Skip to Main Navigation
特集 2020年11月17日

新型コロナウイルス感染症による都市での新たな課題:日本の都市における実例

Image

写真提供:東急株式会社


2020年11月17日

現在、世界の人口の約半数が都市に住んでおり、2050年にはその数値が80%に達すると予測されています。 急速な都市化に伴って都市サービスへの需要が増えているため、それに応える自治体の能力が問われています。近年、革新的なデジタルソリューションの活用により、都市部をより生活しやすく持続可能な環境に変えるために推進されているのが、スマートシティという概念です。

世界銀行は長年にわたり、都市・防災・強靭性・土地グローバルプラクティス(GPURL)東京開発ラーニングセンター(TDLC)を通じて、世界最大規模のスマートシティ関連イベントであるスマートシティエキスポ世界会議(SCEWC)と提携し、スマートシティ・ラボの一環であるシティ・ソリューションズ・ワークショップにおいて、日本や世界における最先端の知見や経験を提供してきました。今年、TDLCは、「スマートシティライブ  2020」のサイドイベントを開催し、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が日本の都市に与えている影響と、各都市の独自の対策を中心とする内容を取り上げました。

渋谷:東急がコロナ禍で街の再開発を見直し

渋谷は東京を代表する街の一つで、若者向けの商業・繁華街とIT産業の中心地として知られています。多くの人々が行き交う「スクランブル交差点」は、躍動感あふれる東京の象徴として国際的に有名です。現在、この地域では100年に一度の再開発が進められており、その主要事業者の一つが、民間の鉄道事業者で不動産開発業者でもある東急株式会社です。

東浦亮典東急株式会社 執行役員 渋谷開発事業部長は、日本の都市開発は沿線や渋谷のようなハブ駅周辺を開発する私鉄事業者によって進められることが多いと語りました。この特色を踏まえ、日本の都市は、洗練された公共交通指向型開発のモデルとして注目されています。

新型コロナウイルス感染症の流行拡大は、渋谷の再開発計画に大きな影響を与えました。日本の都市の主要な移動手段である鉄道路線の乗客数が減少し、渋谷のような繁華街や商業地の人出も減りました。しかし、東浦部長はこれを新たなチャンスとして捉えており、コロナ禍において都市開発を進める中で、開発へのアプローチの見直しも迫られていると語ります。


"新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、都市や街のレジリエンスについて再考する必要が出てきました。例えば、職住近接の街づくりの必要性です。"
東浦 亮典
東急株式会社 執行役員 渋谷開発事業部長

Image
新型コロナウイルス感染症が渋谷界隈に与える影響について話し合う、東急株式会社の東浦亮典(左)とTDLCのビクター・ムラス。写真:世界銀行グループ

神戸、横浜、福岡:新型コロナウイルス感染症の流行下で市民とともに目標達成を目指すスマートシティ

神戸市、横浜市、福岡市からも代表者が登壇し、新型コロナウイルス流行下におけるスマートシティとしての取り組みやアプローチを共有しました。神戸市では、スマートフォンのデータ、センサー、監視カメラなど既存のネットワークを利用した情報提供を行っており、市民もそれらの情報や注意喚起に従って人混みを避けていることが確認されています。 

松崎太亮 神戸市 企画調整局つなぐラボ スマートシティ担当課長は、同市のデジタル化が進む中、市民のデータリテラシー向上の一環として、データの可視化に取り組んでいると説明。橋本徹 横浜市国際局担当理事も、デジタル技術は市民とコミュニケーションを図り、他都市とソリューションを共有するための強力なツールであると述べました。 

各都市の登壇者は、データの可視化、AI、交通、自由に活用できるデータなど、幅広いテーマを取り上げましたが、共通していたのは、スマートシティの目標を実現するには市民を巻き込む必要があるという点でした。的野浩一 福岡市スマートシティ担当課長は、市民に新しいテクノロジーのメリットを伝えるためには、実演や実体験が有効であるとし、「(テクノロジーを)活用する人がいなければ、イノベーションは起こらない」と述べました。 

しかし、都市の取り組みだけでは、スマートシティのソリューションを全国に広め、インパクトを与えることができません。本イベントの最後の登壇者として日本におけるマクロの視点を提供したの南雲岳彦 一般社団法人スマートシティ・インスティテュート 理事は、スマートシティ戦略の基盤となる条件を整えるには規制と規制緩和の双方、そしてそのバランスが重要であると強調しました。古くなった規制の改革には、多くの場合、規制緩和が欠かせません。例えば、日本で高度経済成長期に策定された規制はデジタル時代には不向きであり、改革が必要とされています。


"スマートシティの開発においては、様々な関係者間との技術的な調整が必要です。同時に、既存の枠組みの規制緩和も考える必要があります。"
南雲 岳彦
一般社団法人スマートシティ・インスティテュート理事


Api
Api