日本は、過去数十年にわたる大規模自然災害への対応を通じて、防災能力を高めてきました。防災に関わるインフラやシステム、さらには人々の防災能力を継続的に評価・検証することで、防災体制を改善し防災意識を高めています。これまでの訓練を向上させ、またこれから起こりうる破壊的な災害に対して確実に準備をするために策定してきた日本の防災訓練の有効活用は一つの重要な点です。
世界銀行は、日本—世界銀行防災共同プログラム、および世界銀行東京防災ハブを通じて、日本の防災訓練に関する知見や優れた取り組みをまとめた報告書、「日本の防災訓練に学ぶ」を発表しました。
この報告書は、各国の防災関連省庁や地方政府、公益事業団体、さらに市民社会組織(CSO)に、とくに以下の点について 情報提供することを目的としています。
- 首相や閣僚などの参加をはじめ、防災訓練に主要なステークホルダーが協力するための制度的・政策的・組織的枠組みを策定・改善している点
- 国・地方など、様々なレベルでの防災訓練を実施し、民間団体やコミュニティとの連携を想定した計画を策定し、市民の積極的参加を促している点
- 災害対応能力を強化するため、防災訓練が体系的に組織され、定期的に計画されている点
本報告書では、兵庫県、静岡県、東京都等のご協力を得て、各地の防災訓練をはじめ、様々な取り組みを取り上げています。
本報告書は、日本-世界銀行共同防災プログラムが支援するアルメニアにおける国別プログラムの一環として作成されました。途上国のなかには、すでに報告書を参考にして、新たな取り組みを始める動きも見られます。アルメニア、キルギス、タジキスタンからは、報告書で紹介されている日本の知見を直接学ぶため、政府代表団が訪日し、2016年9月1日の「防災の日」にさいたま市で行われた防災訓練を視察しました。これらの国では、 日本の取り組みを参考にした、危機管理体制の改革の議論が始まっています。本報告書は、これら3ヶ国に限らず他の国にとっても、防災体制を改善するうえで参考になる内容となっています。