「新型コロナウイルス感染症の世界的流行のために、最貧国・最脆弱国では約10年分の生活水準向上の成果が失われた。」と、世界銀行のサミュエル・ミュンゼル・マインボIDA資金動員・IBRDコーポレート・ファイナンス局長は述べた。「IDA PSWは、民間セクターが事業を継続し雇用と生計を維持するためのソリューション実現の余地を生むという意味で、重要な役割を担っている。」
新興市場の民間セクター開発に特化した世界最大の国際開発機関であるIFCは、世界銀行グループの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の一環として、 経済低迷により打撃を受けた顧客企業を支援するため80億ドルを提供した。ただし、多くの顧客の事業環境には大きなリスクがつきまとう。
IDA PSWが真価を発揮するのは、この点においてである。所得の低い脆弱国におけるIFCの投資や多数国間投資保証機関(MIGA)の保証に伴うリスク解消を図る資金の提供において有力なツールとなるのだ。実際にIDA PSWは、こうした国々においてIFCが危機対応を行う際に、以下の通り、重要な役割を果たしている。
ウガンダでは、IFCとIDA PSWの支援の下、国内で2番目に大きな保健医療機関が現在も業務を続けている。400万ドルのIFC融資により、ウガンダ最大の民間病院と17の診療所を運営する国際医療グループは、キャッシュフローの深刻な制約に対応し、今回の感染症流行の間も事業を継続するために必要な柔軟性を提供することが可能になる。また、この支援により、所得の低い患者に対する非営利のサービスを含めた各種のサービスを国中の患者が確実に利用し続けることができる。
IDA PSWの支援はまた、、サブサハラ・アフリカ地域全体で診断サービスの提供継続に貢献している。例えば、IDA PSWの支援を受けた、臨床検査施設のネットワークに対するIFC融資により、ほかの投資家のクラウドインが進んでいるほか、IDA PSW対象の多くの脆弱・紛争国において、セルバ・ランセット・アフリカによる臨床検査へのアクセス拡大、検査の質向上、検査コスト削減等の取組みが可能になっている。
バングラデシュ、コートジボワール、ナイジェリア、ルワンダでは、IDA PSWが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により特に深刻な被害を受けた企業のいくつかに支援を提供している。 IDA PSW は、IFCの新型コロナウイルス感染症運転資金ソリューション・プログラムを通じ、流行の間も事業を継続するための追加の短期的流動性を切実に必要とする小・中規模事業に運転資金を融資している。
世界的な金融逼迫の中、特に失業を防ぎ、必要性の高い製品やサービスの供給を続けるという意味で、民間セクターの強靱性と成長を支える世界銀行グループは引き続き大きな役割を担っている。IDA PSWは、世界銀行グループによる取組みのインパクトを強めるものであり、最貧国・最脆弱国に多大な開発インパクトをもたらす民間セクター投資のリスクとリターンの間のバランスを取り戻すために役立っている。