2019年12月11〜12日
ベトナム、ハノイ
河川氾濫、都市水害、地滑り、サイクロンなど様々な自然災害が起こりやすいベトナムでは、こうした危険要素がしばしば既存のインフラを破壊、病院や学校、職場といった重要な施設へのアクセスを寸断します。また医療や教育を妨害するため、雇用の機会も制限されます。こうした課題に対処するべく世界銀行が3億8,500万ドルを融資し、ベトナムの参加51省の農村地域における、自治体の管理下にある道路資産の管理プログラム(LRAMP)が2016年に発足しました。地方集落のための道路や橋梁のアクセス向上を図り、ベトナム全土に2,000本以上の橋梁を架ける目的としています。自然災害にとりわけ強い橋にするための試験的な取り組みとして、強靭性と耐久性で知られる資材である超高性能コンクリート(UHPC)が3本の橋に使用されました。世界銀行防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)はこのプログラムを通じ、設計、建設、そしてこうした試験的なUHPC製橋梁のアセスメントを財政面、技術面において支援しています。
去る12月11〜12日、日本での知見交換研修と視察に寄与した大成建設の武者浩透氏と北海道大学の松本浩嗣准教授がハノイに招かれ、完成した試験的な橋梁のうち1本のアセスメントを実施、またLRAMP活動の一環として知見交換ワークショップに参加しました。こうした日本の専門家の派遣は、(世界銀行)東京防災(DRM)ハブの支援により実現したものです。
タイグエン省ランコ橋のアセスメント
UHPCを用いた3本の試験的な橋のうち車両用橋梁のランコ橋は、ヴァンラ川によって二分されるラムヴィ村の両岸を結んでいた、竹製の歩行者用仮設橋に代わって建設されました。以前の仮設橋は、例年雨期には度重なる修理や架け替えが必要でしたが、新たなUHPC製橋梁で物資の輸送が容易になりました。洪水の際に橋の修理を担う村民らにとって危険性が低くなったことで、川の両岸での経済活動が活発化。この橋が契機となり、タイグエン省政府はさらに村々をつなぐ橋をもう1本、架けることになりました。
「住民たちは新たな橋にとても喜んでいます。村の両側への安定した往来が可能となったことで、子供たちはいつでも安全に通学できるようになり、住民は年間を通じて病院に行くことができます」——ランヴィ村モン・ディン・チュオン村長
アセスメントを通して、武者・松本両氏は特にUHPC製橋梁のモニタリング方法(橋梁の設計、および、橋梁の性能に影響する現地の気候関連条件に基づいたリスク軽減措置など)について情報や勧告を共有しました。
知見交換ワークショップ
このワークショップではベトナム道路総局(DRVN)、大学および日本とベトナムの民間部門の関係者といった専門家が、両国におけるUHPCの活用方法や設計について情報交換し、工法について技術的な話し合いを行いました。専門家はまた、UHPC製橋梁の建設におけるLRAMPの取り組みを拡大する可能性や、建設品質を確実に維持する方法、そして今後DRVNによって求められる支援領域についても意見を交換しました。
未来に向けて
ベトナムは今後、自然災害によってもたらされる過酷な状況や衝撃に対し強靭で、環境的にも経済的にもやさしいインフラ用資材のための実行可能な選択肢として、UHPCを活用します。GFDRRと日本プログラムは今後も引き続き尽力し、強靭な橋梁建設のための取り組みを支援、技術的専門知識を提供していきます。