2020年7月9日
ワシントンDC
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に猛威を振るう中、さまざまな国がモンスーンや台風の季節に入り、非常に危険な熱帯暴風雨に見舞われています。新型コロナウィルス感染症の世界的流行のさなかでも、自然災害は容赦なく発生します。それどころか今回の流行は危機管理に新たな課題を突きつけ、災害への備え及び緊急対応制度に対するストレステストとなっています。防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)では、世界銀行東京防災ハブの協力も得て、世界の第一線で災害リスク管理に活躍されている4名の専門家を招きオンラインセミナーを開催し、新型コロナウィルス感染症と熱帯暴風雨による複合災害リスクへの対応から得た貴重な経験と教訓について共有いただきました。
日本からは、東京大学生産技術研究所の沼田宗純・准教授、及び災害対策トレーニングセンター(DMTC)センター長にご登壇いただきました。沼田准教授は熊本で、河川が氾濫し80名を超す死傷者を出した令和2年7月豪雨の際に、複数の災害対策センターにて活動をされた経験から、地方自治体が複合災害リスクへの対策を講じる際に直面する5つの主な課題を挙げ、対策強化のための重要な提言が行われました。
(i)標準作業手順書(Standard Operating Procedure)を定期的に見直し、変化する需要に対応する実施計画を継続的に更新。
(ii)感染や発熱の症状のある避難者の人数など、避難所の環境に関する情報管理を行うことで、現地の自治体による意思決定向上に貢献。
(iii)人的資源の配置を最適化し、避難所運営を効率化。
(iv)避難所における物資の在庫情報を常に最新の状態にし、医療器具や食料、洗面用品などの効率的な配布計画に活用
(v)避難者と避難所の運営者が話し合いのもと、衛生規則と衛生習慣を設定、実施し、感染拡大を抑制。
セミナー参加者から、災害リスク管理を行うためのさまざまなステークホルダーとの協働について質問が出され、沼田准教授は自治体とコンビニエンスストアが事前調整の上で日用品を避難所に配布する国内の事例を紹介し、公共部門と民間部門の連携の重要性を強調しました。