ナイジェリアでは集中豪雨による洪水被害が頻繁に発生しており、リスク管理の限界、排水システムの不備、環境悪化により、状況は深刻さを増しています。2022年の洪水では、240万人以上が避難を余儀なくされ、714人が死亡し、91万ヘクタール以上の農地が被害を受けました。世界銀行がリモートで実施した被災後の被害評価によると、被害額の中央値は約18億3,700万ドルと推定されています。
知識を共有しナイジェリアにおける同様の災害に備えるために、2024年10月8日〜9日にアブジャにおいて、気候変動への強靭性強化のための洪水と干ばつに対するリスク管理に焦点を当てた2日間の技術ワークショップを開催し、70名以上の政府関係者および専門家にご出席いただきました。本ワークショップでは、洪水と干ばつに関するリスク管理の現状と展望について議論しました。リスク管理における各政府機関の役割を特定し、ギャップと機会を強調するために実施している、世界銀行EPICレスポンスフレームワーク評価の中間結果の強化を目的として情報が提供されました。EPICとは「enable(有効)、plan(計画)、invest(投資)、control(管理)、respond(対応)」を意味し、洪水や干ばつのリスク管理のために世界銀行が開発した革新的なガバナンスアプローチです。EPICフレームワークは、リスク管理における要素をシステムに統合することで、水害時の人と資産に対するリスクと脆弱性を軽減することを目的としています。
世界銀行は、連邦水資源衛生省(FMWRS)が策定した洪水災害防止行動計画に基づき、ナイジェリアへの協力を実施しました。同計画は、災害リスクマネジメントについて定めたナイジェリアの国家防災フレームワークと、その他の関連セクターの政策および計画手段に基づいています。
2日間のワークショップでは、政府の代表が洪水と干ばつのリスク管理に関する法令上および制度上の枠組み、水平および垂直方向の連携、および直面している課題について議論しました。その後、国際的なパートナーから、洪水と干ばつのリスク管理に関する活動の最新情報が提供されました。世界銀行の園田敏宏氏がEPICレスポンスフレームワークの予備調査結果について説明し、その後全体会議およびサブグループによるプレゼンテーションとディスカッションが行われました。最後に、ナイジェリア日本国大使館の北村拓也二等書記官と、世界銀行の水資源管理の専門家でありタスクチームリーダーであるEmmanuel Chinedu Umolu氏に閉会の言葉をいただきました。
ワークショップでは、洪水と干ばつのリスク管理に関する既存の枠組みについての共通理解、主要プログラム分野における課題と機会の特定、EPIC レスポンスフレームワーク評価の予備結果への意見、および政策勧告に関する予備議論が行われました。ワークショップの成果を基に、洪水と干ばつのリスク管理に関するEPIC レスポンスフレームワーク評価レポートと政策ノートが、世界銀行の支援を受けて作成されました。これらはナイジェリア政府内での政策対話に役立てられます。主要関係者による専用のEPICワーキンググループが設立され、行動計画が策定される予定です。
本ワークショップはナイジェリア政府の主催により開催されました。また国家気候変動評議会が事務局を務め、世界銀行のタスクチームが専門知識による支援を提供しました。また本イベントは、グローバル水の安全保障・衛生パートナーシップ(GWSP)および日本政府の資金提供により、世界銀行東京防災(DRM)ハブが支援する日本―世界銀行防災共同プログラムからのグラントによる支援を受けて実現しました。