ワシントン、2016年6月28日―あなたは知っていますか?世界の物流事業者の質に関する基準に照らすと、ドイツ向け輸入品の基準合格率は94%であるのに対し、ボリビア向け輸入品の合格率はわずか40%であることを。また、グルジア向け輸入品の通関業務は一元化しているのに対し、マダガスカル向け輸入品は10以上の手続きを経る必要があることを。
こうした問題は、「物流」という幅広いカテゴリの中で捉えられています。物流は、国境をまたいだ物資の移動方法や手続きのことですが、その国の物流の効率性を定義するには、インフラ、通関手続き、規制、地理的特性、さらには政治経済といった課題が全て関係します。
国際貿易は物流なくしては成り立たず、各国が輸出入品をいかに効率的に扱うかが、世界経済の中でいかに成長し競争していくかの決め手となります。物流の効率性の高い国は、信頼のおけるサプライチェーンを通じて、企業を内外の市場と容易に結びつけることができます。他方で効率性の低い国は、国際貿易とグローバル・サプライチェーンで時間と費用の両面でコスト高となり、国際的競争力が大幅に損なわれかねないのです。
「物流と貿易は切っても切れない関係にあります。物流の未整備は貿易の成果に影響します。」と、国際貨物輸送業者協会連合会(FIATA)のHuxiang Zhao会長は指摘しています。 「物流の効率性は、サプライチェーン全体で様々な要因をいかに統合するかにかかっています。」
一つの国の物流には多くの要因が関わり合っており、各国間の比較対照は容易いことではありません。世界銀行では2年に一度、「物流と競争2016:グローバル経済の中の貿易・物流(仮題)」を発表し、複雑な国際貿易に関する情報を網羅した「物流パフォーマンス指標(LPI)」を掲載しています。LPIは、税関の効率性、インフラの質、輸送の適時性といった、物流パフォーマンスにかかる重要な基準に着目して各国をランク付けしたものですが、今年はドイツが2年連続でトップとなった一方、シリアが最下位でした。
「以前から我々はLPIを通じて、物流が所得水準を問わず全ての国に如何に重要であるかを政策担当者に示してきました。」と、同報告書の共同執筆者であり世界銀行グループの貿易・競争力担当リードスペシャリストであるジャン-フランソワ・アーヴィスは述べています。「今日、物流には、グリーンな物流(環境にやさしい物流サービス)や、雇用、都市流通といった分野も組み込まれており、その内容はいっそう複雑さを増しています。」
LPIは、二つの情報に基づいてランク付けを行っています。一つは、物流事業者(例:国際貨物輸送業者や運送事業者)を対象とした各国(自国と貿易相手国)における経験についての質問形式の国際アンケート調査、もう一つは、時間、コスト、輸出入品に関する諸手続きなど、サプライチェーンの主要な要素の効率性に関する定量的データです。
「LPIは、政策担当者が、物資の移動やグローバル・サプライチェーンとの連結といった面で、自国の効率性を他国と比較する際に役立ちます。」と、世界銀行グループ貿易・競争力グローバル・プラクティスのホセ・グイエルメ・レイス貿易担当プラクティス・マネージャーは述べています。「LPIは政策担当者に、改善すべき分野と、円滑なサプライチェーンの重要性を示唆するものです。」