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東日本大震災からの教訓セミナー:東北の経験を世界と共有するには?
2012年10月14日東京

世界銀行、国土交通省、国際協力機構(JICA)は「東日本大震災からの教訓セミナー」を開催しました。10月9、10日に開催された「防災と開発に関する仙台会合」を受けて、大震災の教訓を活かして途上国における防災の主流化をどのように支援できるのかが議論されました。

2012年10月14日、東京 ― 世界銀行、国土交通省、国際協力機構(JICA)は「東日本大震災からの教訓セミナー」を開催しました。10月9、10日に開催された「防災と開発に関する仙台会合」を受けて、大震災の教訓を活かして途上国における防災の主流化をどのように支援できるのかが議論されました。

開会挨拶

サンジェイ・プラダン世界銀行副総裁よりは、日本が知識と経験を利用して世界の防災の取り組みをリードする期待が示されました。世銀と日本が共同で実施している大震災の教訓共有プロジェクトと、会場にて配布された教訓集について紹介され、東北では防災文化が培われ、教育や訓練が長年にわたり行われてきたおかげで、被害が軽減されたと、知識の重要性を強調しました。

伴野豊国土交通副大臣よりは、世界からいただいた支援を防災支援という形で今後恩返しをしていきたい、日本で培われたハード・ソフトを組み合わせた総合対策をパッケージとして世界に提供し、防災の主流化に貢献していきたい、防災パッケージの中心には「思いやり、ともに生きていく」を据える、と述べられました。

堂道秀明JICA副理事長よりは、東日本大震災の教訓として1)減災の視点、2)変化するリスクに継続的に取り組む、3)多機能、多重防御の構築、の3点を挙げました。JICAとしては今後、1)観測、警報態勢の強化、2)防災教育、コミュニティ防災、3)リスクについて情報共有、4)気候変動を考慮した開発計画の策定、5)研修内容の充実、6)スタンドバイ円借款の検討、7)国際機関や各国との連携強化、を進めていくとの説明がありました。

林信光財務省財務総合政策研究所長よりは、今年8月まで努めていた世銀理事としての経験が紹介されました。途上国の開発において防災があまり重視されておらず、日本の知見がグローバルに生かされていないと感じていた。これまでの総会にて防災セミナーを開催し、教訓集の作業が始まり、仙台会合へつなげることができた。世銀総会としては、東京以外の場所で会議を開催しトップが集うというのは歴史的なこと、さらに、防災を議論するのも特別なことである。仙台会合は一つの通過点にすぎず、このモメンタムを生かして防災を主流化していく必要がある、と強調されました。

基調講演

藤田昌久経済産業研究所長が「東日本大震災による教訓を活かした途上国支援への提言」と題して、サプライチェーン寸断により世界中に広がった被害状況、その対策について講演されました。グローバル化の下、生産システムは効率性は高いものの脆弱性が増しており、サプライチェーンの強靭性を強化することが課題となっている。リスク分散を図りながら、集中、効率的に生産するという、バランスをとる必要がある。企業単位、企業グループ、または産業としての取り組み、代替生産拠点、規格の標準化などの対策が重要である。途上国は防災への投資が不十分で、支援があってはじめて災害への強靭性を確保でき、世界の災害被害を軽減できる、と説明されました。会場とは間接被害の算出方法や地域協力について議論がされました。

東日本大震災の教訓集について主要メッセージ

フェデリカ・ランギエリ世銀上席都市専門官より説明されました。インターネット上の知識共有サイト:Community of Practice(CoP)の開始が宣言されました。教訓集は可能な限り今後もアップデートし、進行中の復興についての教訓を新たな章として作成していく予定です。

パネルディスカッション

廣木謙三ICHARM国際水防災研究監の司会により進行されました。フランシス・ゲスキエールGFDRR事務局長より、大震災の教訓として、1)災害リスクは軽減できる:耐震対策や警報等が効果を発揮した、2)包括的な取り組みが重要:継続的に学び対応して防災体制を構築してきた、と指摘されました。

