日本と世界銀行は、長年にわたり、途上国における災害リスク管理に協力して取り組んできました。2014年2月には、「日本-世界銀行防災共同プログラム」が設立され、その一環として、世界銀行東京防災ハブが設置されています。この度、世界銀行東京事務所と東京防災ハブは、日本防災プラットフォームと共催で、自然災害に対する強靭な社会づくりに向けた民間セクターの役割を議論するセミナーを開催しました。
企業は、雇用を創出し、商品やサービスを提供するという観点から、将来発生しうる自然災害からコミュニティを守り、復旧、復興の過程で重要な役割を果たしています。事業継続計画(BCP)は企業活動を守るだけでなく、地域社会が受ける被害を軽減することにもつながります。さらに、民間セクターは製造業、サービス業、金融サービスといった様々な分野での知見と技術を活かして、災害に対する経済・社会の強靭性を高めることに貢献しています。一例をあげれば、情報通信技術(ICT)を活用した河川増水に対する早期警戒システムをコミュニティに導入することで、災害準備の効果を高めることに貢献しています。このような民間セクターの知見や技術を防災戦略に積極的に組み込んでいくことが、今後ますます必要になっています。
2011年の東日本大震災・津波、また、同年のタイ洪水の経験は、国際物流の災害リスク管理の観点からも民間企業のBCPが重要であることを浮き彫りにしました。洪水は、工場、倉庫、通信回線などの物理的インフラを破壊するだけでなく、国際的サプライチェーンを分断するなどの大きな影響を与えます。その影響は一企業だけに留まらず、一国の経済・社会全体、さらには国際経済にも波及し、その対策には公的セクターだけでは不十分であり、民間セクターの役割と官民パートナーシップが重要であることを明らかにしました。
今回のセミナーでは、防災に携わる日本の民間企業の方々をパネリストにお迎えし、防災における、官民それぞれが果たす役割、官民のパートナーシップの可能性について議論しました。
プログラム
講演者略歴(PDF)
開会挨拶
塚越保祐 世界銀行グループ 駐日特別代表
講演
サリ・K・ゼーダーシュトレーム 社会・都市・農村開発担当グローバル・プラクティス戦略・業務局長
パネル
中分毅 株式会社日建設計取締役副社長
当日の資料(PDF)
呉文繍 UNISDR民間セクター諮問グループ議長、国際航業株式会社 代表取締役会長
当日の資料(PDF)
フランシス・ゲスキエール 世界銀行グループ 防災グローバルファシリティ(GFDRR)事務局長
モデレーター
西口尚宏 日本防災プラットフォーム代表理事
質疑応答
スピーカー
サリ・ゼーダーシュトレーム 世界銀行グループ 社会・都市・農村開発担当 グローバル・プラクティス局長 |
世界銀行グループは2030年までに極度の貧困を撲滅、また所得下位40%の人々との繁栄の共有を推進しており、その実現に向けて強化された新組織体制のもと、2014年7月1日より現職。
局長として、地域・農村開発及び、世界銀行が推進する持続可能な開発において益々重要性が増している持続可能な土地管理を指揮。これまでに、アフリカの持続可能な開発局のシニア・マネージャーとして、420名のスタッフと共に250案件を包括的に管理。
また、東ヨーロッパ・中央アジア、東アジア・大洋州、ラテンアメリカ・カリブ海において、農業、環境、天然資源管理のセクター・マネージャー、プログラム・コーディネーター、タスクチーム・リーダーなどを務めた。その間、地域セクター調整官として北京現地事務所に5年間駐在。1993年にヤング・プロフェッショナルとして世銀に入行。ストックホルム大学経済学修士号取得。スウェーデンとフィンランド国籍。
<お詫び> 当初来日予定だったエデ・イジャズ・バスケス社会・地域・都市・強靭性 グローバルプラクティス シニアディレクターが緊急の公務のため来日できなくなり、代わりにサリ・K・ゼーダーシュトレーム 社会・都市・農村開発担当グローバル・プラクティス戦略・業務局長が来日しました。