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特集

自然災害に強い学校づくりへの3ステップ

2015年6月15日


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Chau Doan / 世界銀行

概要
  • なぜ多くの学校が自然災害に対して脆弱なのでしょうか。こうした学校の安全性、強靭性向上のために何ができるでしょうか。
  • 「災害に強い学校のためのグローバル・プログラム (GPSS)」では、開発途上国の財務、公共事業および教育関連省庁と協力し、学校建設に係る事項の改善ならびに災害に起因する教育の中断を最小限に抑えた他国の成功事例から学んだ教訓を活用して支援を行っています。

4月25日にネパールを直撃したマグニチュード7.8の大地震は、2,000校を超える学校施設を部分損壊し、5,000校以上に被害を及ぼしました。この地震および余震がもたらした大規模な学校施設の破壊による子どもたちの育成への影響が懸念されています。

ネパールの状況が例外なのではなく、毎年世界中で発生する自然災害が、子どもたちの教育に計り知れない影響を及ぼしています。最近の例では、平成25年の台風第30号ハイヤンにより、フィリピンでは2,500校以上が損傷、140万人の子どもたちが被害を受けました。また、近年のマラウイの洪水による被害は数百校に上り、35万人以上の子どもたちの教育が中断される事態となりました。

過去10年間にわたり、国際開発金融機関、国連機関、NGOが、より災害に強靭な学校づくりに取り組んできました。こういった努力にもかかわらず、災害に脆弱な国々では学校施設の安全性についての認知度は低く、政府やドナーは安全性を考慮せず新規学校建設のための資金調達を続けています。ネパールの例を挙げると、安全性に欠ける建築基準や技術管理の不備が、施工不良や脆弱な学校施設という結果をもたらしています。このような現状を踏まえ、以下のような疑問に対する答えを見つけなければなりません。

  • なぜ世界の多数の学校は、洪水、ハリケーン、地震等の自然災害による影響を受けやすいのでしょうか。
  • いくつかの国では、子どもと教員の安全性を確保し教育サービスが中断されないよう管理体制を確立していますが、どのように行っているのでしょうか。なぜ、他の国では確立されていないのでしょうか。
  • 学校施設の安全性確立に向けた体系的取り組みを支援するために、何ができるでしょうか。
     

革新的なパートナーシップに基づくアプローチ

防災グローバルファシリティ (GFDRR) は、近年、上に挙げられた問題の解決と脆弱な国々の子どもたちの保護に向け、「災害に強い学校のためのグローバル・プログラム (GPSS)」を立ち上げました。

この新しい取り組みでは、災害による学校施設への物理的影響を抑えることにより、自然災害に対し、より強靭な学校施設・地域社会づくりを促進します。具体的には、財務、公共事業、教育関連省庁と連携し、リスクに対する検討事項を新規および既存の教育セクターにおける投資に組み込み、強靭性向上に向けて大規模な取り組みを行っています。


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" 詳細なリスク評価を通し、我々は、全校舎の30%にあたる600校の建物の安全性の向上を図ることにより、首都リマにおける地震による危険性を約70%削減できることがわかりました。 "

アデラ・カセレス・デル・カルピオ

ペルー教育省プランニング・ディレクター

安全性が問題視される学校については、多くのパートナーとの協調と継続した努力が必要です。災害に強い学校のためのグローバル・プログラムは、ユニセフ、ユネスコ、国連国際防災戦略事務局 (UNISDR) 等の国際パートナー、セーブ・ザ・チルドレン等の国際NGO、アラップ等の民間企業他、様々な組織と協力し、取り組みを行っています。

これに関連し、同プログラムでは、リスクを抱える学校施設情報を把握し、強靭化の進捗を確認できるオンライン・プラットフォームを開発しています。このプラットフォームは、オープン・ソースで開発されており、様々なユーザーがマッピングに参加できるようデザインされています。

同プログラムでは、世界各地の経験を共有し、各国政府が学校施設の安全性促進に関する課題に対応する方法を模索・検討するため、ワークショップを東京で開催しました。世界銀行東京防災ハブにより開催されたこのワークショップには、アルメニア、ドミニカ共和国、エルサルバドル、インドネシア、ジャマイカ、日本、モンゴル、ペルー、トルコから政策立案者や専門家にご参加いただきました。このワークショップでは、リスク情報伝達の改善や、学校建設のための制度的・技術的なプロセスへの理解を深めることが学校の強靭化の基礎となる、と結論づけられました。

「詳細なリスク評価を通し、我々は、全校舎の30%にあたる600校の物理的な安全性の向上を図ることにより、首都リマにおける地震による危険性を約70%削減できることがわかりました。」と、ペルー教育省企画官、アデラ・カセレス・デル・カルピオ氏は述べました。

トルコ共和国のイスタンブール市局担当者は、イスタンブール市内944校を強化と、それにより150万人以上の子どもたちの安全性を確保した過程を共有しました。
「イスタンブールの学校の強靭化投資にあたり、透明性の提供と、対象とすべき学校の情報提供をするためには、優先順位付け基準の作成が不可欠でした。」と、イスタンブール・プロジェクト・コーディネーション・ユニット次官、フィクレト・アジリ氏は述べました。また、「結果として、教室数を4,310室から7,579室に増やしたことにより1教室当たりの生徒数が大幅に減少し、総合的な学習環境が飛躍的に改善しました。」と加えました。
 

成功への鍵は?

2日間のワークショップを通し、技術専門家と政策立案者は、市や国の学校安全プログラムを成功に導くには、次の要素を組み込むことが必要であるとの見解に達しました。

  • 施設安全性における長期戦略には、全国の学校施設インベントリ (一覧) 作成が不可欠である
    国レベルでの学校施設調査は、教育分野における既存リスクを低減するにあたり復旧需要の潜在的な規模を知る手がかりとなります。
  • 学校施設の建物リスク評価は、学校施設強化のための投資優先順位付けの一助となる
    学校施設の物理的リスク評価により、潜在的な被害・損失の規模ならびに頻度を推測することが可能です。これにより、最も脆弱な学校の特定が可能となります。
  • 学校施設の新築事業においては、現在の建設・施工環境に対する制度的・技術的評価を踏まえた戦略が重要である
    危険な建設慣習をはびこらせる要因を特定し、政策決定者が新規の施設建設について品質管理ならびに新たなリスク回避を確実に行うことが、適切な投資効果を生みます。

ペルーの成功事例から明らかなように、災害に強い学校のためのグローバル・プログラムとプログラム・パートナーは、気候変動や災害リスクに対しより強靭な教育環境を提供することができます。今後は、オーストラリア、日本他のドナーからの拠出金による、より災害に強靭な学校をつくるためのプロジェクトが、アルメニア、エルサルバドル、ジャマイカ、モザンビーク、フィリピンおよび大洋州地域で予定されています。

 


日本-世界銀行防災共同プログラム




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