2016年5月13日、アウグスト・デラ・トーレ世界銀行ラテンアメリカ・カリブ海地域担当チーフエコノミストの来日にあたり、セミナー「アジアとラテンアメリカ:成長し続けるか、ひとつの時代の終焉か」を、アジア開発銀行研究所(ADBI)と共催しました。
過去20年の間、豊かな北と貧しい南という世界経済のかつての単純な南北格差の構図は一変しました。一次産品市場が過熱した2000年代においては、ラテンアメリカ・カリブ海地域の平成長率は約5%に達し、同地域の人口のうち最貧困40%の収入は他のどの地域よりも増加するなど、経済成長が広がりを見せましたが、その後グローバル経済は減速し、同地域の中期的な経済見通しは大きく後退しました。主要新興国経済の減速は、過去15年間に達成した様々な成果を脅かしており、最貧困層の3分の2が中所得国に居住していることを考えると、ラテンアメリカに限らず、すべての途上国にとっての新たな課題であるといえます。
セミナーではまず、塚越保祐・世界銀行グループ駐日特別代表が冒頭挨拶を述べました。続いて、デラ・トーレ チーフエコノミストより、昨年10月にペルー・リマで開催された年次総会を前に発表した、地域内外に拡大する東アジアの貿易と米国が大半を占めるラテンアメリカの貿易について比較分析を行った報告書「ラテンアメリカと成長する途上国:変貌する世界と優先順の中で」や、その後の最新の分析結果をご紹介しました。続いて吉野直行・アジア開発銀行研究所所長がコメンテイターとして登壇し、同報告書に関して特にアジア地域の経済統合との比較の観点からお話しいただきました。最後に、ダニエル・レダーマン世界銀行ラテンアメリカ・カリブ海地域担当副チーフエコノミストも加わり、会場参加者との質疑応答・討論が行われました。
5月12日には、デラ・トーレ チーフエコノミスト、レダーマン副チーフエコノミスがラテンアメリカ協会の理事や会員企業の皆様とのラウンドテーブルに参加し、レダーマン副チーフエコノミストが東京大学公共政策大学院にて講演を行いました。
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プログラム
開会挨拶
塚越保祐 世界銀行グループ駐日特別代表
基調報告
アウグスト・デラ・トーレ 世界銀行ラテンアメリカ・カリブ海地域担当チーフエコノミスト
当日の資料:Latin America and the Rise of the South At a Crossroads(PDF)
コメント
吉野直行 アジア開発銀行研究所(ADBI)所長
スピーカー
アウグスト・デラ・トーレ 1997年、世界銀行入行。ラテンアメリカ・カリブ海地域金融上級アドバイザーを経て現職。世界銀行入行以前は、エクアドル中央銀行総裁、国際通貨基金(IMF)ベネズエラ駐在代表などを歴任。ノートダム大学経済学博士号・修士号、エクアドル・カトリック大学哲学学士号取得。 |
コメンテイター
吉野直行 米国ジョンズホプキンス大学大学院PhD(Economics), ニューヨーク州立大学助教授、パリ政治学院訪問教授、スウェーデン・ヨーテボリ大学名誉博士、マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク名誉博士、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学訪問教授、関税・外国為替審議会会長、財政投融資分科会部会長、金融審議会会長などを歴任。2013年福澤賞。現在、アジア開発銀行研究所(ADBI)所長、慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター顧問、放送大学客員教授、政策研究大学院大学客員教授。主な編著書に、Postal Savings and Fiscal Investment in Japan (Oxford University Press)、Small Savings Mobilization and Asian Economic Development (M.E.Sharpe)、Hometown Investment Trust Funds (Springer)、『社会と銀行』(放送大学教育振興会)、『これから日本経済の真実を語ろう』(東京書籍)など多数。 |
関連
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