2016 年5月31日、世界銀行東京事務所では、報告書『長く幸せな人生を:東アジア・大洋州地域の高齢化』の完成を機会として、セミナーを行いました。
世界銀行グループ社会保護・労働担当 リード・エコノミストのフィリップ・オキーフによるプレゼンテーションに加え、コメンテーターとして、稲田晴彦 厚生労働省老健局総務課 課長補佐、中村信太郎 国際協力機構(JICA)人間開発部 高等教育・社会保障グループ社会保障国際協力専門員をお招きしました。
同報告書の主席執筆者であるフィリップ・オキーフからは、東アジア・東南アジア地域における高齢化、人口動態動向に関する課題と政策提言、同地域の経済見通しに加え、日本の介護保険、そして2004年に成立した年金改革法は各国の参考となることなどが紹介されました。また、日本のような高齢化に伴う労働人口の減少する社会において女性の雇用は必要であり、移民についての制度改革は簡単ではないが、過剰医療を防ぐため、プライマリケアの門番としての機能を強化し、高齢化による費用対効果を改善することなどが、日本から学ぶことが出来る事例として取り上げられました。
稲田課長補佐は日本の高齢化に伴う政策の歩み、そして現在アジア諸国で行っているアクティブ•エイジングに関する取り組みを紹介し、中村信太郎専門官からは、JICAのタイにおける高齢者向けプロジェクト、厚労省と協力して行っている要援護高齢者等のための介護サービス開発プロジェクト(LTOP)について説明がありました。
質疑応答では、日本とアジア諸国の経済成長の時期と人口動態動向、それに基づく制度が違う点、日本の介護サービスの需要に対する労働人口の少なさなどが挙げられました。特にタイではボランティアとしてのコミュニティヘルスワーカーが多いなどことにも触れ、日本や他のアジア諸国がタイのケースから学ぶ点などについても活発に議論が行われました。