世界銀行の各地域総局では半年に1度(春と秋)、地域内の経済概況と展望をまとめた半期経済報告を発表しています。このうち南アジア地域担当チーフエコノミスト室は、2023年10月3日に「南アジア開発報告2023年10月版―よりクリーンな成長の加速に向けて」(South Asia Development Update, October 2023 – Toward Faster, Cleaner Growth)を発表しました。
南アジア地域の経済成長は6%弱で、他の地域よりも速いペースで成長すると予想されていますが、新型コロナウイルス感染症パンデミック前のペースよりは遅く、同地域における開発目標を達成するためには十分ではありません。同地域は、高水準の政府債務による脆弱な財務状況などのリスクに直面しており、各国は財政リスクを早急に管理、軽減し、長期的には成長を加速し、持続可能な方法で雇用を創出する必要があります。世界的なクリーンエネルギーへの移行は、同地域にとって生産性の向上、汚染の軽減、燃料輸入への依存の削減、雇用創出の機会でもあります。これを活用するには、各国はエネルギー効率の高い先進的な技術の導入を奨励し、労働市場の変化の影響に直面する脆弱な労働者を保護するための措置を講じる必要があります。
今回のモーニングセミナー(第176回)では、本報告書をとりまとめたフランジスカ・オーネゾルゲ世界銀行南アジア地域担当チーフエコノミスト、パトリック・カービー同上級エコノミスト、マーガレット・トゥリヤナ同上級エコノミストが、同報告書の主なポイントを日本の皆さまに向けてオンラインでご紹介しました。
日時
2023年10月25日(水)午前8時~午前9時(日本時間)
スピーカー
フランジスカ・オーネゾルゲ
世界銀行 南アジア地域担当チーフエコノミスト
南アジア地域における政策に関する議論と世界銀行による融資を支援するための、主要な経済課題に関する調査研究プログラムを統括している。現職以前は、開発経済総局(DEC)のマネージャーとして、世界銀行の旗艦報告書「世界経済見通し」(Global Economic Prospects:GEP)の主任執筆者であった。
世界銀行入行前は、欧州復興開発銀行(EBRD)チーフエコノミスト室でサーベイランス、予測、金融セクター政策に従事、国際通貨基金(IMF)でアジア、ヨーロッパ・中央アジア各国を担当。学術誌や政策報告などに多く執筆し、債務・金融危機、インフレ・通貨政策、成長・インフォーマル労働市場などのマクロ経済・金融に関する幅広いテーマをカバーしている。エコノミスト、ウォールストリートジャーナル、フィナンシャルタイムズはじめ主要メディアでも引用されている。トロント大学で博士号を取得。
パトリック・カービー
世界銀行 南アジア地域担当チーフエコノミスト室 上級エコノミスト
南アジア開発報告(South Asia Development Update)の主任執筆者。現職以前、世界銀行の旗艦報告書「世界経済見通し」(Global Economic Prospects: GEP) の主任執筆者の一人。世界銀行入行前は、カナダ銀行国際予測部首席エコノミストとして、金融政策報告および同銀行の世界マクロ経済分析モデルに従事。
マーガレット・トゥリヤナ
世界銀行 南アジア地域担当チーフエコノミスト室 上級エコノミスト
低所得国・中所得国において政策と環境要因が人的資本の様々な側面にどう影響するかを中心し、ライフサイクルを通して人的資本がどう形成されるかに関する調査研究に従事。環境リスクと政策の分配的影響に関して分析。シカゴ大学公共性大学院で博士号を取得。
発表資料
South Asia Development Update, October 2023 – Toward Faster, Cleaner Growth(英語、PDF)