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特集 2018年6月21日

災害リスクに対する公共資産の財務管理に関するAPECワークショップを開催

アジア太平洋経済協力(APEC)参加国・地域の間で、災害リスクに対する公共資産の財務管理を強化するアイデアとソリューションについて知見を共有

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写真:ワークショップの参加者


アジア太平洋経済協力(APEC)に参加する国・地域は、「環太平洋火山帯」を囲むように位置していることから、大きな自然災害の脅威にさらされており、災害リスクを軽減するため、確固たる財政管理ソリューションを打ち立てる必要性が認識されています。この共通課題に取り組むため、災害リスクに対する公共資産の財務管理に関するAPECワークショップが2018年6月21・22日に東京で開催されました。同ワークショップは、世界銀行グループの災害リスクファイナンス・保険プログラム(DRFIP)および世界銀行東京防災(DRM)ハブの技術協力の下、フィリピンと日本を共同議長とするAPEC地域災害リスクファイナンスソリューション作業部会の一環として行われました。

2日間のワークショップには、APEC参加国・地域より財務省の実務者が集まり、(i)データベース管理、(ii)災害リスクと被害の評価、(iii)気候・災害リスクに対する公共資産の保険をテーマに、知見や経験を交換しました。非公式かつ双方向に知見を交換しあう機会として設けられたこの会合で、参加国は自然災害リスクに対して公共資産を管理するための経験と実践的な教訓を共有した上で、今後、施策を実施するため、具体的な実務の仕組みをどのように強化すべきか議論しました。ワークショップ後は、国土交通省関東地方整備局を訪問し、同省の道路・河川資産管理データベースシステムについて詳しく学びました。

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写真:ワークショップで討論し、国土交通省 関東地方整備局の道路・河川データ資産管理システムについて学ぶ参加者の様子

ワークショップにはAPEC参加国・地域のうち、チリ、台湾/中国、インドネシア、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィリピン、ロシア、ベトナムの財務省代表者が参加しました。この他には、オーストラリアのクイーンズランド政府保険基金(QGIF)およびクイーンズランド再建機構(QRA)、アジア開発銀行(ADB)、東京海上日動火災保険(アジア太平洋金融フォーラムシェルパ)、富士通(日本防災プラットフォーム)、国際協力機構(JICA)、リスクマネジメントパートナーズ、世界銀行の代表者も参加しました。


"公共資産の適切な管理は災害による被害を軽減し、人命を救い、迅速な復旧・復興を可能とします。つまり、人々の生活と経済への影響を少なくすることにつながるのです。"
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中尾泰久氏
財務省 大臣官房 副財務官

各国・地域代表者、開発援助機関、公共部門・民間部門の専門家の間での様々な議論を通じ、3つの議題について、以下のような重要な教訓を得ました。

データ管理

  • APEC参加国・地域は、災害リスク管理サイクル全体を通して特にデータの質、資産評価、データ基準、ITインフラなどのデータ管理に関する課題に直面しています。災害リスクエクスポージャーを把握し、費用対効果の高い(再)保険プログラムを構築する上で、正確で質の良いデータを収集し、維持・管理することが重要です。
  • 効率的にデータ管理する組織やガバナンス体制を構築するには、法的・制度的枠組みを整備する必要があります。
  • データ管理の方法には、集中型と分散型データベース管理など異なった手法があります。また、リスク評価するためのデータ基準の最低要件は資産管理者・所有者によってさまざまです。

災害リスクと被害の評価

  • 災害リスクと被害を評価するためのしっかりとした政策・組織・実務の枠組みが、公共資産の効果的な財務管理において不可欠です。
  • (再)保険プログラムを構築するのに役立つ最先端のリスクモデリングと技術を含め、さまざまな手法とツールが、災害リスクを把握するアセスメントや、財政面での意思決定のために必要な情報を提供することができます。
  • 特に公共資産のリスクに対する財政対応の制度設計と実行に向けた技術的専門知識を提供する観点から、民間セクターの役割は大きく、不可欠です。

公共資産を対象にした災害リスク保険の構築

  • 公共資産の保険について、政府はさまざまな種類のプログラムと事業体を幅広く活用しており、その手法は多様であるものの、それぞれの手法にまつわる意思決定プロセスには多くの国の間で共通する要素があります。
  • 保険機能と保険に関する意思決定に資する専門知識について、外部の専門家に頼るか、組織内で保持するかは、APEC各国・地域でその方針が異なります。しかし、内部に少しでも専門性を保持することが、着実に補償の質を高め、保険に加入する組織の利益と整合的にする上で不可欠です。
  • データの重要性、特に、保険プログラムへの参加機関から、一貫性があり、かつ質の高いデータを収集する重要性が強調されました。例えば、一定の最低データ収集要件を設定することは、高い費用対効果で民間セクターのリスク負担能力にアクセスする上で極めて重要です。
  • 公共資産の保険にまつわる災害後の被害評価と保険金請求処理において、公共セクターの事業体は独自の課題を抱えています。そのため、1) 対象分野における標準的な民間事例を基にどのような調整を行えるか事前に検討する、2) 被害算定と調達プロセスに関する特有の性質にうまく対応する、3) 基幹インフラおよびサービスの復旧をできるだけ迅速に行うことが求められます。

"フィリピン政府は、国全体の災害リスク管理を改善するため、現在、様々な災害リスクファイナンスの政策に取り組み、開始しています。まだこれらの取組は初期段階ですので、このワークショップの情報は大変有益で、大いに役立ちます。"
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パオラ・アルバレス氏
フィリピン財務省 財務次官補

災害リスクはAPEC参加国・地域全てが直面する深刻な問題であることから、災害リスクファイナンスは大変重要であり、特に強靭なインフラ資産のための災害リスクファイナンスについて、今後もAPEC財務大臣の優先課題として検討を継続する必要があるとの結論で合意し、ワークショップは締めくくられました。

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写真:公共資産管理システムについて意見を交換する代表者たち

 

世界銀行グループの災害リスクファイナンス・保険プログラムについて

災害リスクファイナンス・保険プログラム(DRFIP)は、途上国に対し、災害や気候のショックにより生じうる甚大なコストに対処するための支援を実施しています。DRFIPは、世界中の50か国以上に対し、分析や助言、会議等の開催、金融サービスを提供しており、気候・災害リスクに対する総合的な財政戦略の策定と実施を支援しています。災害リスクファイナンスに関する紹介ビデオはこちらからご覧ください。

更に詳細な情報は https://www.worldbank.org/drfi をご参照ください。

日本-世界銀行防災共同プログラムと東京防災ハブについて

日本政府と世界銀行は、2014年2月に「日本-世界銀行防災共同プログラム」を立ち上げ、世界銀行東京防災ハブを通じて、日本の知見、技術、経験と途上国のニーズとのマッチングの推進を行っています。世界銀行東京防災ハブは、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の管理のもと、仙台レポートに記されたDRM枠組みの4つの重点項目に従い、技術援助、パイロット事業、テーマ別のイニシアティブ、知見の普及、能力整備の支援を行っています。 プログラムは世界銀行防災グローバルファシリティ(GFDRR)による管理の下、東京防災ハブが運営しています。



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