世界銀行は2021年10月27日、新報告書「世界の富の推移2021」(The Changing Wealth of Nations 2021)を発表しました。同報告書では、世界の富は全体として増加したものの、将来の繁栄を犠牲にすると共に格差を助長していると指摘しています。同報告書では、短期的な利益を優先するあまり資源を枯渇させつつある国は、持続不可能な形で経済成長を図ろうとしており、従来、経済成長の測定には国内総生産(GDP)などの指標が使われているなかで、持続成長な成長であるか否かを理解するために、自然資本、人的資本、人工資本を考慮することの重要性を強く訴えています。同報告書は、1995年~2018年に146カ国の富の推移を記録しており、再生可能な自然資本(森林や農地、海洋資源など)、再生可能でない自然資本(鉱物や化石燃料など)、人的資本(生涯所得)、人工資本(建造物やインフラなど)、対外純資産の経済的価値を測定しており、今回初めて、マングローブや魚介類などの海洋資源を経済計算に含めています。
今回のモーニングセミナー(第131回)では、同報告書の執筆を主導したジェームズ・カスト世界銀行アフリカ地域担当チーフエコノミスト室上級エコノミスト、グジェゴシュ・ペシュコ同環境・自然資源・ブルーエコノミーグローバルプラクティス リードエコノミスト、ステファニー・オンダー世界銀行 環境・自然資源・ブルーエコノミーグローバルプラクティス 上級環境エコノミストが日本の皆様に向けて、主なポイントをオンラインでワシントンよりご説明しました。
日時
2021年12月17日(金)午前8時~午前9時(日本時間)
スピーカー
世界銀行 アフリカ地域担当チーフエコノミスト室 上級エコノミスト
アフリカ40カ国の大統領の経済顧問のネットワークである「政府のチーフエコノミスト」イニシアティブ共同推進者。世界銀行入行以前は、自然資源ガバナンス研究所で研究・データ局長を務め、自然資源憲章(Natural Resource Charter)の創設に貢献した。繁栄の促進のための政府の役割に関する政策関連の実証研究に従事している。オックスフォード大学で経済学博士号および修士号、ケンブリッジ大学で学士号を取得。オックスフォード大学経済学部資源国分析センターの非常勤リサーチアソシエートでもある。
世界銀行 環境・自然資源・ブルーエコノミーグローバルプラクティス リードエコノミスト
気候変動緩和、プラスティックごみ防止、大気汚染、「世界の富の推移」報告書、持続可能性に関するマクロ経済・財政面についての分析・助言業務を主導している。世界銀行入行前は、欧州復興開発銀行リードエコノミスト、OECD環境金融プログラムマネージャー、クラクフ経済大学教授、ポーランド環境省EU統合局経済ユニット長を歴任。クラクフ環境投資基金理事、民間企業や公共セクターでのコンサルタント、ラジオ・テレビジャーナリスト、路面電車の運転手も務めた。IPCC第3次評価報告書の首席執筆者、IPCC第6次評価報告書の執筆者の一人でもある。クラクフ経済大学で経済学博士号、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで環境経済学修士号、ヤギェウォ大学で政治学・ジャーナリズム学修士号を取得。
世界銀行 環境・自然資源・ブルーエコノミーグローバルプラクティス 上級環境エコノミスト
南アジア、東アジア・大洋州、グローバルユニット業務を担当。自然資源資本、自然資源に依拠する貧困層の生計向上、気候緩和・適応などの自然資源管理に関連する融資業務および技術支援に従事。アメリカン大学国際関係大学院(SIS)助教授として、開発・環境経済学、強制移動に関する経済学などの研究アジェンダを展開。ロンドンスクールオブエコノミクスで経済学博士号を取得。
発表資料
The Changing Wealth of Nations 2021 : Managing Assets for the Future (英語、PDF)
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