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特集

フィリピンにおける建築基準を活用した災害リスク軽減:災害の脅威からの人命・財産の保護

2016年6月27日


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7,000以上の島嶼から成るフィリピンは、世界で最も高い自然災害リスクにさらされている国のひとつです。防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) が主体となって開発した、オンラインのリスク可視化ツール「ThinkHazard!」は、地震、台風、洪水、火山噴火、地すべりなど様々な災害がフィリピンにおける脅威となっていることを示しています。

2つのプレートの境界に位置するフィリピンは、東京やサンフランシスコなどに匹敵する、高い地震リスクにさらされています。同国はまた、季節的な台風の経路にもなっています。さらに気候変動の影響もあり、異常気象が同国にもたらす影響は多様化し、予測が立てにくい状況になっています。災害は人的損失だけではなく、経済にも甚大な影響を及ぼします。自然災害によりフィリピンが被る総損失額は、毎年約65億ドルに上ると推定されており、異常気象によるリスクは、同国で事業を展開する事業主らにとって深刻な懸念事項となっています。(世界経済フォーラム「グローバルリスク報告書 2016年度版」)

自国が抱えるリスクの現状を踏まえ、フィリピン政府は防災の主流化による強靭性強化に全力で取り組んでいます。手始めとして、リスク軽減のための投資計画策定のための能力強化や、インフラ強靭性強化のための規制の導入を含めた優先事項を掲げています。これは、2010年に制定されたフィリピン災害リスク軽減・管理法 (DRRM) に示される内容に沿った取り組みです。

防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) が管理する世界銀行東京防災ハブは、日本-世界銀行防災共同プログラムを通して、235万ドルの贈与 (グラント) を提供し、フィリピン政府の防災の主流化に向けた取り組みを支援しています。主な取り組みとして、フィリピンの公共事業道路省 (DPNH) が主導する国家建築基準の改定を支援します。この改訂を通じ、建築基準を活用した災害リスク軽減を目指します。フィリピンと同程度の地震リスクを抱える日本やカリフォルニアと比べ、フィリピンの建築物は地震リスクに対して非常に脆弱な状況です。国家建築基準の改定が、将来の災害による人的・物的損害の軽減に繋がることが期待されています。

国家建築基準およびその施行に関する規則の改定は、同国の長年の懸案であったと、ロヘリオ・L・シンソン フィリピン公共事業・高速道路省 長官は述べています。同国政府は、本取り組みにより、建物物全般の安全性を向上させ、全国の建築物の品質を安定させるための規制遵守メカニズムをつくることを目指しています。

これらの目標を達成するため、公共事業道路省は、2016年3月、国内および海外の専門家を招き、国家建築基準およびその施行にかかる規則の改正についてのキックオフ会議を開催しました。フィリピン大学国立技術センターで開催された本会議には、民間セクター、市民社会団体、学術・研究機関、政府関係者、開発パートナーの専門家ら、約100名が集いました。

この会議では、国内をはじめ、アメリカ、オーストラリア、日本の専門家が、知見を共有するとともに、課題を分析し、フィリピン国家建築基準のあるべき構造とその遵守メカニズムについて議論しました。さらに、議論は地方政府や民間の建設業者の能力向上に必要となる措置にも及びました。

災害リスク軽減のための総合的な取り組みに向け、今後12か月間をかけ、国家建築基準の見直しが行われ、改定が進められます。フィリピンの建築基準は1977年の制定以来初の改定となる見込みです。また、改定後の国家建築基準との整合性を担保するため、関連する条例についても見直しが行われます。


" フィリピンにとって長年の課題である国家建築規制の見直しと改定に対する、世界銀行、日本政府、防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) の支援に謝意を表します。本取り組みは、災害リスク軽減対策の主流化を進めるものであり、国の強靭化を進める上での重要なステップであると考えます。 "
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ロヘリオ・L・ シンソン

フィリピン公共事業道路省 長官

現在、フィリピン大学ディリマン校の専門家チームによる建築基準の見直しが行われています。工学部、建築学部、および都市・地域計画学部の教授らで構成される専門家チームが、最新の科学的知見や、過去の災害による被害事例から学んだ教訓を踏まえ、見直し作業を行っています。国家建築基準が改定されることにより、フィリピンの建築環境の安全性の向上、自然災害による人的・物的被害の軽減に資する環境を築くことが期待されています。


" 大規模災害が経済や国民に及ぼす影響、特に貧困層や社会的弱者への影響は計り知れません。近年の工学や技術の知見により、災害による負の影響を最小限に抑えることができるのです。 "
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ロヘリオ・L・ シンソン

フィリピン公共事業道路省 長官

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日本-世界銀行防災共同プログラム




建築規制を活用した防災:災害に強い都市づくり

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