自然災害がもたらす教育施設への被害は、教育を受ける機会を脅かし、子どもたちの命を危険に晒しています。防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) が取り組む「災害に強い学校のためのグローバル・プログラム (GPSS)」では、自然災害に強い教育施設や強靭な地域社会をつくることを目指しています。また、学校施設にかかる災害リスクを軽減し、災害による教育への負の影響を最小限に食い止めるための政策づくりを支援しています。
GPSSの一環として、世界銀行東京防災ハブは、教育分野における防災の主流化に向け、「日本-世界銀行防災共同プログラム」を通したペルーでの技術支援プロジェクトを実施しています。本技術支援では以下の4つの重点分野を中心に取り組んでいます。
- 全国レベルでの既存の学校施設の分析・評価;
- 国家学校施設計画の策定: 建築基準、規制枠組み、ペルー国内外の成功事例からの考察等に基づき、学校施設の耐震性強化に向けた投資ニーズを定量的に把握する手法の開発を含む;
- 耐震補強プログラム (SRP) の策定: 学校施設の耐震化を目的とした先進的な改修方法の導入;
- 教育省 (MINEDU) の災害リスク管理能力強化
2015年10月12日、財務省と世界銀行日本理事室から成る日本政府代表団が、リマ首都圏の公立3校を視察し、既存の学校施設が抱える現状と日本の支援による改善状況についての説明を受けました。視察にはペルー教育省および世界銀行の教育チームが同行しました。この視察により、ペルーの学校施設の災害対策における課題が改めて明らかになるとともに、教育省が主導する短期・中期・長期的な取り組みが注目されました。
世界銀行とGFDRRは、「日本-世界銀行防災共同プログラム」による贈与 (グラント) を通してペルー教育省への技術支援を行う上での重要なパートナーです。本取り組みは、既存学校施設の改善と新規施設整備における災害対策を加味したガイドライン、優先的取り組み、政策を統合的に検討し、ペルー教育省による国家学校施設計画の策定を支援します。また、国立工科大学内の日本・ペルー地震防災センター (CISMD) やカトリック神学大学校等の学術機関とのパートナーシップを通して先進的な耐震改修手法を分析・検討し、ペルーにおける構造物耐震補強プログラムへも貢献しています。
学校訪問の前に、代表団は世界銀行ペルー事務所を訪れ、プロジェクトの背景や教育省との密接な連携についての説明を受けました。
代表団は、はじめにセザール・バジェホ公立校を訪問しました。セザール・バジェホ校は、1998年に制定された耐震設計基準の改定より前に建設された数多くの学校のうちのひとつです。この旧基準の学校施設は、短柱問題として知られる重大な構造上の問題を抱えています。現在は、「日本-世界銀行防災共同プログラム」を通した技術支援により、適切な耐震改修方法の選定が行われ、安全な学校コミュニティーづくりが促進されています。
2校目の視察先として代表団はファナ・インファンテ・ヴェラ公立校を訪れ、仮設教室を視察しました。学校施設の地震リスク軽減を目的とした長期戦略の一環である「リマ計画」において、ファナ・インファンテ・ヴェラ公立校を含め、非常に脆弱であると特定された数多くの教室は、取り壊しが決定し、仮設教室が建設されています。
最終訪問先として、代表団はアルフォンソ・ウガルテ公立校を訪問しました。同校は、改修により安全性と機能性の両方が改善された成功事例のひとつです。