https://www.worldbank.org/en/topic/nutrition/overview#1(より抜粋)
栄養不良は世界で最も深刻でありながら最も取り組まれていない開発課題のひとつです。栄養不良による人的・経済的コストは莫大で、貧困層、女性、子どもが最も大きな影響を受けます。2020年では1億4,900万人の5歳未満児の発育が阻害されています(年齢に対して低身長)。発育が阻害されているということは、個々が遺伝的に可能な発育度合いに達していないだけでなく、脳の発達など、その他多くの発育過程も阻害されている状況を示しています。つまり、栄養不良は個人の将来の経済的機会の損失にもつながり、人的資本を構築する国の能力を阻む問題であることがわかっています。
幼児期の発育阻害は脳の発達に不可逆的な損傷を与える可能性があり、教育、収入、生産性の面で、成人期にわたり影響を与えます。国家の生産性や経済成長の損失という観点から見ると、栄養不良の経済的コストは非常に大きく、私たちの経済は生産性の損失という形で年間3兆ドルのコストを被っており、低所得国ではGDPの3~16%(またはそれ以上)に達しています。さらに、世界銀行も参加している世界の栄養専門家コンソーシアムでは、新型コロナウイルスのパンデミックが世界の栄養不良問題を増大させることによって、2022年までにさらに290億ドル相当の経済的生産性が失われると推定しています。
同時に、世界的な栄養転換が進行中で、多くの低・中所得国(LMIC)の食品システム、環境、生活状況が急速に変化しています。こうした変化を受け、これまで豊かな国の病気と思われてきた 体重過多や肥満の負荷が急速に増加しています。実際、過去30年にわたり、低・中所得国における体重過多の割合は高所得国よりも急速に増加しており、体重過多の5歳未満児の割合が増加していない地域はありません。全体では体重過多や肥満による世界的な経済社会コストは2兆ドルになると推定されます。
肥満と栄養不良はどちらも人的資本の改善にとって極めて重要な問題で、持続可能な成長や貧困削減の中心的な推進力であり、人的資本指数(HCI)に重大な影響を与え得るものです。 世界の貧困層が最適な栄養を得るために必要な知識、リソース、サービスにアクセスできるようにすることは緊急の課題となっています。
https://www.worldbank.org/en/topic/nutrition/overview#2(より抜粋)
世界銀行グループは知識基盤を構築し、政策/プログラムの策定や優先順位付けに対する技術的な支援を提供し、エビデンスに基づいた栄養支援を拡大するための資金提供を行うことで、援助受入国の支援に取り組んでいます。
世界銀行は過去15年にわたり、発育阻害を防ぐための対策を拡大する上で、対話や行動に大きく貢献してきました。まず、栄養を開発の中心に(Repositioning Nutrition as Central to Development )という画期的な報告書を出版し、この問題に対する、主要パートナーや政府から関心を集めました。その後、2010年に世界銀行が発行した栄養拡充への取り組み:どれだけのコストがかかるのか(Scaling Up Nutrition: What Will It Cost? )や栄養のための投資フレームワーク2017(Investment Framework for Nutrition 2017)では世界の栄養コストの試算を初めて世界に示し、2010年に開始したSUNムーブメントではこの運動をめぐってパートナーが集結しました。
極度の貧困の撲滅と繁栄の共有の促進という2つの目標を受けて世界銀行が進めている幼児期に投資するという取り組み(幼児期の栄養、幼児期の教育と刺激、子育てのケア、ストレスからの保護)は、人的資本の構築のために必須となっています。世界銀行の国際開発協会(IDA)および国際復興開発銀行(IBRD)による栄養への投資は、2010年度の約1,000万ドルから2018年度には12億ドルと劇的に増加しています。また、この取り組みをグローバルなレベルと国レベルの両方において支援するための新たな資金がが利用できるようになっています。こうしたリソースは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド財団、栄養改善拡充のための日本信託基金(重度栄養不良国へのプログラムに特化)、 ダンゴート財団 、 タタ・トラスト、栄養の潜在力(Power of Nutrition) 、グローバル・ファイナンシング・ファシリティなどのパートナーによるものです。これらのパートナーや市民社会組織や国会議員などの他の多くのパートナーが、持続可能な開発目標を支援するというコミットメントの促進に取り組んでいます。
2021年12月、日本政府によって次回の「栄養サミット(Nutrition for Growth: N4G)」が開催されます。ドナー、開発援助機関、慈善団体、各国政府、市民社会組織などが集結し、それぞれのコミットメントを生み出すことを目的とする世界サミットです。東京栄養サミットの焦点となるのは、より効果的で持続可能な栄養投資です。これには、国家予算の適切な配分と触媒的/革新的な投資方法を相乗的に組み合わせることによって効果の高い栄養介入策を拡充すること、また、そのような取り組みを支える取り組みとして財政状況や事業結果を総合的に追跡するためのデータシステムを構築することなどが含まれます。
関連項目
イベント: 栄養サミット(Nutrition for Growth: N4G)(英語)
プレスリリース: 明治安田生命が世界銀行の「サステナブル・ディベロップメント・ボンド」に投資 ー東京栄養サミット2021開催に向けて開発途上国の栄養問題解決への取組みを支援 ー
イベント: 東京栄養サミット公式サイドイベント Investing in Nutrition – Role of catalytic financing
資料: Poioning Nutrition within Universal Health Coverage: Optimizing Health Financing Levers (英語、PDF)
資料: 「栄養投資の可能性を引き出すために: 効果的な資金調達の役割」 フアン・パブロ・ウリベGFFディレクター兼世界銀行保健・栄養・人口グローバルディレクター(PDF)
資料: 女性・子ども・青少年のためのグローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF) 栄養分野への効果的な投資とユニークな役割(PDF)
資料: ユニバーサル・ヘルス・カバレッジにおける栄養の強化ー保健財政運営を最適化する(PDF)
資料: 2021年12月8日東京栄養サミット公式サイドイベント概要(PDF)