2016年、アフリカ開発会議(TICAD)が開催されます。TICADは、アフリカの開発をテーマとする国際会議で、1993年以降日本政府が主催し、世界銀行も共催しています。第1回から第3回は東京で、第4回と第5回は横浜で開催されてきましたが、今後は3年に一度となり、今年初めてアフリカで開催される予定です。これに向け、世界銀行東京事務所では、TICADとアフリカ各国の課題と展望に関するセミナーシリーズを開催しています。
TICADセミナーシリーズ第4回は、著書『最底辺の10億人』などのアフリカ経済・貧困研究で著名なポール・コリアー オックスフォード大学教授・同アフリカ経済研究センター所長をスピーカー(オックスフォードよりテレビ会議で参加)に迎え、「アフリカにおける土地利用計画と空間開発:都市の健全な成長に向けて」と題して開催しました。
セミナーでは、エデ・イジャス・バスケス世界銀行都市・農村・社会開発担当シニアディレクターが、人工衛星やモバイル機器などを活用したデータ収集・分析と地図化など、アフリカにおける革新的な空間分析の結果概要をご紹介し、都市化を適切に制御しつつ持続可能な成長を進めるための政策的措置を提案しました。本分析結果は、今年6月にオックスフォードで開催予定の「世界銀行アフリカ年次会合」(Annual Bank Conference on Africa)にて発表される予定で、アフリカにおける都市化のもたらす様々な機会を戦略的に捉え、それらを阻む主な障害を解消するための指針となることが期待されます。
またコリアー教授は、アフリカが直面する最も重要な課題を都市化への対応と位置付けたうえで、都市化の様々な側面と求められる政策を説明しました。都市化の速度と規模を制御することは、極めて難しい課題で、特にアフリカでは、他地域と比べて都市化が進んでおり、低所得層の都市集中も急速に進んでいることから、複雑な状況となっています。
今回の空間分析の結果は、すでに世界銀行による活用が始まっています。例えばナイロビやアクラでは、都市管理の向上や行政サービス改善を図るため、都市の土地利用や交通システム、固形廃棄物の収集システムや埋め立て処理、上下水道のネットワークや施設の問題に取り組む一連のプロジェクトを進めています。また、タンザニアやウガンダでは、成長が進む中規模都市を支援し、生産性向上、組織・制度の強化、ガバナンスや行政サービス、説明責任の向上のためのキャパシティ・ビルディングを進めるプログラムを複数の都市でセクターの枠を超えて実施しています。
プログラム
冒頭挨拶
塚越保祐 世界銀行グループ駐日特別代表
基調講演
エデ・イジャス・バスケス 世界銀行都市・農村・社会開発担当シニアディレクター
当日の資料:Land Use Planning & Spatial Development for Smart Growth in African Cities (PDF)
ポール・コリアー オックスフォード大学教授・同アフリカ経済研究センター所長(オックスフォードよりテレビ会議で参加)
当日の資料:African Urbanization: an Analytic Policy Guide (PDF)※
※本稿の中で示された内容や意見は、世界銀行グループの公式見解を示すものではありません。 |
パネル討論
スミーラ・グルヤニ 世界銀行都市戦略・分析グローバルリード(モデレーター)
エンジニア・ナッティ タンザニア・ダレサラム市計画局長(ダレサラムよりテレビ会議で参加)
アビアス・ムムヒレ ルワンダ・キガリ市住環境・住宅局(キガリよりテレビ会議で参加)
ソミック・ラール 世界銀行主任都市エコノミスト(ワシントンDCよりテレビ会議で参加)
当日の資料:Opening Doors to the World - Building African Cities that Work (PDF)
オックスフォード大学教授、同アフリカ経済研究センター所長。1998年から2003年まで、世界銀行開発経済総局(DEC)開発研究グループ局長。現在は国際通貨基金(IMF)戦略・政策局、世界銀行アフリカ地域総局などのコンサルタント業務にも従事。著書に『最底辺の10億人:最も貧しい国のために本当になすべきことは何か?』、『民主主義がアフリカ経済を殺す:最底辺の10億人の国で起きている真実』など。 |