都市の競争力・住みやすさ・包摂性を高める開発手法の中でも、公共交通志向型開発(TOD)及びエリア特化型開発は、まだ十分に活用されていない手法です。これらの手法を都市の都市基盤や社会組織と結びつけることができれば、経済的、社会的、環境的なメリットをもたらし、貧困層を含めたコミュニティ全体の住みやすさの向上と繁栄に繋がります。
今回の実務者研修会合(TDD)では、特に交通結節点とその周辺の開発に焦点を当て、TODや人を中心とした公共空間デザインに基づく都市計画や都市形成に関する研修を行いました。具体的には、(i) 交通機関と連結した住みやすい都市空間に向けた都市・エリア計画と都市デザイン、(ii)アクセシビリティや効率的で環境にやさしく安全なモビリティのための都市・交通網の計画、(iii)都市交通網を活用した再開発事業の特定、(iv)都市基盤の形成における市民参加の役割、(v)より良い都市空間の設計と実施につながる革新的技術の利用、(vi)住みやすく、アクセスしやすい場所を創造するための官民セクターの役割等について議論し、日本と参加国の事例や教訓を共有しました。
参加者は、交通・商業の要所である福岡県天神地区を訪問し、同地区の総合的な都市計画やエリア特化型整備など、進化する都市空間の長期的な計画・運営について学び、また、自治体、商店、鉄道などがいかに連携してTODを推進していくのかについて理解を深めました。また博多地区では、博多シティと呼ばれる大型複合駅舎を訪れ、2011年に九州新幹線が開通したことをきっかけに整備された、多目的広場やタクシーエリアなどの事例について学びました。今回のTDDを通じて、参加者は日本が官民連携を重視し、交通と都市空間を一体化する努力を行っているとともに、将来のビジョンを作成し、市民の理解獲得や意見収集に注力していることを実感していました。また、TDDに参加した現地政府関係者からは世界銀行とTDLCが現地ワークショップやコンサルテーションを展開し、各都市でのTOD開発プロジェクトを促進したり、現地市職員が民間企業や市民とのパブリック・ダイアログを実施するための支援をしてほしいとの声が聞かれました。