世界銀行は2024年5月23日、新報告書「クラウド及びデータインフラストラクチャー市場を促進する：低・中所得国のための戦略的方向性」（Advancing Cloud and Data Infrastructure Markets: Strategic Directions for Low- and Middle-Income Countries）を発表しました。「世界開発報告書 2021: 生活向上のためのデータ活用」（World Development Report 2021：Data for Better Lives）は、今日の前例のないデジタルデータの生成と流れを強調し、その価値の多くが未開発のままであると指摘しました。そのような巨大な可能性を実現するには、データを取得、分析、共有し、効率的かつ効果的に使用することによって経済や社会に利益をもたらすことができるよう、データが技術的に高度なインフラストラクチャーによってサポートされる必要があります。
クラウド及びデータインフラストラクチャーは、こうしたプロセスを可能にする技術的手段を提供しますが、そのサービスの市場は主に高所得国にあります。手頃な価格でのサービスへのアクセスが限られている国は、機械学習や人工知能などの先進テクノロジーを大規模に活用し、それらによってもたらされうる社会的および経済的利益を実現する能力に遅れをとっているのが現状です。
本報告書は、これらの市場の発展への途上にある国々を支援するための世界銀行と IFC の共同取組みの一環です。本報告書では、そうした状況下におけるクラウド及びデータ インフラストラクチャーの成長の主な推進要因を分析するとともに、官民セクターからの様々なデータがクラウドに移行しつつあるなかで、市場トレンドを形成するビジネスモデル、政策、規制環境を検証し、投資を誘致するにあたっての課題を探っています。
今回のオンラインセミナーでは、本報告書の共著者であるナターリア・ゲルヴァノヴスカーガルシア世界銀行上級ICT政策専門官とカルロ・マリア・ロゾット国際金融公社（IFC）プリンシパルインベストメントオフィサーが、本報告書の主なポイントを日本の皆様に向けてオンラインでご紹介しました。
スピーカー
世界銀行 上級ICT政策専門官
2012年、上級ICT政策専門官として世界銀行入行（リトアニア共和国通信規制庁より出向）。ヨーロッパ・中央アジア地域総局およびグローバルプログラムの融資及び技術協力プロジェクトをタスクチームリーダーとして担当。約20年前にテリア・リトアニア（テリア・グループの一部）でキャリアをスタートさせる。世界銀行入行以前は、リトアニア共和国政府の電気通信担当副ディレクター、欧州郵便電気通信主管庁会議（CEPT）技術規制関連ワーキンググループで欧州20か国をまとめるチェアを歴任。ブロードバンドネットワーク開発の政策・規制面に関する論文、共著書、著書を多数発表している。物理学を専攻し、リトアニアのヴィリニュス大学で理学修士号を取得。リトアニア語、ポーランド語、ロシア語、英語を話す。
国際金融公社（IFC） プリンシパルインベストメントオフィサー
2019年、国際金融公社（IFC）にプリンシパルインベストメントオフィサーとして入社。それ以前は、世界銀行でデジタルインフラストラクチャー担当グローバルリード、およびデジタル開発パートナーシップ（DDP）のデジタル経済ウィンドウを主導し、デジタル開発の促進のために各国政府および主要なテクノロジー企業との連携を担当。、また、複数の地域において参入障壁除去と民間投資促進のための融資及び技術協力プロジェクトも担当し、大規模な民営化、競争的な許認可発行、規制改革・競争促進などを展開した。世界銀行入行前は、米州開発銀行でプロジェクトファイナンスに従事し、民間のマネジメントコンサルティング会社に勤務していた。ミラノのボッコーニ大学で経済学および経営学、ロンドンスクールオブエコノミクスで金融・商規制学のそれぞれ大学院レベルの学位を取得。