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特集 2019年1月24日

ケニアにおける「建築規制を活用した防災」ワークショップ

2019年1月24日
ケニア、ナイロビ

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写真:ケニア、ナイロビで行われた「建築規制を活用した防災」ワークショップ参加者

ケニアでは、洪水などの自然災害や、繰り返し起こる火事・建物の崩壊などの小規模事故を含む慢性的なリスク被害に脆弱なのは主に貧困層です。ケニアの都市の約7割は規制を遵守していないインフォーマルな集落で占められていますが、こうした集落は低所得者が簡素な家屋を建てて住んでいることが多く、災害リスクに対しても脆弱な場所にあることが多いことから、気候変動や災害リスクの影響を受けやすい状況です。気候変動に起因する自然災害が「新たな常態」になりつつあることからも、この状況はさらに悪化していくことが見込まれます。 

この問題に対処するため、ケニア政府は建築環境の強靭性と安全性を高めるために適切な法律、政策、戦略の整備に努めています。政府の取り組みは主として、それぞれの地域にふさわしい規制を整備することです。建築規制とは設計や建設における安全な実践例を、建物について最低限の安全・強靭性の遵守すべき指針を基準や法律に置き換えたものです。 

防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)と世界銀行はケニア政府の災害リスク管理体制強化を支援しています。支援には、自然災害の発生後に国が緊急事態を宣言した場合に直ちに引き出し可能な災害リスク繰延引出オプション(Cat-DDO)付きの災害リスク管理開発政策ローン2億ドルが含まれます。 このプロジェクトの一部はケニアの建築規制を強化して建築環境の潜在的リスク軽減に重点を置いています。 

インフラ・交通・住宅・都市開発・公共事業省のモーゼス・ニャキオンゴラ国家建築調査長官はスピーチで、「世界銀行とGFDRRの援助により、ケニア政府は建物が災害発生時にも強く、安全で、住み続けられるようにするための努力を推進しています。建物崩壊によってケニアでこれ以上の人の命が奪われてはなりません。」と述べました。

ケニア政府は2019年1月24日、建築規制強化と土地利用改革に焦点を当てたワークショップをナイロビで開催しました。ワークショップは、インフラ・交通・住宅・都市開発・公共事業省が主導し、世界銀行が進行役を務めました。ワークショップには50以上の政府代表者が参加し活発に議論を交わしました。 

ワークショップ開会のあいさつで石川啓貴ケニア日本大使館一等書記官は、「自然災害は多くの命、資産、都市―私たちが数十年かけて努力して築き上げてきた都市―に影響を与えます。 強靭な建物と都市は生活と経済にとって重要な基盤です。」と語りました。

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写真左:開会のあいさつをする石川啓貴ケニア日本大使館一等書記官

写真右:議題の重要性と政府のこれまでの歩みを概説するモーゼス・ニャキオンゴラ氏(国家建築物調査長官)

ワークショップはケニア建築規制能力評価(BRCA) の成果を発表・議論し、建築規制改革のために優先すべき事項を確認する機会を提供しました。 BRCAは世界銀行及びGFDRRが実施する建築規制を活用した防災によって整備された方法論を用い、ケニアの公共、民間、学識者など100名以上による貢献を踏まえ、とりまとめられました。 

同評価は、建築物、土地活用の規制を管理するため採用されている法律、政策、規制や現地での施行の仕組みについての詳細な調査結果を、建築規制改革を開始するための分析の基礎資料として提供され、GFDRRが運営する日本―世界銀行防災共同プログラムの支援により実施されました。

ワークショップの評価と結果をもとに、今後3年間、世界銀行とGFDRRはケニア政府によるこの重要な取組に向け重点的な技術支援を提供します。  

ワークショップのまとめ

1. 都市化が急速にリスクを蓄積させている

ケニアは都市化の比較的初期の段階にあり、現在都市部に住むケニア人は人口の約27パーセントですが、2050年までに人口の約半分が都市に居住するようになると予測されています。この都市化によりすべてのケニア人がより良い経済的機会と生活環境に恵まれる可能性を秘めています。

しかし、人口の分布の移り変わりと集中には複数の問題も伴います。
世界銀行のフェリペ・ハラミージョケニア担当局長は、「都市や町における資産と人口の増加は災害の影響を受けやすく、脆弱性が増すという結果を生みます。急速で無計画な都市化はリスクの源です」と述べました。

ケニアでは効果的な建築と土地活用の規制が欠如しているため、建築環境における災害の拡大とや慢性的なリスクを増大していました。現在ケニアは多くの点で重要な分岐点にいます。整備されつつある規制上の決定は都市建築環境の長期的な安全性、生産性、強靭性に大きな影響を与えます。

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写真左:世界銀行のケニア・カントリーディレクター、フェリペ・ハラミージョ氏による開会の辞

写真右: 安全な建設文化確保における地方自治体の役割について述べるナクル郡知事、知事評議会都市委員長リー・キンヤンジュイ氏

2. 適切に整備された建築規制は、低価格な住宅提供を可能にするなど、開発アジェンダを前進させる

規制能力への投資は次のような社会的目標達成にもつながります:障害者のアクセス向上、資源効率の良い建築物による気候変動への影響緩和、気候変動への適応、低価格な住宅の提供。 

低価格住宅の供給はケニア政府にとっての優先事項のひとつです。2017年、ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領は2018年から2020年にかけた新たな国の開発計画として「ビッグ・フォー」計画を発表しました。低価格で良質な住宅の供給は、本計画のの柱の一つとして取り上げられました。大統領は、2022年までに国の主要都市に合計50万戸の住宅を建設するという目標を設定しました。 

ケニアがこの目標に着手するにあたり、建築規制は地域の気候や資源特性にふさわしく、段階的に建設できるような工法を促進する必要があります。こうしたアプローチは、規制遵守のための費用を軽減し、ケニアにおける既存の建築技術と伝統を活かすことに役立ちます。地元の建築資材や製品を確認し、建築許可や調査にかかるコストと不確実性を軽減することで、安全かつ低価格の住宅建設を促進できます。  

3. 建築業界の規制づくりは投資家にとっても重要

土地利用と建設のための効率的な規制プロセスは、経済投資の動機付けにもなるため、ケニア経済の競争力を高めます。建物の所有者、居住者、投資家、保険会社、選出された政府関係者や市民のために、改正された建築・土地利用規制は、費用対効果の高く納得のいく品質と性能を保証する基準を定めるものです。 

投資家が、政治的安定と通貨価値の変動とともに投資機会の様々なリスクを考慮する際、効果的な建築規制の有無を重要な考慮項目です。うまく機能している建築規制の枠組みは、投資家、特に長期投資家に、投資対象である物的資産が安定、安全で、将来の気候変動の影響などに対しても強靭で将来損失を生む可能性も少ない、という確信を提供します。 

ナクル郡知事、知事評議会都市委員長リー・キンヤンジュイ氏は「建築規制の効果的実施は投資家に予測可能性のある環境を提供します。世界銀行と都市委員会と協力して、安全な建設を容認する文化を育んでいきたいです」と発言しました。

気候変化と災害リスクの高まりや急速な都市化、という環境の中で、ケニアはこの現実を直視し、安全・強固で強靭な建築環境を整備するために一層力を入れています。強力で効率的な建築規制の枠組みを整備することはその取り組みにおいて間違いなく重要であり、最終的にはケニア国民が強靭な未来への道を切り開くのを助けます。




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