特集

都市パートナーシップ・プログラム: 複雑な開発課題への連携と取り組み

2017年1月20日


要点
  • 現在、世界人口の半数、約36億人の人々が都市に暮らし、その割合は2050年までに70%になると言われています。この増加に伴い、都市部では新たな課題が生まれています。
  • 日本は、大規模・中規模都市が抱える開発課題に取り組んできた経験から、数々のベストプラクティスを有しています。
  • 世界銀行都市パートナーシップ・プログラムは、開発途上国のプロジェクトに日本の知見を活用することを目的としています。

横浜市と富山市には、共通点があまりないように見えますが、この2都市は、持続可能な都市化のモデルとして代表的な都市であるという共通点があります。

横浜市は400万人をやや下回る人口を抱えた日本第二の規模を誇る都市です。過去60年間、様々な開発プロジェクトや規制措置を行い、市民や民間セクターの参加促進を通じて、市は郊外住宅地から、経済力、競争力を備えた、環境に優しく住みやすい都市へと変化を遂げました。

一方、富山市は、人口50万人以下の中規模都市です。しかし、ハイテク技術、ロボット工学、銀行業務、製薬産業、水力発電で日本屈指の技術を有する都市でもあります。また、2008年と2011年にはそれぞれ日本政府から「環境モデル都市」および「環境未来都市」の指定を受け、2012年には「コンパクトシティ」政策の進んだ5都市のひとつとして経済協力開発機構(OECD)から認定を受けました。

横浜市、富山市は、都市をアクセス可能で、競争力と強靭性を兼ね備えた住みやすいものに変化させた代表的な例です。

現在、世界人口の半数、約36億人の人々が都市に暮らし、その割合は2050年までに70%に増加すると言われています。

日本が急激な都市化を経験する過程で得た課題や教訓は、世界銀行の多くのクライアント国にも密接に関連します。

世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、これまで培われてきた日本の知見を積極的に開発に取り入れるため、地方自治体との協力を主とした都市パートナーシッププログラム(CPP)を発表しました。

TDLCは、日本の都市と共同研究、知見共有を進めており、途上国都市のプロジェクトに日本の知見を活用する機会を見出す役割を担っています。

2016年7月には本プログラムの最初の選定都市として、北九州市、神戸市、富山市、横浜市が選ばれ、2016年11月には具体的な協力内容が発表されました。

「世界銀行のクライアント国では、都市の実務者から学びたいという要望が高まっている。都市パートナーシッププログラムで多様な規模の都市が選ばれたことは、小さな町から大規模な都市を抱えるクライアント国にとって価値のあることだ。富山市は、インフラ開発や高齢者へのサービスの提供、都心の再活性化、都市の高密度化や災害リスク管理などの知見を有しており、これらすべての知見がクライアント国に役立つだろう。」 とフィリップ・カープ主席知識管理担当官が富山市で行われた共同記者会見で述べました。

都市パートナーシッププログラムでは、市の職員や代表者が共同研究やラーニング活動等を通じて特定の開発課題や解決策を文書化し、各都市の関連機関や情報機関と共に実務的な「ハウツー(How-to)」知識を文書化し、ナレッジノート、ツールキット、グッドプラクティスガイド、ビデオ等を作成します。

また、本プログラムの共同活動の一環として、TDLCは富山市とコンパクトシティ実務者会合、横浜市とスマートシティ実務者会合を開催しました。分野別実務者会合は、ワークショップ、現地視察、ピアツーピアラーニングや活動計画を行う特有の知見共有活動で、世界銀行が融資する特定の分野でのプロジェクト開発を促進します。

コンパクトシティ実務者会合の参加者であるバングラディシュのサリーナ・アイビー ナラヤンガンジ市長は、技術・知見共有の協力について、「ナラヤンガンジ市は、人口密度の集中から生まれた多くの課題に直面しており、市のすべての人々に平等にサービスを提供することを目指しています。」と述べ、分野別実務者会合による支援に期待を示しました。

スマートシティ実務者会合において、TDLCは、横浜市の協力を得てスマートシティに関する国際会議を開催しました。実務者会合に参加した地方自治体の代表者や民間セクター、学術研究機関から約200名が参加し、スマートシティが直面する市民参画、サービス提供、持続性、イノベーション、競争などの課題について議論を行いました。

実務者会合で得られた知見は、今後、TDLCや世界銀行の様々なプラットフォームを通して共有され、地方自治体との連携に関するラーニング活動の一例となります。


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