インドネシア政府は、世界銀行を含むパートナーとともに、同国の地球物理学的ハザードへの備えを向上させるため、地震早期警報システム(EEWS)の構築に取り組んでいます。日本ー世界銀行防災共同プログラムを通じた支援により、日本をはじめとする世界各国の専門知識が提供され、インドネシアの地震早期警報システム(InaEEWS)構築に向けた同国の能力強化を後押しする取り組みが行われています。2021年12月7日、インドネシア気象気候地球物理庁(BMKG)は、世界銀行や日本の技術専門家らと連携し、「InaEEWSの設計と運用」に関する知識交換会を開催しました。
イベントにはインドネシア政府機関や大学から地震早期警報システムの専門家や実務家が参加したほか、プレゼンターとして世界銀行の専門官や日本、メキシコ、台湾からの専門家が発表を行い、オンラインとオフラインを合わせた参加者総数は150人を超えました。インドネシア気象気候地球物理庁の地球物理学担当副局長による開会の辞に続き、同庁からInaEEWSの概要が発表され、設立に至るビジョンとミッションが紹介されました。その後、メキシコ国立自治大学(UNAM)の地球物理学研究所、国立台湾大学(NTU)、台湾中央気象局(CWB)、京都大学の主要な専門家らによる発表と議論が行われました。
メキシコ国立自治大学のEEWS専門家が、メキシコのEEWSの進捗状況と地震ハザード認識向上のための国の取り組みについて発表した後、国立台湾大学と台湾中央気象局の専門家が台湾におけるEEWS開発の概要、進捗状況、技術的課題について発表しました。日本からは、京都大学防災研究所のEEWS専門家が、日本のEEWSを向上させるための我が国の継続的な取り組み、特に技術面や運用面で得られた教訓を共有しました。
インドネシアにおける人々、インフラ及び資産の安全のためのInaEEWSの実施を確実にするために、専門家らは意見交換を行い、踏み込んだ議論を展開しました。インドネシアにおけるEEWSの実施は大きな課題となっています。対象地域の広さと各地域のインフラ能力の違いがその原因とされています。InaEEWSのさらなる発展のために、メキシコや台湾の事例のほか、日本におけるEEWSの開発過程が共有され、議論を通じ以下の要点が浮き彫りになりました。
1)日本におけるEEWSの開発過程が共有されましたInaEEWSの開発において考慮すべき主要なインフラは、時刻表示通信と同期ネットワークである。
2)InaEEWSの成功を後押しするためには公教育が不可欠である。
3)InaEEWSの開発と実施を支える規制/法的基盤が必要である、など。
今回の知識交換会により、インドネシア気象気候地球物理庁はInaEEWSの準備と実施に必要な実践的なグローバルナレッジ、運用上の教訓、そして多様な技術的視点を得ることができました。その成果は、インドネシアがInaEEWS開発において進めるべき次のステップ(世界銀行が融資するプロジェクト「インドネシアの災害への強靭性強化イニシアティブ(Indonesia Disaster Resilience Initiative Project)」からの支援など)を明らかにする上で役立つものでしょう。