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特集

クリーンで環境の変化に強い世界の実現のために:グリーンボンド市場拡大に向けて

2014年3月4日




気候変動リスクの高まりにより、急成長する都市や途上国の開発コストが世界中で上昇しています。異常気象や、エネルギー、水、食糧の供給不足への対策は政府の資金だけで対応するのには限界があり、民間資金の活用が不可欠となっています。 

こうした中、新たな資金調達の仕組みが成果を挙げ始めています。グリーンボンドにより、投資家は確実な金利収入を得つつ、各国の気候変動適応・緩和策に役立つクリーン・エネルギーや公共交通事業などの低炭素プロジェクトに資金が提供されるのです。

「グリーンボンドは、温暖化ガスを抑えた開発に新たな資金の流れを作り出します。さらに、世界の金融界の「環境問題に配慮した開発」への関心が一段と高まる可能性を秘めているのです。それは、従来の化石燃料を消費するプロジェクトから、温暖化ガスを削減した未来を実現するプロジェクトへ資金の流入を推進することです。」と、世界銀行グループのレイチェル・カイト気候変動担当副総裁は述べています。

グリーンボンドの歴史はまだ短いものの、「環境に配慮した投資」は多くの投資家から注目されており、新たな成長市場として大きな潜在性を秘めています。

  • ジム・ヨン・キム世界銀行グループ総裁は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、国連気候変動首脳会合が開催される2014年9月までに、グリーンボンドの国際市場を200億ドル規模へと倍増し、さらに2015年12月のパリ気候変動交渉までに少なくとも500億ドルまで拡大するよう呼びかけました。
  • 2013年12月にフランス電力公社(EDF)が発行した新規グリーンボンドには、募集額(14億ユーロ)に対して二倍の申し込みがあり、気候変動に対処するための資金への市場の関心の高さと、潜在的市場規模の大きさを示すものとなりました。 
  • 大手投資銀行や商業銀行が新たに「グリーンボンドに関する指針」を策定しており、一層の投資家層の拡大が期待されています。

グリーンボンドの調達資金は気候変動対策に活用

国際復興開発銀行(世界銀行)及び国際金融公社(IFC)の世銀グループ二機関は、2008年の世界銀行による史上初のグリーンボンド発行から、昨年のIFCベンチマーク債2本(10億ドル)に至るまで、グリーンボンドの国際市場の育成に大きな役割を果たしてきました。世界銀行グループがグリーンボンドを通じて国際資本市場から借入れた資金は、気候変動への取り組みに役立つプロジェクトへのローンという形で発展途上国へ貸し出されます。

例えば、世界銀行のプロジェクト事例として、チュニジアでは地下水の枯渇が懸念される農村地域において、灌漑の効率化や水の安定供給を実現するプロジェクトが挙げられます。また中国では、洪水防止対策や警報システムにより、自然災害への対策システム意が強化されました。さらにコロンビアメキシコでは公共交通システムのエネルギー効率化を、その他の国においても再生可能エネルギー・プロジェクトを支援しています。

IFCのプロジェクト事例としては、再生可能エネルギーやエネルギー効率化に対する民間セクター投資支援が挙げられます。例えば、南アフリカでは、従来の火力発電に代わって集光型太陽熱発電を利用することで、発電手段の多様化を図っています。アルメニアでは、地場銀行を通じて省エネ住宅向けに金利を軽減した住宅ローンの導入を支援し、同国全体のエネルギー需要の軽減や家計の光熱費負担の削減を目指しています。

世界銀行やIFCのグリーンボンドは最上位の信用力(格付:Aaa/AAA )を有しており、投資家は最小限の信用リスクを取りながら、世界の喫緊の課題である気候変動への対策資金の提供に貢献することができます。年金基金から国際的なアセット・マネージャーに至る機関投資家や大手企業、中央銀行は、気候変動への配慮を盛り込んだ投資戦略を重視しはじめています。

IFCが2013年11月に発行した最新のグリーンボンド(10億ドル)には、フォード社、マイクロソフト社、ブラジル並びにドイツの中央銀行など、グリーンボンドへの投資家としては新たな顔ぶれが並びました。また、世界銀行が2014年1月に発行した変動金利型グリーンボンドは、年金基金や持続可能な社会の構築を目指す投資機関に加え、ブラックロック、全米大学教職員退職年金基金(クレフ)、ゴールドマンサックス・プライベート・ウェルス・マネジメントなどの大手機関投資家が購入しました。さらにチューリッヒ保険は、世銀やIFCなど開発金融機関発行のグリーンボンドに10億ドルを投資すると発表しています。

グリーンボンドに対する投資家の需要の拡大に伴い、北米、ヨーロッパ、アジアでは、開発金融機関、地方自治体、企業、公益事業者など、グリーンボンド発行体の数も増加しています。 

金融機関がグリーンボンド指針を導入

2014年1月、グリーンボンド発行の手順・手法を明確にし、金融商品としての透明性を高めるため、13の投資・商業銀行が、発行体と投資家の両方を対象に、グリーンボンドの必要要件、ディスクロージャー、運用管理、並びに資金の活用についての報告のプロセスを明確化した自主的ガイドライン「グリーンボンドに関する指針」を発表しました。本指針は、IFC、世界銀行をはじめとするグリーンボンド発行体、投資家との協議を経て、上記金融機関が策定したものです。

キム総裁は、「同指針の発表は、再生可能エネルギーやクリーン・テクノロジー向けの資金調達を拡大する上で重要なステップであるとし、とりわけ環境に配慮した成長のための資金が大幅に不足している新興国では大きな意味を持つ」とし、「我々は、これまで金融界で待ち望まれてきたこの機会を逃してはなりません。グリーンボンドに寄せられる高い関心を活用して、グリーンな投資への投資家層を広げようではありませんか」とダボス会議で呼びかけました。 

グリーンボンドの新たな発行体や、より多くの引受機関のためのガイドラインとなるこのグリーンボンド指針は、発行体と投資家層の厚みをさらに拡大するものと期待されています。市場の反応も極めて良好です。

地球温暖化問題への対応

2008年以降、世界銀行は、17の通貨でグリーンボンドを60回発行し、総額45億ドル以上を調達しました。またIFCは、2013年発行のベンチマーク債(10億ドル)2本を含め、総額34億ドルのグリーンボンドを発行しています。世界銀行とIFCがグリーンボンドを通じて、国際資本市場から借入れた資金は、専門家の精査を経て、温暖化の解消に寄与すると認定されたプロジェクトへの貸出に充てられます。発行代わり金は、一旦機関内の特定管理勘定にプールされ、実際のローン貸出実行の際に引き出されます。

世界銀行、IFCの気候関連プログラムの規模は拡大しています。世界銀行はこの3年間に、気候変動「適応」(既に発生してしまっている問題への対処)並びに「緩和」(温暖化ガスの排出削減)プロジェクトに対して年平均55億ドルを承認しました。また、IFCの気候変動への対応を考慮した投融資ポートフォリオは、2013年度に50%増大し25億ドルに達しました。




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