どのくらいの頻度で貧困統計を準備することができるのでしょうか。ソースデータが回収された後、どのくらいの早さで貧困統計を集計・発表できるのでしょうか。低所得国において、貧困統計は平均7年毎に作成されます。データ回収後、貧困統計は1-2年かけて集計・発表されます。その結果、気候変動ショック、経済危機、自然災害がもたらす貧困への影響を示すデータはないのが現状です。このデータ格差をうめるため、政府、ドナー、NGOs、国際機関などのグループにより、高頻度・リアルタイムモニタリングシステムである「迅速フィードバックモニタリングシステム(Rapid Feedback Monitoring System:RFMS)を開発し、マラウイ南部の農村で実施しました。RFMSはコミュニティベース型のデータ回収システムであり、SWIFT(Survey of Well-being via Instant and Frequent Tracking、瞬間・高頻度追跡によるウェルビーイング調査)を活用し、シンプルな調査質問により貧困を追跡します。RFMSの活用により年2回の貧困追跡が可能になり、1か月の期間で貧困等の統計を集計できます。RFMSはまた、きわめて安価(1世帯あたり1.5ドル)に調査を実施でき、かつ気候強靭性にも優れているので、サイクロン直撃の直後でもデータを回収できます。これにより初めて、サイクロン直後および中期的な貧困への影響を示すことができるようになりました。
今回のラウンドテーブルでは、同調査事業を主導した吉田信生・世界銀行 貧困・平等グローバルプラクティス リードエコノミストが概略をご紹介し、日本の研究者や実務家の皆様と意見交換をさせていただく機会を、ハイブリッド形式(会場参加またはWebexによるオンライン参加)で実施しました。
日時
2023年7月12日(水)午後0時~午後1時30分(日本時間)
スピーカー
吉田信生
世界銀行 貧困・平等グローバルプラクティス リードエコノミスト
2002年、世界銀行入行。南アジア地域総局貧困削減・経済管理セクター局エコノミスト、同シニアエコノミスト、貧困グローバルプラクティス・シニアエコノミスト、同リードエコノミストを経て現職。ボストン大学にて経済学博士号を取得。貧困の測定・予測、脆弱性及び社会的保護に関する融資業務および調査研究に従事。世界銀行グループが2つの目標(「貧困の撲滅」と「繁栄の共有の促進」)を策定した際の技術ワーキンググループのメンバーでもある。
発表資料
A Real-time Monitoring of Poverty in an Age of Climate Change (英語、PDF)