西アフリカにおけるエボラ出血熱は、11,000人以上の死者、数十億ドルに上る収入喪失をもたらし、現在もその脅威は終息しておりません。エボラ出血熱は、患者との直接の接触が感染の原因であることから、限られた国における流行にとどまっています。しかしながら、1918~19年に大流行したスペイン風邪のような空気感染で瞬く間に広がる疾病であったと仮定すると、発生後250日で3,300万人以上が犠牲になり、また、世界のGDPの4.8%、つまり3.6兆ドルの経済的損失がもたらされると試算されています。
将来的な感染症の流行に適切に対応するためには、強固な保健システム構築のための「事前準備(preparedness)」への投資と、人材と資材の供給に迅速に対応するための関係者間の緊密な協調体制の確保が重要です。これらに加え、危機の兆候が見られた時点で、緊急資金の提供と対応チームの配備を即座に行うことが必要です。しかしながら、エボラ出血熱の経験でわかったことは、感染速度の速い感染症の場合、既存の対応方法では間に合わないということでした。こうした問題意識を踏まえ、世界銀行は、そのソリューションの一つとして、WHO等と協働し、パンデミック緊急ファシリティ(PEF:Pandemic Emergency Financing Facility)と呼ばれる仕組みの導入を図っているところです。PEFは、民間保険の活用等により、感染症による危機の発生時に即座の資金提供を可能とするための、革新的な資金調達方法です。
今般、PEFの設計責任者の一人である世界銀行のムケシュ・チャウラ保健・栄養・人口問題グローバルプラクティス部門長が、PEFの導入に向けて日本の関係者と意見交換を行うため来日いたします。この機会を捉え、PEFの概要について説明するセミナーを開催いたしますので、奮ってご参加くださいますようお願いいたします。
プログラム
開会挨拶
塚越 保祐
世界銀行駐日特別代表
講演
ムケシュ・チャウラ
世界銀行グループ 保健・栄養・人口問題グローバルプラクティス 部門長
カルロ・セグニ
世界銀行 財務局 主任財務担当官
コメンテーター
勝間 靖
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科長
石井 澄江
(公財)ジョイセフ代表理事・理事長
スピーカー略歴
ムケシュ・チャウラ 世界銀行グループ 保健・栄養・人口問題 グローバル・プラクティス 部門長 |
2000年、世界銀行入行。人間開発ネットーワーク総局の知識管理担当部門長、保健・栄養・人口問題担当セクターマネージャー等を経て2014年7月より現職。20年以上にわたり、欧州、アジア、アフリカにおいて国際機関や各国政府と協働し、様々なイノベーションの設計・普及等を通じて保健分野の発展に貢献。米国ボストン大学で経済学の博士号、印デリー大学で経済学の修士号を取得。