池内幸司国土交通省水管理・国土保全局河川計画課長よりは、東日本大震災の被害の概要、構造物対策の効果、専門家の緊急対応チームであるTECFORCEの道路啓開や排水活動などについて紹介されました。今後の津波防災対策として、減災を基本的な考え方とし、2つのレベルの外力を設定する。比較的頻度の高い津波に対しては海岸保全施設の整備により人命・資産・国土等を確実に守り、頻度の低い大規模な津波に対しては、ハードとソフトを組み合わせ、多重防御で人命を守ることとする、との説明がありました。

伊藤敬幹仙台市副市長よりは世界中の方々からの支援に対して感謝の意が表されました。東日本大震災では備えの想定を超えて被害と混乱が生じ、公助の限界と自助・自立と協働・支えあいの重要性が明らかになった。今後、災害に強い都市をつくるうえで、1)ハードやシステムづくりによる災害に強い都市づくり、2)支え合う自立や協働が根付く地域づくり、3)防災意識の高い人づくりを重視していく、との説明がありました。さらに、仙台市は国連の世界防災キャンペーンに参加しており、今後は兵庫行動枠組みにも積極的に参加していきたい、と述べられました。

木山啓子ジャパンプラットフォーム代表理事・JEN事務局長からジャパンプラットフォームの加盟団体による迅速な出動、プロジェクトについて紹介されました。課題として、現場での調整が指摘されました。

ファチュール・ハディ・インドネシア国家防災管理庁次官よりはインドネシアでの防災の取り組みが紹介されました。関連法が制定され、防災は開発計画に組み込まれている。組織も強化されており、防災訓練や教育を進めていきたい。防災予算も着実に増加している。1)強靭な防災体制整備、2)災害前に比べてよりよい形への復興に向けた投資、3)資金の確保を重視している、と説明されました。

ヴィノッド・トーマス・アジア開発銀行独立評価局長より防災と開発の関連性について説明がなされました。自然現象の変化、社会の脆弱性、リスクへの暴露人口増大により災害被害が増加している。気候変動により平均雨量が増加していなくても極端な現象が増加している。防災の重要性を啓発し、対応より事前の備えを重視しなくてはならない、と指摘がありました。

不破雅実JICA地球環境部長は、JICAの取り組みと今後の方針について紹介されました。東日本大震災後のJICA二本松訓練所における避難民の方々の受け入れを通じた避難所運営やジェンダー配慮の重要性、福島大学や東松島市との連携について説明されました。防災の主流化には、Risk Literacy、Redundancy、Kaizenの3つが重要、またJICAは国際緊急援助隊も派遣しており、救援と復興の切れ目ない支援を重視している。インド洋大津波の事例を交えて、復興には被災地に人を戻すことも考えなければならない、そのためには地域組織の判断能力をどう養っていくか、能力の確保が重要である、と指摘されました。

会場よりは、東日本大震災に際して世界から日本への支援をレビューする委員会が立ち上がったと紹介されました。また、会場とパネリストの間でリスク評価が防災の出発点となること、防災を含む多目的施設の重要性とその実施に当たっての課題について、議論がされました。

閉会挨拶

西尾明彦世銀南アジア地域総局戦略事業担当局長より、1995年の阪神淡路大震災の教訓が活かされ今回の震災の被害軽減につながったことなど、知識や学びの重要性について指摘されました。

鈴木英明世銀理事より、全ての開発計画に防災の視点を入れる主流化の重要性、その支援を日本政府としてコミットしている、と紹介され、こうした取り組みへの参加者の協力について依頼があり、閉会となりました。

また、このセミナーに先立ち10月12日にはJICA関西にて専門家会合が開催され、教訓集の執筆者により教訓の紹介がありました。リンク先でプレゼンテーション資料をダウンロードいただけます。

  • Introduction of key messages and lessons from GEJE in KNs and Sendai Dialogue  Ms. Federica Ranghieri, World Bank
  • Activities of learning lessons from GEJE Mr. Yasuo Kawawaki, IRP (PDF, 1.4MB)
  • JICA's training programs in disaster reduction Mr. Masao Watanabe, JICA
  • Report of seminar of 10-year anniversary of DRI Mr. Masahiko Murata, DRI

Session 1: How to support developing countries in mainstreaming DRM by utilizing lessons from GEJE

Session 2: What are key lessons from on-going recovery?




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