を削減でき、改修後の利用者は増え、経済的な見通しも良くなりました。
富山市は2012年、経済協力開発機構(OECD)により、メルボルン、バンクーバー、パリ、ポートランドとともにコンパクトシティ政策の先進都市として選ばれました。さらに2014年には、ロックフェラー財団から「100のレジリエント・シティ」に日本の都市として初めて選出されました。これを機に、富山モデルの主な戦略をまとめるため、富山市とTDLCは「富山市の発展の歩み~コンパクトで暮らしやすいまちへの再構築~ 」を共同出版し、都市の物理的構造と住みやすさを形成する交通開発と都市開発を統合させた都市開発の好事例として発表しました。