2011年、世界銀行と日本政府は、日本の国民皆保険制度の50周年の機会を捉え、日本のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:Universal Health Coverage)に係る知見の途上国への適用可能性を探るため、11か国を対象に共同研究を開始し、2014年に報告書を取りまとめました。UHCとは、全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、必要な時に支払い可能な費用で受けられる状態を指します。
UHC推進とともに増加する保健医療サービスの需要に対応するためには、保健医療人材をスケールアップする必要があります。「スケールアップ」とは、人材の数を増やすだけではなく、労働市場の状況(教育・研修体制、地域の状況や住民のニーズを踏まえた保健人材の職種別の構成等)、労働環境、保健医療人材のキャリア選択の志向性、能力向上に向けた金銭的ならびに非金銭的なインセンティブ等を考慮することが重要です。特に、保健医療人材として女性をエンパワメントすることは、UHCの実現に不可欠です。
今回のセミナーでは、共同研究の責任者の一人である世界銀行の前田明子主任保健専門官の来日にあたり、UHCの実現という観点から、保健医療セクターにおける人材育成の課題と対応について説明、議論しました。
プログラム:
挨拶
塚越保祐 世界銀行グループ駐日特別代表
講演
前田明子
世界銀行保健・栄養・人口 主任保健専門官
保健と開発分野において、20年以上の経験を持つ。低中所得国の政府に保険財政や保健サービス改革の分野で技術開発や政策助言を行っている。現在は世界銀行の保健人材グローバル戦略を指揮。世界銀行入行以前は、国連開発計画(UNDP)、ユニセフ、アジア開発銀行に勤務。ハーバード大学より生化学と分子生物学修士号、ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院より医療経済学博士号を取得。
コメント
石井 澄江
ジョイセフ(JOICFP)代表理事
1975年より公益財団法人ジョイセフ(JOICFP)で、ブータンやラオス、タイといった開発途上国で家族計画や支援するプロジェクトを数多く手がける。1997年から2002年まではJICAのリプロダクティブヘルスプロジェクトのチームリーダーも務める。
小林尚行
政策研究大学院大学特任教授
政策研究院大学政策研究科特任教授/政策研究院参与。アジア地域の行政官の政策リサーチ指導等を担当。また国際協力機構(JICA)の保健開発政策・ガバナンスのシニア・アドバイザーを兼ねる。これまでにJICAの援助協調課長、母子保健課長、人間開発部次長(アジア大洋州担当)として他国援助機関との開発援助における連携強化や保健医療分野の支援の展開をリードする他、多数の国際保健の議論に参加。アジア保健人材連盟実施委員会委員やタイ国マヒドン王子賞保健国際会議の実施委員会委員等を務めてきている。
当日の資料:
Meeting the Health Workforce Challenges for Universal Health Coverage