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特集 2019年3月19日

インドで開催された災害に強靭なインフラについての第2回国際ワークショップで日本、インド、米国、イギリスの専門家が効率的な建築規制制度の重要性を強調

2019年3月19日
インド、ニューデリー

インド政府は3月19日に国連国際防災戦略事務局(UNISDR)(UNISDRより名称変更)と協同で第2回 災害に強靭なインフラに関する国際ワークショップ(IWDRI)をニューデリーで開催しました。ワークショップにおいて世界銀行は、建築規制を活用した防災のセッションを後援しました。本セッションにおいて、インド政府は、事前の災害リスク管理と強靭なインフラへの投資についての同国の継続的な指導力を明示しました。これは、世界が災害への事前の備えやリスク管理対策よりも、災害後の緊急支援や復興に資金を費やす傾向にあることに鑑みるに重要な姿勢の表れです。2005年には少なくとも33億ドルがカシミール地震とインド洋津波後の復興支援に投入されましたが、この金額は過去20年間に世界中の国で災害リスク管理に費やされた金額である135億ドルの四分の一に相当します。[1] モディ首相率いるインド政権の強力な支持により、この試みは近い将来、世界中で多くの良い実践例を生むことが期待されます。

建築規制を活用した防災のセッションには世界中から専門家が集結し、先進国でこれまで建築環境や土地利用に関する規制が災害リスク軽減に効果を発揮した事例が共有されました。また先進国の知見を踏まえ、現在進行中の開発途上国における取組事例に関する議論が行われました。例えば、日本では長い歴史の中で起きた幾つもの甚大な地震への対策として、効果的な建築規制、土地利用計画及び管理体制をつくるための取組がなされてきました。世界銀行の刊行物「建築規制を活用した防災:災害の経験を踏まえた安全な建築環境づくりー日本の経験[2]にもまとめられているように、建築規制においては単純な技術的問題のみならず、規制の遵守や建物のより良い維持管理を可能にする政策と制度の開発を必要とします。セッションの登壇者は、日本をはじめ他国の経験を踏まえ、自らの知見や経験を低・中所得国で役立てるため、建築規制は、単に災害リスクを軽減するツールではなく、都市の経済競争力を高め、投資を呼び込むための手段としての側面についても議論しました。

世界銀行でシニア・アドバイザーを務める英国のラッセル・ミュアー氏は、建築規制遵守にかかるコストが現地の社会・経済状況に照らし合わせて現実的であることの重要性を指摘しました。また建物をデザインする際に、対象地域のもつハザードに対応可能かつ、文化的側面を踏まえたデザインとなるよう配慮すべきであると述べました。インド工科大学ガンディーナガル校のディレクター、スーディア・ジェイン博士と米国の国際基準評議会のエグゼクティブ・バイスプレジデントのマーク・ジョンソン氏も再度その点を強調し、基準をシンプルかつ対象国・地域への適合性を持たせる必要性を訴えました。 日本の国土交通省、住宅局国際室、建築技術政策分析官である釜谷智弘氏は、政府による設計会社や建設業者、建物所有者への積極的な支援が建築規制遵守を可能にする環境づくりに有効であったという事例を共有しました。本セッションからは、建築規制を整備するにととまらず、建築規制を実施するための環境づくりへの投資が必要であるとの認識が共有されました。世界中から様々な経験を持つ専門家が集まることで、セッションからは建築規制を活用した防災アジェンダを進める中で考慮していかなくてはならない多様な状況や個々の状況に応じた取組についても理解が深まりました。例えば建築規制が整備されていない国もあれば、建築規制遵守を可能にするために有効な仕組みづくりを検討している国もあります。このように各国の事情に合った解決策が、リスクを考慮した開発を進める上で非常に重要です。

[1] GFDRR, 災害リスク軽減ファイナンス: 国際協力の20年

[2] https://pubdocs.worldbank.org/en/162361520295760910/jp-publication-drmhubtokyo-convertingdisaster-experience-into-a-safer-built-environment.pdf

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写真:日本における建築規制の取組について話す釜谷氏

 

セッションには上記専門家以外にも、英国、全国インフラ委員会、レジリエンス長マット・クロスマン氏(セッション議長); オーストラリア、クイーンズランド復興局、オペレーションマネージャー、ジミー・スコット氏; カナダ国立研究機関ディレクターのフィリップ・リズカラ氏からも各国の経験を踏まえた知見が共有されました。

建築規制を活用した防災のセッションはインドやその地域においてこの課題を推し進めることの重要性を強調し、その気運を後押しするものとなりました。セッションを終え、効率的な建築規制は常に公開で討論され、災害リスク管理と気候変動への適応政策に組み込まれるべきだという同意が得られました。これを実践的に進めるために「建築規制を活用した防災」(BRR) プログラムにより、 IWDRIプロセスの一部として、第3回IWDRIの会議に先立ち、当事者の本課題への参加と推進力を維持するための専門委員会立ち上げが提案されました。

BRRプログラムは、日本ー世界銀行防災共同プログラムの支援により、世界中の国が自らの建築規制体制をよりよく理解し、それに基づき立法・行政プロセスを強化するための実践的支援を行っています。



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