主催:東京開発ラーニングセンター(TDLC)
都市は、気候変動、急速な都市化、自然災害によるリスクの増大に直面しています。都市に住む住民のニーズは多様化し、それに伴い行政課も複雑化しており、地方自治体にとってはさらに困難な状況となっています。デジタル化と空間データは、持続可能で公平な都市計画のため、情報に基づいた意思決定を行う能力向上の可能性を提供します。
2024年6月20日、世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、「データ利活用によるレジリエントな都市のデザイン:日本と他国から学ぶ教訓」をテーマとしたフォーカスデイセッションを開催しました。このTDLCのセッションは、スイスの連邦経済省管轄局(SECO)が支援する都市計画ラボ(CPL)から技術的なインプットを得たもので、2024年6月16日から21日まで姫路市で開催された「防災グローバルフォーラム2024:Understanding Risk Global Forum 2024 (UR24)」の期間中に行われました。UR24には、日本を含め世界中から防災に係わる政府関係者、NGO、企業や専門家が集まり、自然リスクやその対応策について議論を行いました。
データ利活用によるレジリエントな都市づくり
リスクを理解し、解決策に優先順位をつけ、最適な財政的解決策を見出すためには、データが不可欠です。地理空間データ、リモートセンシング、衛星画像は都市計画を強化するものです。しかし、人材や技術に課題があるため、データの利活用は限定的です。発展途上国では、データの利用を計画の主流に組み込むことが困難で、デジタルデバイド(情報格差)を生み出しています。また、データのエコシステムをサポートする法的枠組みや制度能力が欠けている現状も多く見られます。
フォーカスセッションでは、日本の富山市長と基調対談を通じて、富山市がどのようにデータの活用をコンパクトシティ政策と組み合わせ、包括的で強靭な成長を促進しているかについて、意見交換を行いました。続いて、4人の登壇者によるパネルディスカッションが行われ、都市開発のためのデータ利活用についてそれぞれの都市や国の経験を紹介しました。また都市計画とレジリエンスの向上にデータと分析を活用したツールの例を紹介する体験型のセッションも行われました。
基調対談:都市のレジリエンスをデザインするー富山市におけるデータを活用したまちづくり
富山市は人口41万人の比較的小さな都市ですが、コンパクトでスマートな都市政策により、包括的でレジリエントな成長を推進していることで知られています。 藤井裕久富山市長から、都市のスプロール化、不十分な公共交通、行政コストの上昇といった問題に富山市がどのように対応したかを紹介していただきました。富山市は、コンパクトシティ政策を実施することで、公共交通が活性化し、住民が路線近くに住むようになりました。また、市は、公共施設や住宅地の人口や位置データを分析することで、住民が徒歩圏内で行政サービスを受けやすい環境を整えました。このアプローチにより、過度な人口集中を防ぎ、各種施設を市内全域に効率的に配置しました。
富山市のスマートシティ政策では、データを一般公開し、ビジュアルなフォーマットで共有することで、レジリエントな都市づくりに市民と企業の両方が参加することを奨励しています。このデータは、防災対策の強化にも役立っています。また、最近の能登半島地震では、コンパクトシティ政策が、市民のサービス利用や災害への備えを促進する上で有効であることが再確認されました。
パネルディスカッション:レジリエントな都市計画、ガバナンス、復興のためのデータ利活用
日本(神戸市):1995年の阪神・淡路大震災後、神戸市は財政難と人員削減に直面しました。これを機に市は、市政運営の効率化を図るため業務改革に取り組み、デジタル化はその重要な要素となり、エビデンスに基づく政策立案を効率的に推進するため、「行政による行政のための」データ活用ツール「神戸データラウンジ」を開発しました。
インドネシア(セマラン市):セマラン市は、アドホックな計画や投資モデルから、データを活用した意思決定とインフラの優先順位付けへの移行に成功しました。また、そのデータのプラットフォームを利用し、COVID-19の大流行時にリアルタイムのデータを収集し、市民のフィードバックを取り入れることで参加型の計画を可能にしました。
ケニア :ケニアは、特に第二都市においてデータガバナンスの課題に直面しています。強力なデータガバナンスの枠組みに基づいたデータ主導型意思決定の必要性について、すべての主要な利害関係者の同意を得るための取り組みが進められています。州住宅都市開発省(The State Department of Housing and Urban Development)は、国の主要機関や自治体と緊密に協力し、幅広い利害関係者がデータを利用できるようにする「全国都市観測所(National Urban Observatory)」を設立しています。
ウクライナ: ロシアの軍事侵攻の中、ウクライナは住宅ストックの損害を適切に評価するという課題に直面しています。データ収集のためのデジタルツールが作成され、市民への補償メカニズムが導入されました。住宅再建のためのこうした評価にはデータが必要不可欠となっています。
データプランニングツールの体験学習と振り返り
参加者は、CPLが開発した「Suitability」ツールを使用し、持続可能な生活、基本的ニーズ、洪水を回避できる手頃な価格の住宅に焦点を当てた共同計画シミュレーションを行いました。
イベント詳細
- 日時: 2024年6月20日(木)午前9時00分~午後12時30分
- 開催形式: 対面式
- 場所: アクリエひめじ 409号室
- 言語: 日英同時通訳付き
- 参加費: 無料
- 参加方法: 事前参加登録は締め切りました。
- お問合せ: 世界銀行 東京開発ラーニングセンター(TDLC) TEL:03-3597-1333
- tdlc@worldbank.org