世界銀行グループ東京開発ラーニングセンター、世界銀行東京事務所は、国土交通省および財務省の協力のもと、第3回公共交通指向型開発(Transit-Oriented Development: TOD)セミナーを2016年5月17日に開催しました。開催挨拶で、塚越保祐世界銀行駐日特別代表は、日本のTODの特徴として、交通手段と土地利用を一体的、かつ、官民が連携して開発を推進し、土地の付加価値の増大を挙げました。塚越特別代表は、TODが「質の高いインフラ」にも多いに貢献すると述べました。
本セミナー基調講演において越澤明北海道大学名誉教授は、「現在日本では、貧富に関わらず公共交通機関が利用されます。1923年の関東大震災は、日本の都市開発が進められていた最中に起こり、皮肉にもその震災が世界最大規模の日本の都市改造を可能にしたのです。」と述べました。
日本の都市開発戦略には、密度の集中、駅利用者の多様性、スペース節約の統合性、周辺環境との接続性、ヒューマン・スケールや低炭素性などの要素が組み込まれました。日建設計執行役員・プロジェクト開発部門副統括の田中亙氏は、「日本のTODを他国に適用するためのヒントはたくさんあります。ただし、開発実現には関係者の調整が欠かせません。」と述べるとともに、プロジェクトのオペレーションや管理に係る役割分担および予算の適切な配分の重要性を指摘しました。
デルモ・マヌエル・ピンホ リオデジャネイロ市交通局副局長は、大都市計画にTOD理念を適用し、ケイマドス駅のように試験的に取り入れることが大切だと述べ、小規模のTODプロジェクトが大都市に大きなインパクトを与えることを強調しました。
本セミナー最後のプレゼンテーションでは、大規模な駅のユニークな特徴を各都市が生かすことを目的とした「3Vフレームワーク」が紹介されました。「急成長を遂げている都市は、TODを近隣に適用するだけでなく、大規模な駅周辺のスペースを開発することにより、都市の持続可能性を生みだすことができるのです。しかし、それぞれの駅には特徴があり、その特徴に応じた手法が必要です。」とジェラルド・ポール・オリビエ世界銀行上級インフラストラクチャー専門官[YH1] ・TODコミュニティ・オブ・プラクティスリードが述べ、ノード(node)、場所(place)、市場(market)の3価値のバランスの重要性を指摘するとともに、3VフレームワークがTOD駅周辺の経済価値を高めることを説明しました。また、ノード別の総括戦略も紹介されました。
石垣和子 国土交通省総合政策局国際政策課総括国際交渉官は、閉会挨拶の中で、「TODはまさに官民一体の活動です。私たちは、TODがもたらす利益や社会への影響について深く知る必要があります。」と述べました。